ファラオの装身具
この項目では、ファラオの装身具について説明する。王は彫像や壁画などには、王権・権力を象徴するものとともに描かれた[1]。ここではその主だったものを紹介する。
冠
王は様々な種類の冠を所有していたが、このうちほとんどの材質は不明である[1]。以下、ヒエログリフとともに画像付きで示すが、ヒエログリフ表記はコアのみ表し、音声補字は示さない。
白冠・赤冠・二重冠
白冠・赤冠・二重冠[2] ヒエログリフで表示 | ||||||||
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それぞれ、ヘジェト(HDt)、デシェレト(dSrt)、セケムティ(sxm.ty)[2][注釈 1]という別名があった。 これらはまた、それぞれ上エジプト、下エジプト、上下エジプトを象徴していた[1]。
青冠
青冠[2] 翻字:xprS ヒエログリフで表示 | ||
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戦闘場面など、軍事面での王権を示すための冠。ケペレシュともいう。中王国時代後の第2中間期第13王朝の石碑に初出。
ネメス
ネメス 翻字:nms ヒエログリフで表示 |
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最も一般的な頭巾で、王だけでなく貴族も被った[1]。王が被る場合は額にウラエウスや、上下エジプトの守護女神であるネクベトとウアジェトを模したハゲワシとコブラの意匠を付けた[1]。ツタンカーメンのマスクはネメスである。
アテフ
アテフ[2] 翻字:Atf ヒエログリフで表示 | ||
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白冠またはパピルスの茎を束ねたものを中心に、左右にダチョウの羽を配置した[1]。 場合により、ヤギの角を冠の左右下に配置したり、太陽円盤を組み合わせられた。オシリス神やソカル神などが被り、人の場合は神殿の祭司が被った。王も、神殿の儀式などで神官の役をするときに使用した[1]。
シュウティ
シュウティ[2] 翻字:Sw.ty ヒエログリフで表示 | ||
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アメン神の冠[1]。大きな聖なる「二枚の羽」であり、メンチュ神が身に着けることもある[3]。
杖
ヘカ
ヘカ[2] 翻字:HqA ヒエログリフで表示 | ||
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握りの部分が鍵型に曲がっており、牧民の杖を表す。上エジプトの王権を象徴する物の1つ[1]。なお、表意文字として、「支配する」という動詞、「支配者」という名詞をも表す。
ネケク
ネケク[2] 翻字:nxxw ヒエログリフで表示 | ||
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脱穀の際に用いる打ち棒であり、農民の竿を表す。農耕が盛んだった下エジプトを象徴している。なお、ヘカとネケクの2本を一組にし手に持った形で王やオシリスは表される[1]。
ウアス
ウアス[2] 翻字:wAs ヒエログリフで表示 | ||
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支配・統治の象徴である。杖の頭の部分にセト神の顔が表されることがあり、神権をも象徴していた。この杖は先が二股に分かれているが、その原因として、ヘビよけの杖の名残ではないかという説がある。二股の部分でヘビの頭を押さえると、胴は杖に巻き付くため容易に捕まえることができるのである。 古代エジプト人にとって、ヘビはアペプに象徴されるように太陽神の航行や来世への旅を邪魔する魔物の象徴であり[注釈 2]、それを退治する道具であるウアス杖は王や神の守護の象徴とされていたようである[1][3]。
ヘジュ
こん棒であり[2]、王がこれを手に持った形で描かれることがある。
アブァ笏
王の持つ権威を象徴する笏の一つ。表音文字としては、セケム(sxm)の意味がある[2]。
その他
アンク
アンク[3] 翻字:anx ヒエログリフで表示 | ||
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生命・生命力を象徴し、王がこれを(右)手に持った姿で描かれることがある。
ティト
ティト[3] 翻字:tit ヒエログリフで表示 | ||
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「イシス女神の血」の別名を持ち、結んだリボンを表す。生命力・母性的な守護を象徴する[3]。王が死んだ後にオシリスとなった際、「オシリス・セティ」などと書く時に用いられることがある。
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脚注
注釈
出典
参考文献
- 松本 弥『図説 古代エジプト文字手帳』株式会社 弥呂久、1994年。ISBN 4946482075。
- 松本 弥『図説 古代エジプトのファラオ』株式会社 弥呂久、1998年。ISBN 4946482121。
- 松本 弥『古代エジプトの神々』株式会社 弥呂久、2020年。ISBN 9784946482366。