臭化タングステン(V)

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臭化タングステン(V)

Crystal structure of tungsten(V) bromide
識別情報
CAS登録番号 13470-11-6 チェック
PubChem 139467
特性
化学式 WBr5
モル質量 583.36 g/mol
外観 茶黒の結晶
吸湿性
融点

286 °C, 559 K, 547 °F

沸点

333 °C, 606 K, 631 °F

磁化率 +250.0·10−6 cm3/mol
危険性
EU分類 not listed
関連する物質
その他の陰イオン 塩化タングステン(V)
その他の陽イオン 臭化モリブデン(V)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

臭化タングステン(V)は、実験式WBr5で書かれる無機化合物。この化合物は2つの架橋臭化物配位子を持つ複八面体構造からなるため、分子式W2Br10 である。

調合と構造[編集]

タングステンの粉末を650-1000℃の範囲で臭素とともに扱うことで調合される。生成物は六臭化タングステンで汚染されていることが多い。

X線回折によると、五臭化タングステンの構造は、端部共有の複八面体からなる[1]

反応[編集]

臭化タングステン(V)は、還元反応により他のタングステン化合物を得ることができる。例えば、臭化タングステン(IV)はアルミニウムもしくはタングステンで還元することにより調合することができる[2]。WBr4化学蒸気輸送により精製することができる。

余分な五臭化タングステンおよび三臭化アルミニウムは240℃で昇華させることで除去される。

臭化タングステン(II)は四臭化物を加熱することで得られる。450-500℃で気体状の五臭化物が放出され、WBr2の黄緑の残留物が残る。塩化タングステン(II)の合成にも同様の方法を適用することができる。

還元置換反応[編集]

五ハロゲン化タングステンを還元することは比較的簡単なため、これをハロゲン化タングステン(IV)付加物の代替合成経路として用いることができる。例えばWBr5ピリジンの反応によりWBr4(py)2が得られる。

ビピリジン

脚注[編集]

  1. ^ Y.-Q. Zheng, K. Peters and H. G. von Schnering (1998) "Crystal structure of tungsten pentabromide, WBr5" Zeitschrift für Kristallographie - New Crystal Structures 213(3) 471
  2. ^ R.E. McCarley, T.M. Brown "The Preparation and Reactions of Some Tungsten (II) and Tungsten (IV) Halides" Inorg. Chem. 1964, volume 3, 1232-1236. doi:10.1021/ic50019a007