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ルーム・1411

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Bennie Goodman's Boysによる、1928年の Brunswick 78, 4013。

ルーム・1411」(Room 1411) は、1928年グレン・ミラーベニー・グッドマンが共同で作曲したインストゥルメンタル曲で、ベニー・グッドマンズ・ボーイズ (Benny Goodman's Boys) 名義でブランズウィック・レコードから78回転盤がリリースされた。この曲は、知られている限りではグレン・ミラーの最初の作曲作品であり、後に1930年代から1940年代にかけてのビッグバンド時代に、いずれも最も成功したバンドリーダーとなったグレン・ミラーとベニー・グッドマンが、その活動初期において協力した作例のひとつである。

録音の経緯

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「ルーム・1411」は、別名を「ゴーイン・トゥ・タウン (Goin' To Town)」ともいい、スペイン語のレーベルには「Pieza 1411」とも記された曲であり、グレン・ミラーとベニー・グッドマンによって[1]、グレン・ミラーがベニー・グッドマンズ・ボーイズに加わっていた1928年に作曲された。このインストゥルメンタル曲は、1928年6月23日ニューヨークで録音され、「ジャングル・ブルース (Jungle Blues)」とのカップリングで、ブランズウィック・レコードから Brunswick 4013 として78回転盤がリリースされた[2]。収録されたインストゥルメンタル曲のマトリックス番号はMatrix # E27639=C とされ、1928年にリリースされたオリジナルのブランズウィックの78回転盤には、「シミー - ワンステップ」と説明が記されていた。

「ルーム・1411」をスタジオ録音したベニー・グッドマンズ・ボーイズのパーソネルは、オールスター編成で、グレン・ミラーがトロンボーン、レイ・ボーダック英語版がドラムス、ディック・"イッキー"・モーガン (Dick "Icky" Morgan) がギター、フッド・リビングストン英語版がテナー・サクソフォーン、ジミー・マクパートランド英語版がコルネット、ヴィック・ブレイディス (Vic Breidis) がピアノ、ハリー・グッドマン (Harry Goodman) がチューバ、そしてベニー・グッドマンがクラリネットとバリトン・サクソフォーンを担当した。このバンドは、1928年から1929年にかけて録音をおこなった。他のセッションの機会には、トミー・ドーシーがトロンボーン、バド・フリーマン英語版がテナー・サクソフォーン、ウィンギー・マノン英語版がトランペット、 ベン・ポラック英語版がドラムスで参加することもあった。

当時、グレン・ミラーとベニー・グッドマンは、ニューヨークザ・ウィットビー英語版集合住宅で、同じスイートルームに暮らしており、部屋番号は 1411 であった。この曲のタイトルは、この部屋番号に由来している。1955年に出版された書籍『Hear Me Talkin' To Ya: The Story Of Jazz As Told By The Men Who Made It』の中で、ナット・シャピロ英語版ナット・ヘントフジミー・マクパートランドは、この曲名の由来について次のように回想している。「僕たちがザ・ウィットビーのアパートメントに移り住んでから2週間ほど後だったけど、ここではギル・ロディン英語版、ディック・モーガン (Dick Morgan)、ベニー・グッドマン、グレン・ミラーがみんなスイートに入ってた。そこにみんなで移り住んだわけで、事実上、バンドのほとんど全員だった ... 部屋番号は1411だった。それでベニー・グッドマンズ・ボーイズの「ルーム・1411」というタイトルが出てきたわけさ ([A]fter a couple of weeks we moved into the Whitby Apartments, where Gil Rodin, Dick Morgan, Benny Goodman, and Glenn Miller had a suite. We all moved into that, practically the whole band. ... The number of that apartment was 1411. And that is how that title came up, Room 1411, by Benny Goodman's Boys.)」[3]

ベニー・グッドマンは、「この、より真っ直ぐなシカゴ・スタイルの曲である「ルーム・1411」では (on the more straight-ahead Chicago-style 'Room 1411')」バリトン・サクソフォーンを演奏した[4]。「ルーム・1411(ゴーイン・トゥ・タウン)」は、知られている限りではグレン・ミラーの最初の作曲作品である。このインストゥルメンタル曲は、2つのバージョンがリリースされた。この曲は、1943年のアルバムChicago Jazz Classics』(Brunswick Album No. 1007) に収録され、10インチのシェラック78回転盤4枚から成るこのアルバムの 80029A に収められ、『ビルボード』誌の1943年9月18日号にレビューが掲載された[5]。この録音は、ブランズウィック・コレクターズ・シリーズ (the Brunswick Collectors' Series) の一環として、1950年に33回転1/3のLP盤でリイシュー英語版された (Brunswick BL-5815)[6][7]。このLP盤は、1958年にベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・ボーイズ (Benny Goodman & His Boys) 名義で、『ビルボード』誌にレビューが掲載された。

