薬種商販売業

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薬種商販売業(やくしゅしょうはんばいぎょう)とは、旧薬事法(1960年8月10日、法律第百四十五号)で定められた一般用医薬品の販売業の1つ。改正薬事法による「登録販売者」資格の新設に伴い廃止された[1]。1997年時点で17,600余名が全国に点在し[2]、医薬品の供給を通じて地域の軽医療に貢献していた。

概要[編集]

薬種商販売業の許可を受けるためには、申請者(申請者が法人であるときは、その業務を行う役員及び薬事法施行政令第5条に規定するこれに準ずるものを含む)が指定医薬品以外のすべての医薬品を取り扱うにつき必要な知識経験を有する者として政令で定める基準に該当する場合、即ち、大学・旧制大学又は旧制専門学校で薬学に関する専門の課程を修了しているか、或いはその者が薬種商販売業務を行うにつき必要な知識経験を有すかどうかについて、都道府県知事のおこなう試験に合格した者又は8年以上薬種商販売業の業務を行っていたものであって都道府県知事が適当と認めたものであることが必要であった。なお、先ほど述べた大学・旧制大学又は旧制専門学校で薬学に関する専門の課程を修了している者(薬科大学卒業者)には、許可基準の一つである人的要件は試験を受けずとも付与されていた。

なお、薬種商販売業者または自ら管理している薬局開設者が死亡した場合において、その承継者が試験を受けて新たに薬種商販売業の許可を受けるまで、当該店舗での医薬品の販売業務が行えなくなりその間当該地域住民に対する医薬品の円滑な供給に支障をきたすことを避け、医薬品の供給を確保するため、あらかじめ承継者として配偶者または直系卑属のうち一人に限り試験を受けることができることとなっていた。

薬種商販売業の許可は、店舗ごとに、その店舗の所在地の都道府県知事から与えられた。「薬店」において指定医薬品以外の医薬品の販売が可能だった。薬種商販売業者資格者は、従事する職場が所在する都道府県に登録を申請するのみで登録販売者となる事が出来る。

なお、薬種商販売業は単に「薬種商」とよばれることもあったが、江戸時代等に「薬」を扱う商店であった「薬種問屋」などとは全く別のものである。

管理[編集]

薬種商販売業には法律上管理者の制度がなく、店舗の構造設備、医薬品その他の物品はすべて薬種商自身が行わなければならないことになっていた。したがって、薬種商が2以上の店舗で業務を営むことは認められなかった。

営業許可基準[編集]

店舗の設備基準(物的要件)と欠格事由(人的要件)の二つが定められていた。つまり、先の概要の中ほどで述べた「承継者」として受験する場合を除いて、受験者は薬種商販売業者として店舗ごとの許可を得ようとする意志が必要であると同時に、それを裏付ける根拠(店舗の予定)等が必要であるとされていることに注意しなければならなかった。

受験資格(廃止されるまで)[編集]

この試験は、薬種商販売業という営業の許可を与えるに際して、申請者が指定医薬品以外のすべての医薬品を取り扱うにつき必要な知識経験を有するかどうかについて認定を行うための手段として行われるものであって、医師や薬剤師のごとき資格試験とはその性格が異なる。よって営業許可基準に記してる物的要件人的要件の表裏一体が営業の許可条件で、いわゆる個人に与えられる資格とはその性格が異なる理由である。
受験資格としては、原則として高校卒後3年以上又は義務教育終了後(中学卒後)5年以上、それぞれの薬局・薬種商販売業等における実務経験が必要であった。

試験内容(廃止されるまで)[編集]

