矢勝川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

矢勝川(やかちがわ)は、愛知県知多半島を流れる阿久比川あぐいがわ水系二級河川。流路延長は約4.6 km(キロメートル)、流域面積は約8.5 km2である[1]。地元では「背戸川」とも呼ばれ、新美南吉の童話『ごんぎつね』に登場することで知られる[2]

地理[編集]

矢勝川。右の小高い山は阿久比町の権現山(2020年9月)

半田市阿久比町常滑市の境にある半田池を水源とし、東に流れる[2]。半田市と阿久比町の境界を流れて名鉄河和線と交差し、半田市岩滑やなべ東町で阿久比川あぐいがわの右岸に合流する[3]。なお、合流点付近で矢勝川は阿久比川に隣接・並行して南流する十ヶ川(半田運河)と交差するが、十ヶ川の伏せ越し工法(立体交差)により合流しない。

新美南吉の著名な児童文学『ごん狐』に兵十がうなぎを獲っている川として登場することで知られており[注 1]、川の中流となる岩滑やなべ西町には新美南吉記念館がある。川岸の堤防には1990年平成2年)から市民の手によって『ごんぎつね』にも登場する彼岸花の植栽が始められ、現在では名所として広く知られるようになった[2]。秋の彼岸ごろになると東西2キロメートル余りにわたって200万本以上の彼岸花が咲き[2]2008年(平成20年)からイベント「童話の村 秋まつり」[7][8]を開催、2013年(平成25年)には新美南吉の生誕100年を記念して名称を「ごんの秋まつり」に改め[9][10][11]、毎年9月下旬から10月上旬にかけて開催している。また、堤防上には遊歩道が、知多半島サイクリングロードの一部である「矢勝川と新美南吉のふるさとコース」(約5 km)として整備されている[12][1]

河川監視ライブカメラが高田橋(阿久比町植大うえだい)に設置されている[13]

主な支流および湖沼[編集]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 新美南吉記念館の紹介ページを参照[4]。なお、雑誌『赤い鳥1932年1月号に発表された『ごん狐』には矢勝川の名称は見えないが、新美南吉のノートに残されている草稿版『権狐(ごんぎつね)』(「スパルタノート」版と呼ばれる)では矢勝川を指す呼称「背戸川」が登場している[5][6]

出典[編集]

  1. ^ a b 阿久比川の河川整備基本方針を策定しました。(二級河川阿久比川水系 河川整備基本方針の策定)”. 愛知県ウェブサイト. 愛知県 (2014年2月26日). 2023年7月18日閲覧。 “矢勝川は半田市岩滑東町地内で阿久比川に合流する流路延長約4.6 km、流域面積約8.5 km2、川幅約10〜30 m、河床勾配が1/500〜1/100程度の河川である。両岸とも護岸が整備されており水際には植生が繁茂している。” ※「二級河川阿久比川水系 河川整備基本方針(本文) 平成26年2月28日」(pdf)のp. 2参照。
  2. ^ a b c d 矢勝川の彼岸花”. 半田市 (2014年4月7日). 2013年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月28日閲覧。
  3. ^ 北本朝展(国立情報学研究所) (2022年8月8日). “半田池/矢勝川 [2300340002] 阿久比川水系 地図”. 国土数値情報河川データセット. ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター. 2023年7月17日閲覧。
  4. ^ 文学散歩”. 新見南吉記念館. 2023年7月17日閲覧。 “半田池を水源とし、岩滑新田と岩滑の北側を流れて阿久比川に注ぐので背戸川(裏の川)とも呼ばれました。「ごん狐」では兵十がウナギを捕っていた川として登場します。”
  5. ^ 安藤重和「「権狐」成立試論」『愛知教育大学研究報告. 人文科学』第37巻、愛知教育大学、1988年2月、25-26頁、ISSN 0388-7375 
  6. ^ 木村 功「新美南吉「権狐」論 : 「権狐」から「ごん狐」へ」『岡山大学教育学部研究集録』第111巻、岡山大学教育学部、1999年7月、ISSN 0471-4008“本論では, 小学校四年生の国語学習教材として教科書に採録されている「ごんぎつね」(初出「ごん狐」)と, そのプロトタイプである「権狐」(「スパルタノート」)との比較を通して, 「権狐」の物語内容の変容の内実, 特に冒頭部の語り手「茂助爺」の削除の意味について考察する。” 
  7. ^ 童話の村秋まつり”. 愛知県観光ガイド. 2014年9月28日閲覧。[リンク切れ]
  8. ^ 会報バックナンバー”. 特定非営利活動法人りんりん (2023年4月). 2023年7月18日閲覧。 ※会報「No. 37(平成20年10月)」に第1回、「No. 41(平成21年10月)」に第2回の「童話の村 秋まつり」への参加・協力の言及あり。
  9. ^ イベント Event「ごんの秋まつり」”. 半田市観光ガイドWeb (2014年7月30日). 2015年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月28日閲覧。 ※イベント名を改称した時期の記事で、見出しと本文で名称に齟齬が生じている。
  10. ^ ごんの秋まつり”. 半田市ウェブサイト (2023年3月14日). 2023年7月17日閲覧。
  11. ^ りんりんのあゆみ”. 特定非営利活動法人りんりん (2018年). 2023年7月18日閲覧。 “2013年(H25)9月22日 第6回「ごんの秋まつり」参加(名称変更)” ※2013年項に「童話の村 秋まつり」改称の記述あり。なお、2012年3月発行の『特定非営利活動法人りんりん 〜りんりんと市内NPO法人のあゆみ〜(18周年記念誌)』(pdf)のpp. 8, 14-15も参照せよ。
  12. ^ 知多半島サイクリングロード”. 愛知県ウェブサイト. 愛知県 (2019年6月27日). 2023年7月18日閲覧。 ※「おもて面(おすすめルート・みどころの紹介等)」(pdf)、「地図面(南側ルート)」(pdf)参照。
  13. ^ 河川監視カメラ”. 阿久比町ウェブサイト (2020年9月7日). 2023年7月17日閲覧。 ※個別カメラ画像ページ「矢勝川(高田橋)」。

外部リンク[編集]