千住郵便局電話事務室

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NTT千住ビル

地図
情報
旧名称 千住郵便局電話事務室
用途 電気通信設備[1]
旧用途 電話事務室
設計者 山田守
施工 大倉土木(現:大成建設[2]
構造形式 RC造[2]
延床面積 1,366 m² [2]
階数 地上2階[3]
竣工 1929年
所在地 東京都足立区千住中居町
座標 北緯35度44分57.1秒 東経139度47分55.6秒 / 北緯35.749194度 東経139.798778度 / 35.749194; 139.798778 (NTT千住ビル)座標: 北緯35度44分57.1秒 東経139度47分55.6秒 / 北緯35.749194度 東経139.798778度 / 35.749194; 139.798778 (NTT千住ビル)
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千住郵便局電話事務室(せんじゅゆうびんきょくでんわじむしつ)は、東京都足立区千住中居町にある建築物2002年(平成14年)からは、NTT千住ビルとしてNTT東日本に管理されている。山田守による設計の名称としては旧千住郵便局電話事務室として表記される場合がある[4]

概要[編集]

現存する数少ない山田守設計の建築物である。山田が設計した建物では初期のもので「ドイツ表現主義」と言われている[2]。設計図面は山田守建築事務所や逓信省には残っておらず東海大学湘南キャンパスにある中央図書館貴重本庫に所蔵されている[5]。図面によれば建物の中は竣工当時の施設として公衆溜、公衆電話、事務室、応接室、食堂、物置、湯沸室、小使室、監視員室、修繕室、宿直室、工夫溜、吏員宿直室、技術官室、電力室、電池室、ケーブル室、電気調節機関室、石炭庫、ポンプ室、男子便所、脱衣室、浴室、焚場、通路、足洗場、塵芥溜、灰溜である[4]

また、千住中居町のマンション新築工事中に建設現場から大量の色タイルが発見され、そのタイルは千住郵便局電話事務室のタイルだということが分かった[6]

沿革[編集]

1912年(明治45年)5月11日に当時の千住郵便局で開始した特設電話交換業務[7]を後継する形で、1929年(昭和4年)5月に竣工した[8]逓信省の技師である山田守によって設計された、いわゆる逓信建築の一つである[8]1930年3月23日には、従来の電話交換方式である磁石式から自動式に切り替えた[9]。また、1932年(昭和7年)10月1日、合併により足立区が発足することとなり、名称も足立郵便局電話分室に改称された[9]。南側のアーチ門は、刑務所の場面を撮影するロケに使われたことがある[6]1995年ごろに建て替えの計画があったが、基礎工事が堅固であり解体費用がかさむため、計画は立ち消えた[6]。その後NTT足立電話局として運用され[10]2002年(平成14年)3月の足立局廃止後はNTT東日本千住ビルという名称になっている[2]

特徴[編集]

昭和初期に流行ったスクラッチタイルは、1枚1枚が手焼きのレンガである[11]。千住郵便局の設計図面はすべて青焼き 図面でA1サイズ35枚で構成され、工事名は「千住郵便局電話分室新築」となっている[11]。設計および校閲の欄には山田の印鑑が押されている[11]。建物は、南側と東側の前面道路に沿う形でコの字型に配置されており、すべての外壁面や貫通路壁面は、曲面で連続するようにスクラッチタイルに覆われている[11]。これらタイルの色は茶色で、長手方向に溝がきられている[11]。タイルを水平に並べているデザインはアムステルダム派(表現主義も参照のこと)からの影響がうかがえると評される[12]エーリヒ・メンデルゾーンは曲線の使い方や曲面に貼られたタイルに 興味を示した[12]。また山田が家族にあてた手紙では山田自身が「お世辞であろう」と前置きしたうえで、ヴァルター・グロピウスマックス・タウトブルーノ・タウトヨーゼフ・ホフマンル・コルビュジエらの著名な建築家に千住郵便局をほめられたと記している[12]

屋上に増築されたペントハウス部分は山田の設計ではないという説がある[2]

DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築として、2017年度の選定作品となった[13]

外壁[編集]

脚注[編集]

  1. ^ NTT東日本鉄塔利用可能情報 東京(2016年5月)” (PDF). NTT東日本. 2018年9月16日閲覧。
  2. ^ a b c d e f NTT東日本 千住ビル”. 建築情報. 2018年9月17日閲覧。
  3. ^ 長谷川 2009.
  4. ^ a b 山田守建築作品集刊行会編『山田守建築作品集』東海大学出版会、1967年。 
  5. ^ 大宮司 2005.
  6. ^ a b c 朝日新聞 2003.
  7. ^ 日本電信電話公社東京墨田地区管理部 1984, p. 211.
  8. ^ a b 「モダニズムにとってしあわせとは何か。近代建築の保存問題」『東京人』第32巻第5号。 
  9. ^ a b 日本電信電話公社東京墨田地区管理部 1984, p. 44.
  10. ^ 大宮司 2009.
  11. ^ a b c d e 山下 2014, p. 9.
  12. ^ a b c 「山田守 : 分離派から「インターナショナル・スタイル」まで ケン・タダシ・オオシマ 2011-03-31」『比較日本学教育研究センター研究年報』第7巻。 
  13. ^ 2017年度 DOCOMOMO Japan 選定作品”. DOCOMOMO Japan. 2018年9月16日閲覧。

参考文献[編集]

  • 長谷川 嘉孝,大宮司 勝弘,岩岡 竜夫「千住郵便局電話事務室と他の山田守局舎建築の比較 山田守作品研究:11」『日本建築学会学術講演梗概集F-2 建築歴史・意匠』2009年、NAID 110007982004 
  • 大宮司 勝弘,長谷川 嘉孝,岩岡 竜夫「『千住郵便局電話事務室の設計図面とその特徴』山田守作品研究」『日本建築学会』第10巻、2009年7月20日、623-624頁、NAID 110007982003 
  • 山田守建築作品集刊行会編『山田守建築作品集』東海大学出版会、1967年。 
  • 日本電信電話公社東京墨田地区管理部 編『墨東の電信電話』社団法人電気通信協会、1984年3月。全国書誌番号:85017644 
  • 建築家「山田守」の現存する設計図面について 大宮司勝弘 東京家政学院大学紀要 第 45 号 2005 年” (PDF). 東京家政学院大学. 2018年9月20日閲覧。
  • 「モダニズムにとってしあわせとは何か。近代建築の保存問題」、『東京人』第32巻第5号。
  • 山下ルミコ『足立区大人の歴史さんぽ旅』リブロアルテ、2014年8月5日。ISBN 978-4-89610-830-9 
  • “ランドマーク 町名より有名な電話局(千住物語:21)”. 朝日新聞朝刊. (2003年12月10日) 

関連項目[編集]