試験内容は[2]、学説試験と実地試験に分かれ解答方法は主に記述式と選択式があり、そのうち学説試験は薬事法規、医薬品の性状、貯蔵方法及び取扱上の注意事項について、実地試験は医薬品の実物鑑定及び取り扱い方法について行われ、試験の施行時期はその都道府県の状況に応じて適当な時期に一括して行われていた。ほとんどの場合、年1回程度であった。以下に試験内容を示す。薬種商販売業は平成9年(1997年)時点で17,600余名が点在していた。なお、改正薬事法規制緩和により、受験資格は実務経験年数や試験内容は緩和された。新制度の登録販売者試験合格者「平成20年(2008)8月第1回~」の登録販売者数は平成23年(2011年)3月31日時点、わずか2年余りで95,695名誕生している。
 学説試験    

1.薬種商としての常識、販売上の注意に関する問題
各分野にまたがる記述式の用語解説に関する問題や、また常識問題として薬事衛生に関する時事的な問題が逐次出題されていた。たとえば、近年の医薬品生産額などである。また薬とういう特殊な製品を販売するため、ただ売るのではなく、必要な情報を的確にアドバイスできる能力も問われ、使用上の注意や専門用語、そして客からの薬に対する質問に答えられる能力も要求されていた。
2.薬事法規に関する問題
  • 目的、定義、薬事審議会に関する問題
  • 製造承認、再審査、再評価に関する問題
  • 医薬品販売業に関する問題
  • 日本薬局方、基準及び検定等に関する問題
  • 毒薬劇薬及び要指示医薬品の取り扱いに関する問題
  • 医薬品等の表示及び封に関する問題
  • 販売、授与等の禁止に関する問題
  • 広告に関する問題
  • 薬事法規総合問題
3.医薬品の分類「指定医薬品・毒劇薬・麻薬等の分類(除外規定を含む)」
医薬品の分類方法はいろいろあるが、いわば法律的分類であり、ある医薬品が法律上、毒薬、指定医薬品、麻薬等に該当するかどうかという問題である。いずれも法律の規定に基づき指定されたものであるが、具体的に医薬品の実体を知らなければ解答することができないので、実際に医薬品を取り扱うものの試験問題としては当を得ているためか、各都道府県で必ずと言ってよいほど出題されていた。分類項目として、①麻薬、向精神薬、覚せい剤、覚せい剤原料 ②毒薬 ③劇薬 ④指定医薬品 ⑤要指示医薬品 ⑥習慣性医薬品 ⑦広告制限医薬品 また毒薬、劇薬、指定医薬品には1日量などによって、その指定から除外されているものがあるので注意しなければならない。これらの除外規定についても出題されていた。なお、毒薬、劇薬、要指示医薬品等の指定は、割合に頻繁に改正されていたので注意しておかなければならなかった。
4.基礎科学に関する問題
  • 化学用語・記号・化学反応に関する問題
計量単位、化学用語、化学式が出題され、元素記号と簡単な化合物の化学式を知っている必要があり、また化学反応式も各都道府県でされており、問題からみて適当な教科書(高等学校程度)の勉強が推奨だった。
  • 計算問題
化学の計算問題で化学反応と濃度に関するものが多かった。
5.日本薬局方通則、製剤総則、一般試験法に関する問題(生薬除く)
きわめて重要な日本薬局方通則や製剤総則、近年増えてる一般試験法の問題
6.日本薬局方各条に関する問題(生薬除く)
生薬以外の日本薬局方に収載の医薬品についての名称(別称)、組成、化学式、性状、貯法、確認試験等についての知識を求める問題である。
  • 医薬品の例示を求める問題
医薬品の性状、貯法等を示して、それに該当する医薬品の名称を例示させる問題。医薬品についての知識を求める問題であるが、たとえば「アセトアミノフェンの性状は?」と問われるより、「この性状の医薬品を例示せよ」と問われる問題など。
  • 総合問題
7.生薬に関する問題
日本薬局方の生薬総則と各条に関する問題が主で、生薬総則、薬用部位、薬効、主成分、基原植物等の問題。漢方処方や確認試験等の問題。
8.医薬品の薬理作用、適応、副作用に関する問題
医薬品とその薬理作用、適応、副作用を選択あるいは記入する形式の問題、また医薬品を取り扱ううえでよく使用される薬理学的用語は薬種商として当然必要な知識であるから常識として理解しておく必要があり、医薬品の数はおびただしい数の上り、しかも毎年新しい医薬品が登場しこの分野の問題は増加傾向にあった。
9.公衆衛生、基礎医学に関する問題
用語の問題、食物・薬物中毒、伝染病、微生物、消毒・滅菌、消毒剤、消毒薬、水、空気、環境汚染などの公衆衛生の問題、また基礎医学では、人体の神経系、血液、消化酵素、生体内物質などの問題

