金属ガラス

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金属ガラス (きんぞくガラス、: metallic glass、メタリックガラス)は、金属元素を主成分とする非結晶性合金で、ガラス転移が明確に観察されるアモルファス金属である。まだ、研究が始まったばかりで、結晶質の金属材料に比べると実用化はわずかである。

金属ガラスではないアモルファス金属は加熱時にガラス転移に至る前に結晶化が進行するので、流体の原料からアモルファス金属を製造する場合に急速な冷却が必要となる。金属ガラスはそういったアモルファス金属とは異なり、過冷却液体の状態で安定し、結晶化が始まる前に固体化が完了するために鋳型で鋳造できるので工業用途での利便性が高い[1]との見方もあるが、同じ共晶系の結晶性の合金にも見られるため、結晶性の違いで一概に片付け難い。

金属ガラス=アモルファス金属という誤解がある[要出典]が、金属ガラスはアモルファス金属の特殊な一部である。

合金の例[編集]

  • Zr-55%, Cu-30%, Al-10%, Ni-5% (用途:ゴルフクラブ、精密機械部品)[2]
  • Pd-55%, Ni-30%, P-10% (用途: 基礎研究用の材料)

発見[編集]

1990年に東北大学金属材料研究所増本健井上明久らのグループがZr基合金で明瞭なガラス転移を起こす新しいアモルファス合金を発見し、バルク状のアモルファス合金の鋳造に成功した。これに続いて、カリフォルニア工科大学の William L. Johnson のグループでもよりガラス形成能の高いZr-Be-Ti-Cu-Ni合金を発見した。[1]

名称[編集]

日本国内で、金属ガラスという名称はアモルファス金属と同一に扱われることがある。これは、アモルファス金属の説明時に「ガラス化した金属である」といわれていた事がそのまま単純化されて「アモルファス金属=金属ガラス」となったと解釈できる。[要出典]

例えば英語圏では bulk amorphous alloymetallic glass と呼ばれていたり[3]、1992年にカリフォルニア工科大学で発見されてすでに商業ブランドとなっている LiquidmetalVitreloy という名称で呼ばれている。

出典[編集]

  1. ^ a b アモルファス合金と金属ガラス - 独立行政法人 物質・材料研究機構 磁性材料センター研究プロジェクト
  2. ^ 作咲済夫著 『ガラスの本』 日刊工業新聞社 2004年7月30日初版1刷発行 ISBN 4-526-05310-4 p.106-p.107
  3. ^ 井上明久、安立なつ美「〈CLOSE UP〉先端に,人 東北大学金属材料研究所所長 井上明久」『工業材料』第48巻、第11号、1-4頁、2000年11月。ISSN 0452-2834https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I5514243-00 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]