相性

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相性(あいしょう)とは、二人ないし複数の人間が各々持つ性質性格が合うかどうかのことである。転じて、機械部品などの物に対しても、組み合わせが良い・悪いという場合に相性という言い方をする場合がある。

語源[編集]

相性の、元々の意味は陰陽五行思想の一端で、全ての事物が持つ属性が、相互に良い意味で影響しあってより強まるか、逆に相互の良い部分を相殺しあって悪い状態を招くかといったものである。端的にいうなら、火と木が合わさると、火は勢いを増しより多くの熱を発生させるが、逆に火と水とでは水は炎で蒸発してしまうほか、火もその勢いを削がれる…といったようなものである。実際はより複雑であるが、こういった思想の類型では四大元素など、相互に影響しあって何らかの結果を招くという意味で、この関係性が「相性」という言葉で表された。後に時代が下ると、これは人同士の関係性においても利用され、特に陰陽思想では相反する要素と考える男女の関係性などを含む様々な側面でも利用されたことは想像に難くない。

一般論[編集]

ただ更に時代を下った近代では、陰陽五行思想は一般には余り気に掛けられず、専ら各々の人などが持つ要素・属性などの相互関係で、望ましい方向に発展することを「相性が良い」といい、どうも芳しくない結果に陥りがちな関係は「相性が悪い」と表現する。

この場合は、恋人関係から上司部下など組織役職を含む関係や同僚ないし仲間同士など、様々な人間関係でこの「相性」が気にされる。しかし個人の持つ要素が多岐に渡り、その組み合わせによっても様々な相互作用が発生しうる。ともすれば似たようなケースでもシチュエーションが違えば結果も大きく変化するなど、事前に判るような性質のものでは無い。大抵の場合において「相性が良い/悪い」という場合は、予め関係しあった結果を指す傾向にある。例えば、恋人として付き合った結果としてお互いの長所も短所も好ましい性質と感じて結婚に至ったり、どうも所定の上司の前で緊張してしまって良い結果が出せず叱られてばかりだとか、所定の部下に対してだけ態度に不満があって強く注意してしまいがちだとか、あるいはあの同僚とは一緒に話していても楽しくないが、別の同僚とは話が弾む…などである。

こういった相性では、しばしばあることだが、理知的には説明できないながらも明らかに所定人物同士の関係性が他とは決定的に異なることもある。いわゆる「一目ぼれ」(訳も判らず一見で気に入ってしまうこと)や「癪に障る」(苛立たしいと感じる・怒りのうち抑圧され継続的なもの)など、当事者には説明しがたい感情に支配された結果、相性が良い/悪いとみなされる場合もある。

占いと相性[編集]

往々にして「付き合ってみないことには判らない」という側面のある相性だが、これを予め知りたいという欲求も、人間がその関係性のなかでしか存在できない(社会的動物)という面もあるために無理の無いところで、しばしばこういった相性を知ろうという考えも存在する。

いわゆる性格判断などはそういった側面もあるが、更に広く通俗的な分野では、特定の誰かとの相性を知ろうという占いも盛んである。占いは必ずしも理知的ではない論理に基づいた、言い換えればあやふやなものではあるが、娯楽としての要素もあり、大衆に親しまれている。姓名判断血液型性格分類(ないし血液型占い)、占星術は言うに及ばずラブテスターのような玩具に至るまで枚挙に暇が無く、こういった行為や関連する物品は多い。

またおまじないのようなものの中にも、こういった相性に関係するものは多々見出せる。

血液型と相性[編集]

科学的に、血液型と性格には関係があるとはされておらず、現在知られている血液型による性格分類や相性論はいずれも正しいとは認められていない[1]。だが1970年代から2000年代前半にかけて、多くのテレビや書籍が根拠なく分類を広めたため、いまだに血液型と相性の関連性を信じている人もいる[2]。血液型による性格分類や相性論が広まっているのは、日本とその影響を受けた韓国台湾といった一部地域だけであり、それ以外の地域では性格と血液型を関係づける習慣がなく、日本の血液型性格分類や相性論は奇妙に思われている[3]。そもそも血液型への関心自体が薄く、自分の血液型を覚えていない人も多い(輸血が必要な時などは、その場で血液型検査が行われる)[4]