 実地試験

薬種商の実地試験問題は、鑑定に中心がおかれていた。一般に実物鑑定であるから、あくまで実物に接して覚えるということが重要であった。しかし、近年の薬剤師国家試験にも見られるように、紙上での実地試験というものが、だんだん行われるようになってきた。こうした問題にあっては、医薬品の性状、確認方法、類似医薬品との区別等をよく知っている必要があった。実際の問題にあっては鑑定した医薬品について、さらに用途、貯法、主成分、薬用部位等についても質問しているのがほとんどであった。

試験勉強等[編集]

日本薬局方や薬種商販売業各種書籍や問題集等での独学や勤務店舗での実務や勉強、各都道府県主催の受験準備講習会、または薬業専門学校や通信教育(実物鑑定付き)があった。費用として、受験準備講習会は都道府県により平均的に30~40万円前後のところが多かった。通信教育は、ビデオ鑑賞・テキスト・実物鑑定材料等も含め20~30万円前後のところが多かった。

試験合格後[編集]

試験の合格者については、当該試験の合格後3年以内に、許可基準である当初申請の計画に従った薬種商販売業の許可が受けられない場合には、正当な理由がない限り、合格の効力を失うものとされていた。

改正薬事法の関係部分(2009年施行)[編集]

  • 一般用医薬品の販売業者である旧来の「薬種商販売業」と「一般販売業」が、改正薬事法では「店舗販売業」に統合された(薬種商という言葉が消滅) 。
  • 「店舗販売業」において一般用医薬品の販売を薬剤師及び登録販売者が行うようになった。
  • なお、登録販売者が販売出来る一般用医薬品は第二類医薬品及び第三類医薬品に限られ、第一類医薬品を販売することはできない。ただし、登録販売者及び一般従事者の販売方法は「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正)159条の14関係において、「第一類医薬品は、薬剤師に自ら又はその管理及び指導の下で登録販売者若しくは一般従事者をして、当該薬局において、対面で販売させ、又は授与させなければならないこととしたこと」、また、「第2類医薬品又は第3類医薬品については、薬剤師又は登録販売者に、自ら又はその管理及び指導の下で一般従事者をして、当該薬局において、対面で販売させ、又は授与させなければならないこととしたこと」とされた。この改正により然るべき資格者の管理・指導の下で登録販売者若しくは一般従事者の販売・授与は可能となった。「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正)[3]
  • 情報提供等について 情報提供については使用者もしくは消費者が不要と申し出れば情報提供なしでも購入は出来る。(一般用医薬品の情報提供の方法等、新施行規則第159条の18において準用する新施行規則第159条の15から第159条の17まで関係) さらになお、また情報提供については、薬事法第36条6項4号[4]で医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合には適用しないことも留意考慮。(ただし、第一類医薬品は積極的に情報提供は必要、第二類・指定二類は努力義務・第三類は不要、なお相談があった場合は全ての医薬品について義務)、となっている。

脚注[編集]

  1. ^ 厚生労働省. “薬事法の一部を改正する法律の概要 (PDF)”. 2010年8月1日閲覧。
  2. ^ a b 薬種商試験問題解答集第7版1997年:薬事日報社pi-i,p1-p478
  3. ^ 薬事法の一部を改正する法律等の施行等について
  4. ^ 薬事法第36条6項4号

外部リンク[編集]