聖家族と幼子洗礼者聖ヨハネ (ポントルモ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ』
ロシア語: Мадонна с Младенцем, святыми Иосифом и Иоанном Крестителем
英語: Holy Family with the Infant Saint John the Baptist
作者ヤコポ・ダ・ポントルモ
製作年1522年ごろ–1523年ごろ
種類キャンバス上に油彩
寸法120 cm × 98.5 cm (47 in × 38.8 in)
所蔵エルミタージュ美術館サンクトペテルブルク

聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ』(せいかぞくとようじせんれいしゃせいヨハネ、: Мадонна с Младенцем, святыми Иосифом и Иоанном Крестителем: oly Family with the Infant Saint John the Baptist)は、イタリアマニエリスム期の画家ヤコポ・ダ・ポントルモが画業初期の1522-1523年ごろ、板上に油彩で制作した絵画である[1]。かつては、同じくマニエリスム期の画家ロッソ・フィオレンティーノに帰属されていた[2]。1923年、E. I. モルドヴィノワ (E. I. Mordvinova) 伯爵夫人のコレクションから取得され、サンクトペテルブルクエルミタージュ美術館に所蔵されている[1][2][3]。準備素描フィレンツェウフィツィ美術館の素描版画室 (Gabinetto dei Disegni e delle Stampe) に現存している[4]

作品[編集]

初期マニエリスムの代表的な画家で、アンドレア・デル・サルトの弟子であったポントルモは、引き伸ばされ誇張されたポーズの人体像の組み合わせや、明るい人工的な色彩を特徴とする画風を生み出した。本作は、その明るい色彩や神経の張りつめた表現などに、画家のそうした特徴を見ることができる特異な傑作である[1]

暗闇の中で中央の聖母マリアと幼子イエス・キリストは、とびぬけて高い明度彩度を与えられており、エナメルのような光沢を帯びて浮かび上がっている。聖母の顔には、レオナルド・ダ・ヴィンチラファエロなどのルネサンス絵画に見られた、穏やかな母性愛あふれる表情はない。聖母の顔は、個人の肖像画を思わせる、冷たく気位の高い貴婦人のように端然としている[1]

鑑賞者の視線は、ヒワ (イエス・キリストの「受難」の象徴) をもてあそんで楽しむ幼子イエスから、悲しみをたたえる聖母の顔へと流れ、諦めを示す聖ヨセフと幼児洗礼者聖ヨハネの顔へと移った後、十字架が浮かび上がる暗闇の中へと陥っていく[2]。幼子イエスや、幼児洗礼者聖ヨハネの顔には、その微笑にもかかわらず不気味な不安が表されている。また、聖母に背を向ける聖ヨセフの姿には、救いのない寂寥感が漂っている[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、1989年、101-102頁。
  2. ^ a b c Madonna and Child with St. Joseph and Saint John the Baptist”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2023年8月31日閲覧。
  3. ^ Art works”. エルミタージュ美術館公式サイト (ロシア語). 2023年8月31日閲覧。
  4. ^ (イタリア語) Elisabetta Marchetti Letta, Pontormo, Rosso Fiorentino, Scala, Firenze 1994. ISBN 88-8117-028-0

参考文献[編集]

外部リンク[編集]