血液型によって性格や相性を判断し、相手を不快や不安な状態にさせる言動はブラッドタイプ・ハラスメント(通称ブラハラ)と呼ばれ、近年になり社会問題として取り上げられるようになった[5]。採用試験の応募用紙に血液型の記入欄があったため、改善するよう労働局から指導された企業もある[6]

信じる人の心理状態[編集]

血液型による性格分類や相性論は、科学的根拠がないとされるにもかかわらず当たっているように感じる理由として、以下の心理現象が挙げられている。

  • 分類や占いで扱われている性格の特徴は、誰もが「あ〜、そうかも」と思えるように書かれている[7]。例えば「感情が変化しやすい」「実はさみしがりや」などがわかりやすい例であるが、誰にでも多かれ少なかれ当てはまるものである[7]。明るい性格の人であっても暗い気分の時があり、しっかりした人であっても、いつでもどこでもしっかりした人でいられるわけではない[7]。そのため、「××型だから○○」という表現を多く並べれば並べるほど、たいがいの人に当てはまる性格分析が出来上がってしまう[7]。このことを心理学では「バーナム効果」と言い、誰にでも当てはまる“あいまいで一般的な記述”を、自分だけに当てはまる正確なものだと誤解してしまう現象として知られている。
  • 例えば「A型の人とは相性が悪い」という思い込みがあると、A型の人とうまくいかない場面ばかりに目が向くようになり、A型の人と気が合う場面があっても「めずらしい」の一言で済ませてしまうようになる[8]。このことを心理学では「確証バイアス」と言い、自分の信念を裏付ける情報を重視・選択し、これに反する情報を軽視・排除してしまうという現象として知られている。
  • 例えばA型の人が周りから「A型は××型と相性が悪い」という情報を何回も聞くと、無意識のうちに××型の人とは距離を置くようになってしまう[9]。行動が多少なりとも変わった状態で再び「A型は××型と相性が悪い」という情報が入ってきた場合に、自分でも当たっていると感じてしまう。このことを心理学では「予言の自己成就」と言い、根拠のない予言によって行動が生じ、予言通りの結果になってしまうという現象として知られている[9]

これらの現象は、血液型による性格分類・相性論以外の様々な占いにおいても同様に生じることが知られている[10]

工業製品における相性[編集]

パソコン[編集]

パソコンは、パソコン本体に様々なパーツや周辺機器を接続して使用される機器である。それらの製造メーカーは多種多様で、規格の解釈の違いや接続の検証が不十分なまま出荷された製品など、使用する組み合わせによっては正常に動作しない場合がある。そのような場合に、相性が悪いという言葉を使用する場合がある。 すでに動作しているパソコンに取り付けられているパーツやデバイスドライバが原因の可能性も考えられ、相性の問題が発生すると、解決を目指すよりも、諦めて構成を変更したほうが良い場合が多い。

いわゆる相性の悪い組み合わせで正常に動作しない場合、一般的には次のような現象がみられる。

  • 電源ON後のセルフテスト中に止まる。
  • PCIが初期化される時に止まる、または再起動する。
  • 起動するが、特定の操作をするとフリーズする。(止まっているように見える)
  • 起動するが、特定の操作をすると、再起動する。

これらの原因として、

  • 各々のパーツに供給されるべき電力の不足。
  • 割り込み要求(IRQ)の競合
  • メモリアドレス(IO) の競合
  • 規格を逸脱して作られた機器、デバイスドライバ

などが考えられるが、通常、相性が悪い、と言った場合は規格の逸脱や解釈の違いによるものを指す。

基本的に規格の仕様の読み違いによって、特性や基本構造に差異があるために起こる現象だが、ユーザーにして見れば「何だか判らない不都合競合)」であり、問題の判別は勿論、異常個所の修正は困難である。

