撤退

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撤退(てったい retirement and/or withdrawal)とは、戦略においてある部隊が敵地における作戦地域から部隊を後方へ移動すること。戦術論における後退行動とは異なる概念である。

日本語ではダブルスピークとして転進と言い換えられることもある。

もし敵が攻勢に出ている場合、もしくは作戦地域の治安が極度に悪化している場合、全軍撤退の最終段階において、作戦地域に残っている部隊は戦闘力の低減が避けられないために一時的に危険な状況に置かれる。

撤退はその地域を保持できなくなったためという負の意味合いが強く、軍事的、政治的に勝利を収め、その地域を保持する必要性がなくなって部隊が引き上げる場合は撤収ということが多い。ただし両者の意味は同義である。

  • 例:米軍は1973年ベトナムより撤退した。
  • 例:米軍は対ソ戦略拠点としての意味を失ったアイスランドから撤収した。

一部の新聞社等では、特に自衛隊において撤兵という表現をすることもあるが、これは定義された用語ではない。

企業における撤退[編集]

複数の事業を展開したり複数の地域で事業をする企業が、不採算などを理由に特定の事業や地域から携わることをやめる場合を「撤退」と呼ぶことがある。事業や地域からの撤退には主に2つある。

  1. 当該事業組織を他の企業へ売却する(事業売却による撤退)
  2. 当該事業そのものを清算する(清算による撤退)

特に製造事業の撤退の場合は、製造物責任法(日本)などの法律により、過去の製造物に対してメンテナンスや消耗品販売、不備が発生した際や使用済みの製品回収などの責任を一定期間負わなければならないことが社会的に求められる。事業売却による撤退の場合、こういったメンテナンスに関するサービスごと他者に売却することが多い。一方、清算による撤退の場合、撤退後も自社でメンテナンス部門をおいておく必要がある。

同様に保険事業に代表される将来のサービスを契約する事業の場合も、既存契約の継承先をどこにするか決定する必要がある。

交通機関において複数社による共同運行を行っている(いた)路線では、過去に運行を行い現在は撤退した事業者も、予約・発券業務や運行支援等は引き続き関わる場合も多い。

商品やサービスに限らず、スポーツ界でも選手の獲得、企業やチームの継続参戦、大会の招致を断念する意味でも用いられる。

備考[編集]

  • 「撤退」を「転進(転じて進む)」という語に換えたのは、二次大戦時の大本営発表により、これを「特殊な話法」とする考え方があるが、こうしたダブルスピーク自体は武家時代からの伝統的発想であり、上泉信綱伝の『訓閲集』(大江家兵法書を戦国風に改めた兵書)巻六・「士鑑・軍役」の項には、「味方の人数、引く・退く・逃げる・敗軍などというべからず。人数をあける、というべし」や味方が負傷した場合の報告で、斬られた場合、「斬らせた」と報告し、矢で射られた場合、「射させた」と報告することなどが記され、諸々の慣例が見られる。ただし、これらは家臣の主君(部下の上司)に対する報告であって、大本営発表のような民間人に対する発表とは異なる。
  • 武士が日常から「ひく」や「まける」といった語を嫌ったことは、『耳嚢』の明珍派甲冑師と武士のやりとり(値引きの際に、「ひく」「まける」を武士に言った失敗談)からもわかる(日常的にそれらの語を避けていた)。また『平家物語』「逆艪」において、船に逆艪(後方に移動するための)を備えさせるかの論争で、源義経が退く姿勢を嫌った記述からも、船戦でも同様の認識はあったとわかる。

関連項目[編集]