四大元素 (絵画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

四大元素』(しだいげんそ、: Vier Elemente, : The Four Elements)は、ジュゼッペ・アルチンボルドが描いた一連の絵画の総称。単に『四大』とも[1]

作品[編集]

アルチンボルドは、マクシミリアン2世に『四大元素』と『四季』の2つの連作を捧げた。連作は相互に関係しており、『大気』と『春』、『火』と『夏』、『大地』と『秋』、『水』と『冬』がそれぞれ呼応している[2][3]。『四大元素』は、世界の構成要素である四大元素が、それぞれにふさわしいものによって表されたもので[3]1566年に最初の連作が制作された[4]。連作はともに大きな評判を呼んだため、いくつかのヴァージョンが制作されている(箇条書きで示した制作年代などはそれぞれ右写真のもの)[5]

『大気』[編集]

『大気』

オリジナルは失われ、現存するものは画家本人によるコピーと考えられる(登場する鳥の多くはアルチンボルドの手になる素描が残っている)。ただし、支持体が他の作品と異なることやタッチの違いなどから、アルチンボルド作としない研究者もいる。また、頭部にひしめき合う鳥たちは頭しか描かれていないため、種類を特定するのは難しい。胸元のと正面の孔雀は、ともにハプスブルク家の象徴である[6]

  • 制作年代:不詳
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • サイズ:74.4×56cm
  • 所蔵:スイス、個人蔵

『火』[編集]

『火』

薪や蝋燭、火打金などが組み合わされているが、動植物に比べるとアイテム数に限りがあるため、全体にややシンプルな仕上がりとなっている。しかし、火器を配することで、 皇帝が「四大元素としての火」のみならず「武器としての火」をも統べることを示し、なおかつ金羊毛騎士団の紋章と〈双頭の鷲〉を描き込んでハプスブルク家の力を強調している[6]

  • 制作年代:1566年
  • 技法:油彩、板
  • サイズ:66.5×51cm
  • 所蔵:ウィーン、美術史美術館

『大地』[編集]

『大地』

アルチンボルドは動物を描いたスケッチを数多く残している。本作は、おそらくそれらを組み合わせたものであるが、作画に合わせてサイズをアレンジしている。身体部分の金の羊毛や、英雄ヘラクレスを象徴するライオンの毛皮が目を引くが、これらもハプスブルク家ゆかりのモチーフである[7]

  • 制作年代:不詳
  • 技法:油彩、板
  • サイズ:70.2×48.7cm
  • 所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション

『水』[編集]

『水』

タコやエビなど水中の生き物がびっしりと収められており不気味さが漂っている[4]。描かれた魚のほとんどは地中海に生息しているものとされる。大洋を暗示する真珠はハプスブルク家の広大な領土、貝や甲殻類は武器や軍事力を示している。真珠のアクセサリーと、海が女性を象徴することから、本図は女性と思われる。頭上に突き出した小さな魚のヒレと思しきものはティアラかと考えられる[7]

  • 制作年代:1566年
  • 技法:油彩、板
  • サイズ:66.5×50.5cm
  • 所蔵:ウィーン、美術史美術館

解釈[編集]

国立西洋美術館主任研究員の渡辺晋輔は、「『火』では、立派な帝国であることを誇示するために武器を描いた。『水』に関しても理由がある。宮廷があったウィーンは海のない町であり、海の生き物を集めることは大変で驚きをもたらすものであった。宮廷に世界中のものを集めることが、帝国や皇帝の力を示した」と述べている[8]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 『花と果実の美術館』 2010, p. 92.
  2. ^ 『芸術新潮』 2017, p. 42.
  3. ^ a b さあ、謎解きの世界へ アルチンボルド展”. 国立西洋美術館. 2018年9月24日閲覧。
  4. ^ a b 「アルチンボルド展」 だまし絵に隠された知的独創性”. 産経新聞社 (2017年7月2日). 2018年9月24日閲覧。
  5. ^ アルチンボルド展 知が生んだ寓意”. インターネットミュージアム (2017年6月19日). 2018年9月24日閲覧。
  6. ^ a b 『芸術新潮』 2017, p. 28.
  7. ^ a b 『芸術新潮』 2017, p. 29.
  8. ^ 椋田大揮 (2017年9月7日). “アルチンボルドの寄せ絵に皇帝の力を見る”. 多摩美術大学芸術学科. 2018年9月24日閲覧。

参考文献[編集]