相性の問題が起きた時には「むしろ買い換えるべきだ」とすら言われている背景には、「原因が無限に考えられ得るため、特定する手間を考えれば、購入資金分を諦めて別の同等品を新しく買った方が安上がり」という考えがある。しかし中には初期不良である可能性も含まれるため、購入店で個別に動作するかを確かめてもらう方が良い。 悪質な販売店では、不良品や故障品を「相性の問題だ」で済ます場合もあり、注意を要する。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^
    • 縄田健悟(2014)「血液型と性格の無関連性 ―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―」『心理学研究』85(2), 148-156. - 日米約1万人のデータを調べたが有意差は出なかった。
    • 上村晃弘、サトウタツヤ(2006)「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性」『パーソナリティ研究』15(1), 33-47.
    • 広島修道大学人文学部助教授 中西大輔のウェブサイト「血液型性格判断をやめよう」 - 血液型性格判断の持つ問題点や差別性が心理学者の立場から詳説されている。
    • 大阪大学大学院 生命機能研究科 認知脳科学研究室「血液型と性格は関係があるか?
    • 大村政男(1990, 1998新訂, 2012新編)『血液型と性格』福村出版
    • 村上宣寛(2005)『「心理テスト」はウソでした。受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社
    • WU Kunher, LINDSTED Kristian D., LEE Jerry W. (2005). Blood type and the five factors of personality in Asia. - 台湾の論文。この調査では、血液型と外向性の関連性を否定する結果が出た。
    • 山崎賢治・坂元章(1992) 「血液型ステレオタイプによる自己成就現象〜全国調査の時系列分析〜」『日本社会心理学会第33回大会発表論文集』 - 血液型性格関連説が社会的に広まり始めた数年後の1978年を起点に1988年まで、日本人延べ32,347人の自己評価による性格の経年変化を調べた。血液型性格分類を信じ、自分の性格をそれに合わせて振る舞っている人が有意に多いことを示した。
    • Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004). Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978–1988. Progress in Asian Social Psychology, 4, 239–262. - 上記の山崎賢治・坂元章(1992)と同様の内容。
    • 武藤浩二・長島雅浩他(2012)「教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究」『2011年度科研費研究成果報告書』 - 山崎賢治・坂元章(1992)は1978年から1988年までの11年間に毎年約3,000人(延べ32,347人)を解析したものであるが、このデータを2000年代にまで拡張して解析しても、同様の結果がでることが判明した(詳細な人数・年数は報告書には未掲載)。
    • 山岡重行(2009)「血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2))」『日本パーソナリティ心理学会大会発表論文集』 - 1999年から2009年までの6600人を調べたところ、血液型性格分類に対するステレオタイプを持つ被験者に限り多くの項目で有意差が出た。
  2. ^ MARI YAMAGUCHI (2005年5月6日). “Myth about Japan blood types under attack”. The Canadian Press. 2013年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月5日閲覧。
  3. ^ 海外記事を紹介するnewSphereの記事(血液型に対する海外メディアの反応)では「海外では血液型と性格を結びつけることはないためか、日本のこうした慣習は新鮮なようだ」としている。しばしば海外メディアは日本の奇妙(Weird)な習慣として血液型性格診断を紹介している(米NYタイムズ記事英BBC記事
  4. ^ BBC NEWS Japan and blood types: Does it determine personality?
    日刊サイゾー「【のり・たまみのへんな社会学 第5回】世界でも日本だけ!? 血液型にこだわる日本人の国民性
  5. ^ 「血液型を扱う番組」に対する要望”. BPO(放送倫理・番組向上機構)青少年委員会. 2014年4月5日閲覧。
  6. ^ 縄田健悟(2014)「血液型と性格の無関連性 ―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―」『心理学研究』85(2), 148-156.
    “科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査”. 読売新聞(YOMIURI ONLONE). http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html 2014年8月17日閲覧。 
    “B型はマイペース?…研究者「関係ありません」”. YOMIURI ONLINE KODOMO. http://www.yomiuri.co.jp/kodomo/newspaper/compare/20140723-OYT8T50076.html?from=yartcl_popin 2014年8月17日閲覧。 
  7. ^ a b c d “信じていいの、この占い。☆バーナム効果☆”. BONITA message. http://bonitamessage.jp/ww/cont/id/1152 2014年7月25日閲覧。 
  8. ^ “「確証バイアス」にご用心 ~血液型と性格との相関について~”. ITmedia オルタナティブブログ. http://blogs.itmedia.co.jp/tani/2014/07/16-4800.html 2014年7月25日閲覧。 
  9. ^ a b “予言の自己成就”. JAW 安全衛生ホームページ. http://www.jaw.or.jp/anzen/letter/no_25.htm 2014年7月25日閲覧。 
  10. ^ 大西赤人(1986)『「血液型」の迷路』 p.86 - 心理学者の大村政男が性格テストでもバーナム効果は起こると述べている。

外部リンク[編集]