着衣着火
着衣着火(ちゃくいちゃっか)は、(人間の)衣服に引火する災害事故のこと。
着衣着火の問題[編集]
家庭内での例としては、「ガスこんろ」の使用中に袖から燃え移ったり、「電気ストーブ」などの熱源や「ろうそく」「たばこの火」に接触して発火するなど[1]。
米国や英国などでは、寝具(子供用パジャマ、マットレスなど)を対象に防炎規制が実施されている。しかし、日本では、一般家庭における製品の防炎性能義務付けは行われていない[2]。日本国内では平成17年度 - 平成21年度の5年間に、86件の「着衣着火」事故が起き、39件が死亡事故に至ったという(2011年(平成23年)1月20日付の、製品評価技術基盤機構 (NITE)による発表[1])。また東京消防庁管内では平成22年中に、66件の「着衣着火」事故が起き、3名の死者、58名の負傷者が発生している(速報値)[3]。
表面フラッシュ現象[編集]
生地表面の毛羽から引火し、一瞬にして衣服全体に火がまわる(走る)現象[4]で、「フラッシュスプレッド現象」という呼称もある[5]。
綿・レーヨン・キュプラなどの素材で「毛羽」のあるもの(ネル地など)が、特に危険とされている。洗濯を重ねるうちに毛羽立ちは著しくなる傾向にある[4][6]。
着衣着火の予防[編集]
着衣着火から自身や大切な者を守るものとして、日本防炎協会が認定するエプロン、割烹着、アームカバーなどの防炎の衣服類がある。防炎製品として認定された衣服類には、炎のマークが目印のラベルが付けられている。何度洗濯をしても燃えにくさを維持できるか確認(耐洗濯性能)されたり、接する肌や口に含んだ時に問題がないか確認(毒性審査)されたものが防炎製品として認定されている。衣服類のほかにも火災予防に役立つ様々なものが防炎製品として認定されている[7]。
引火した場合の対処[編集]
- もし、素早く衣服を脱げる状況であれば、脱ぐ。
- 水道があればもちろん、そうでなくとも、飲み物や花瓶の水など、手近にあるものをかぶる。
- いかなる水も近くにない場合は、決して走り回らず、地面に火を押し付けて消す(窒息消火法)。
- 火が消えたら、119番。
脚注[編集]
- ^ a b c 着衣着火事故の防止について(注意喚起) (PDF) - 製品安全センター
- ^ たばこ火災被害の低減対策に関する協議会 中間取りまとめ (PDF) - たばこ火災被害の低減対策に関する協議会 平成23年6月
- ^ 防炎ニュース No.187 (PDF) p.33 - 日本防炎協会 2011年7月
- ^ a b 服が燃えて大やけど! 知られざる危険「着衣着火」(発表情報) - 国民生活センター 1997年2月4日
- ^ 中央区消費生活展2006 (PDF) p.10
- ^ 室崎益輝 「着衣着火」、知っていますか? - イー・ウーマン
- ^ 防炎製品いろいろ (PDF) - 日本防炎協会
関連項目[編集]
- 静電気 - 引火の原因の一つ
- 電磁調理器 - ガスこんろに比べ、着衣に火がつく可能性が低い
- 日本工業規格(繊維)の一覧 - 繊維製品の表面フラッシュ燃焼性試験方法(JIS L 1917、制定 2000年10月20日)
- 製品評価技術基盤機構
- 日本防炎協会
- ポリアミド(ノーメックス、コーネックスなどの難燃性繊維)
- 難燃剤
- ストップ、ドロップ&ロール - アメリカで教えられる着衣着火時の対応で、「止まって、倒れて、転がって」の意。
外部リンク[編集]
- 着衣着火の恐怖/京都市 京都市消防局 研究課
- 桑名一徳; 土橋律「表面フラッシュ速度に及ぼす起毛層密度と厚さの影響」(PDF)『日本燃焼学会誌』第51巻、第157号、223-230頁、2009年 。
- (公財)日本防炎協会ホームページ
- 防炎品の燃えにくさ(YouTube動画)/防炎チャンネル
- JIS L 1917「繊維製品の表面フラッシュ燃焼性試験方法」(日本産業標準調査会、経済産業省)