この録音は、タイムレス・レコード英語版からリリースされた2005年のアルバムThe Young Benny Goodman: 1928-1931』や、デッカからLP盤2枚組で1973年に出された『A Jazz Holiday』、ASV Living Era英語版から1998年に出たベニー・グッドマンの『A Jazz Holiday: 1926-31』、クラシックス英語版から1993年に出た『Benny Goodman: 1928-1931』、チャーリーから2006年に出た『Benny Goodman: Selected Favorites, Volume 17』などに収録されている。

このインストゥルメンタル曲は、7インチの45回転EP盤もブランズウィック・レコードから1953年に EB-71016 としてリリースされた[8]。この曲の別テイクは、ドイツでドイツ・ブランズウィックから「Zimmer No. 1411」として1928年に緑色のレーベルの78回転シングル盤が出され、B面には1928年にスタジオ録音された「ジャングル・ブルース」が収められた。この78回転盤は、10年ほど後に、ドイツでもブランズウィックから再リリースされた。

ジャズ・グループであるシカゴ・リズム・ウィズ・ブッチ・トンプソン (Chicago Rhythm with Butch Thompson) は、ストンプ・オフ英語版から出した1983年のアルバムOne in a Million, Vol. 2』にこの曲を収録した。アイオワ州デモインで開催された2011年のグレン・ミラー・フェスティバル (the 2011 Glenn Miller Festival) では、 バリフー・フォックストロット楽団 (the Ballyhoo Foxtrot Orchestra) が、このインストゥルメンタル曲を演奏し、2018年には the Mlp's Dixie Blue Blowers、2021年にはイタリアのクラリネット奏者 Lorenzo Baldasso、2012年にはオーストリアウィーンでコンサートをおこなった the Original Swingtime Big Band が、それぞれ演奏した。

脚注

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  1. ^ National Ragtime and Jazz Archive Recordings: P, Q & R Titles.
  2. ^ 1950年にブランズウィックからLP盤で出た、Benny Goodman and His Boy『Chicago Jazz Classics』(BL 58015) のライナーノーツでは、音楽評論家で歴史家のアーヴィング・コロディン英語版が、録音日を1928年6月4日、場所はニューヨークと記している。このアルバムは、78回転盤でもリリースされた (B-1007)。
  3. ^ 1950年のブランズウィックのLP盤(BL 58015) のライナーノーツで、コロディンは曲名の由来について、これとは異なる説明をしている。彼は、「伝説によると ([a]ccording to legend)」この曲名は、シカゴ音楽出版事業者作詞家でもあったウォルター・メルローズ英語版が、ニューヨークホテル・マンガー(the Hotel Manger、後のホテル・タフト)英語版に病気で滞在したときの部屋番号だったという。彼がこの曲をグッドマンとミラーから買い取った際、彼らは感謝を込めてこの曲に部屋番号にちなむ名を付けた。コロディンは、グレン・ミラーが次のように述べたとしている。「こいつを売って、前渡金を分けたとき、僕らは、曲を書いてやるのは楽勝で決まりだなと思った。 (When we sold this thing and divided the proceeds, we decided that the song-writing racket was a push-over)」
  4. ^ Firestone, Ross. Swing, Swing, Swing: The Life and Times of Benny Goodman. Norton, 1998, p. 49.
  5. ^ Benny Goodman And His Boys --- Chicago Jazz Classics. Discogs.
  6. ^ 1950 10" LP album release. Discogs.com.
  7. ^ Three sources list Glenn Miller and Benny Goodman as the songwriters of "Room 1411". The Brunswick Collectors' Series 78, Brunswick 80029 A, a Brunswick re-issue series from the 1940s and early 1950s, lists the title and songwriting credit on the record label as follows: "Room 1411 (Glenn Miller-Benny Goodman)". The Brunswick 78 collection Chicago Jazz Classics, issued as album number B-1007, also lists Miller and Goodman as the composers of "Room 1411". The Jazz Online website lists the songwriters for "Room 1411" as : "G. Miller – B. Goodman".Jazz Anthology website.
  8. ^ Benny Goodman And His Boys --- Chicago Jazz Classics, Volume 2. Discogs.

参考文献

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  • Firestone, Ross. Swing, Swing, Swing: The Life and Times of Benny Goodman. Norton, 1998.
  • Shapiro, Nat, and Nat Hentoff. Hear Me Talkin' to Ya: The Story of Jazz As Told by the Men Who Made It. New York: Rinehart and Company, 1955.
  • Simon, George Thomas. Simon Says. New York: Galahad, 1971. ISBN 0-88365-001-0.

外部リンク

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