水中花

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水中花(すいちゅうか)は、水を入れたコップなどに入れて造花や作り物の魚、鳥などを開かせるもの。

日本には江戸時代中国から伝来したとみられる[1]延宝年間に酒席での遊びとして酒の杯に浮かべることが流行したため、「酒中花」「杯中花」の呼び名もある。明和年間のころからは浅草の楊枝店のみやげ物として評判となり、縁日でもよく売られた[2]

古くはヤマブキの茎やタラノキの芯、木片(かんな屑)などを加工・圧縮して作られたが、現代のものは化学繊維(シルキ)で作られている[3]。夏の季語としても扱われる。

引用[編集]

マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』には、紅茶にひたしたマドレーヌの味によって引き出された記憶の奔流を水中花に喩える以下のような著名な文章がある。プルーストは友人レイナルド・アーンのいとこのマリ・ノードリンガーから水中花をプレゼントされたことがあり、これがその比喩の着想のきっかけとなった[4]

「ちょうど日本人の玩具で、水を満たした瀬戸物の茶碗に小さな紙きれを浸すと、それまで区別のつかなかったその紙が、ちょっと水につけられただけでたちまち伸び広がり、ねじれ、色がつき、それぞれ形が異なって、はっきり花や家や人間だと分かるものになってゆくものがあるように、今や家の庭にあるすべての花、スワン氏の庭園の花、ヴィヴォンヌ川の睡蓮、善良な村人たちとそのささやかな住居、教会、全コンブレーとその周辺、これらすべてががっしりと形をなし、町も庭も、私の一杯のお茶から飛び出してきたのだ。」[5]

出典[編集]

  1. ^ 世界大百科事典第2版、2017年9月16日閲覧。
  2. ^ 日本大百科全書、2017年9月16日閲覧。
  3. ^ 『角川俳句大歳時記 夏』 角川学芸出版、2006年、p294。
  4. ^ ジャン=イヴ・タディエ著、吉川一義訳 『評伝プルースト』、筑摩書房、2001年、下巻p12-13。
  5. ^ マルセル・プルースト著、 鈴木道彦編訳『失われた時を求めて 』集英社文庫、2002年、Ⅰ巻p80-81。