思考と言語

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『思考と言語』(しこうとげんご、原題: Мышление и речь)は、1934年ソビエト連邦で出版されたレフ・ヴィゴツキーの主著。

概要[編集]

全7章。第1章と第7章とは著者の死の直前に書かれた。ソビエトの発達心理学の発端をつくった書であるとともに、20世紀全般の実験心理学の基礎を形成した書でもある。1962年になって米国および日本で訳書が出版された。

思想が詳細な言語表現へ移行していく過程(表現の形成)および詳細な言語表現が思想へと移行していく過程(表現の解釈)を科学的心理学の立場から解明した。(カルル・レヴィチン)

第2章の問題[編集]

1930年、ヴィゴツキーと彼の弟子たちによる自己中心的な言語問題についての実験研究に関する短い発表が雑誌『心理学レビュー』に掲載される。これを当時のピアジェは気にとめていなかったことが後に判明する[1]

1932年、ヴィゴツキーは、ピアジェの『子どもの言語と思考』のロシア語版への序文を書き、自己中心性、の概念その他についてピアジェの当時の学説を批判的に検討した。これが『思考と言語』の第2章となった。正確には批判の主な対象となったのは、ピアジェの初期の著作である『子どもの言語と思考』と『子どもの判断と推理』の2冊である。

1962年、ヴィゴツキーの『思考と言語』の英訳の附録として、ヴィゴツキーの批判に対して、ピアジェ自身の「意見(コメント)」が出された。この中で、ヴィゴツキーの見解を点検して自己中心性、および自己中心的言語の意義の展開の可能性を示している[2]

結語[編集]

  • 「私は、私が言おうとしていたコトバを忘れてしまった。すると、具体化されなかった思想は、陰の世界に帰っていってしまう。」
  • 「意識は、太陽が水の小さな一滴にも反映されるように、コトバのなかで自己を表現する。コトバは、小世界が大世界に、生きた細胞が生体に、原子が宇宙に関係するのと同じしかたで、意識に関係する。コトバは、意識の小世界である。意味づけられたコトバは、人間の意識の小宇宙である。」(柴田義松訳)

書誌情報[編集]

  • レフ・ヴィゴツキー著

参考文献[編集]

  • アレクサンドル・ルリヤ著『言語と意識』天野清訳、金子書房、1982年
  • カルル・レヴィチン著『ヴィゴツキー学派ーソビエト心理学の成立と発展ー』柴田義松訳、ナウカ、1984年

脚注[編集]

  1. ^ アレクセイ・レオンチェフ (言語学者)著『ヴィゴツキーの生涯』新読書社、2003年
  2. ^ 柴田義松「ソビエト心理学からみたピアジェ」(波多野完治編『ピアジェの発達心理学』国土社、1965年所収)