自己エネルギー

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電子の自己エネルギーを表すファインマン・ダイアグラム。波線は光子、実線は電子を表す。

自己エネルギー(じこエネルギー、self-energy)とは、粒子が自分自身の作り出すとの相互作用によって生じるエネルギーのことである。

場の量子論における自己エネルギーは、粒子が自ら仮想粒子を放出し吸収する過程、及び、その過程により増加する粒子の質量エネルギーである。量子電磁力学においては、電子陽電子のようなフェルミ粒子が自ら光子を放出し吸収することで、フェルミ粒子の質量が増加する過程を表す。光子やグルーオンのようなゲージ粒子、更には中間子のようなボーズ粒子の場合も自己エネルギーは定義でき、これらは一般に真空偏極と呼ばれる。

計算例[編集]

自己エネルギー[編集]

量子電磁力学(QED)におけるフェルミ粒子の自己エネルギーを計算するために、四元運動量を持つフェルミ粒子が光子を放出し、吸収する過程を考える。

自己エネルギー は、1粒子既約な(1つの伝播関数を切断して2つ以上に分離できないような)全てのダイアグラムを足し上げたものとして定義される。

= Electron self energy.svg

上式の高次の項には2ループ以上のループを含む1粒子既約なダイアグラムが存在する。また、便宜的にダイアグラムにはループの両端に実線が引かれているが、自己エネルギーとして定義されているのは実線+波線のループ部分のみである。ファインマンルールを用いて1ループ積分を書き下すと、入射するフェルミ粒子の運動量をp、仮想光子の運動量をkとして

Electron self energy.svg

となる。この式は仮想光子の運動量kについての積分であるので、フェルミ粒子の運動量pのみを変数とする関数となっている。さらにこの積分は、分子がd4k、分母がk3に比例するから、kについての1次発散を含むことが分かる。

ファインマン伝播関数[編集]

フェルミ粒子の2点相関関数、すなわちファインマン伝播関数に対して、自己エネルギーによる補正を加えるためには、全ての可能なダイアグラムを足し上げればよい。

Dyson.svg

ここで、最右辺の第1項が自由な伝播関数、それ以降の項は自己エネルギーの両端にフェルミ粒子の伝播関数がついた1粒子既約、2粒子既約…のダイアグラムを表す。この式はファインマンルールを用いて計算され、フェルミ粒子の運動量をp、裸の質量をm0とすると、

となる。この式は、元々は裸の質量m0の位置にあった伝播関数の極が、自己エネルギーによってシフトしていることを表している。従って、物理的な質量mを求めるためには、方程式

を解けばよく、質量のシフトは

と表せる。実際に自己エネルギーから質量シフトを計算すると、運動量カットオフΛと微細構造定数αを用いて、

となり、対数の紫外発散となっていることが分かる。

参考文献[編集]

  • M.E. Peskin; D.V. Schroeder (1995). An Introduction To Quantum Field Theory. Westview Press. ISBN 978-0201503975. 

関連項目[編集]