マネー・マーケット・ファンド

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マネー・マーケット・ファンド(Money Market Fund、MMF)は主に債券を組み入れ資産とするミューチュアル・ファンド。銀行へ預金するような感覚で保有されていたが、世界金融危機で額面割れした。1971年、ブルース・ベント(Bruce R. Bent)、ハリー・ブラウン(Henry B. R. Brown)の2人が「リザーブ・ファンド」を設立し、アメリカの公社債証券化した。

預金との競争[編集]

1973年オイルショックインフレーションが進み、銀行預金の実質的価値が一層目減りした。1974年2月、ドレフュス商会(1994年にメロン・フィナンシャルと合併)のハワード・スタインがノーロードのMMF(Dreyfus Liquid Asset Fund)を開発した。年内に7億ドルを売上げ、全米の投信会社が模倣するようになった。こうしたMMFは銀行預金よりも利回りが良かったが、MMFで集めた資金は大口の譲渡性預金を購入しやすい金利のメガバンクへ向かった。ポール・ボルカーはその開発力を称えつつ、しかし銀行を淘汰する性質に対して斬新なら良いわけではないと苦言を呈した。ノーロード化に躊躇するフィデリティ・インベストメンツなどは、CMA(Cash Management Account、証券総合口座)を設定しMMF運用資金を株式購入に充てられるようにしたり、当座預金として使えるよう小切手を振り出せるようにしたりした。業界の動向は1970年代に起こったMMFへの大量資金流入の要因となった。

そこで銀行側が政治に圧力をかけた。1978年6月MMC(市場金利連動型預金)の設定を解禁させた。1万ドル以上の定期預金についても預金金利規制が緩和された。小口預金の預金流出は止まらなかった。1980年預金金融機関規制緩和・通貨管理法(Depository Institutions Deregulation and Monetary Control Act)が6年以内の預金金利の上限規制の廃止を決定し、自由金利の利付き決済性預金としてNOW勘定(NOW account)を全米レベルで認可した。1982年預金金融機関法(Garn–St. Germain Depository Institutions Act)の成立を受けて、市場金利連動型普通預金(MMDA)が解禁された。[1]

額面割れ[編集]

マネー・マーケット・ファンドは基準価額(純資産価格)を安定して1ドルに保つことを目指す。基準価額が1ドルを下回った場合、そのファンドは「額面割れ」(break the buck)したといわれる。

1994年、「コミュニティー・バンカーズ(The Community Bankers US Government Fund)」が額面割れし、額面1ドル当たり96セントを投資家に返還した。これはマネー・マーケット・ファンドの23年間の歴史で初のことである。このファンドは資産の相当割合を変動金利債券(ユーロ債)に投資していたが、金利が上昇するにつれて、これらの債券の価値が低下したため額面割れが生じたのである。このファンドは機関投資家向けに設定されていたため、個人投資家は直接影響を受けなかった。2008年9月16日リーマン・ブラザーズ証券の破綻を受けてリザーブ・プライマリー・ファンドが額面割れし、価格は額面1ドル当たり97セントとなった。[2]

MMFには投資家からの大量の解約が殺到し、パワー・コーポレーション傘下のパトナム・インベストメンツのMMFも大量の解約を理由に閉鎖された。世界金融危機はMMFというシャドー・バンキング・システムに教訓を残した。

リザーブ・プライマリー・ファンドなどのプライムMMFは信用リスクをとって、コマーシャル・ペーパー(CP)や譲渡性預金(CD)を購入し組み入れていた。2014年8月プライムMMFは、時価会計が適用されたり、解約が制限されたりするなど、規制されることが公表された[3]。この規制は2016年10月から施行された。MMF運用会社がプライムMMFから政府債MMFに衣替えしたこともあって、同年の上半期に米国債の人気は加速した。レポ市場でCDとCPが取引されるほどの資金シフトが債券市場で起こり、外貨MMFの運用利回りは低下した。それで、低めの格付けにもかかわらず日本国債が市場から姿を消すようになった。

外貨MMF[編集]

日本において「外貨MMF」・「外貨建てMMF」として販売されている商品の「MMF」とは、この「マネー・マーケット・ファンド」を指す。外国投資信託の扱いとなっている。USドルユーロAUドルCAドルNZドルUKポンドといった、先進国を中心に複数の通貨建てのものがあるが、近年は南アフリカランドトルコリラといった、新興国の通貨建てのものも取り扱われている。

外貨預金と比べて利率や為替手数料、解約条件の面で概ね有利である。また、毎月一定額の積立が(ドル・コスト平均法)可能であるという利点がある。ただし外貨を直接引き出す事は出来ない。証券会社によっては、外貨MMFにおいた資金で直接(日本から見た)外国籍債券・外国籍投資信託を購入し、その売却資金や利金も外貨MMFに振り込める制度や、銀行の外貨預金などへ外貨のまま(無料ないしは有料で)送金できる制度を設けているところもある。このような円キャリー取引を売りにした外貨MMFは2006年から設定額を増やしていたが、ポジションが2007年2月末に解消されてゆき円高圧力となった。

なお、日本におけるマネー・マネージメント・ファンド(Money Management Fund)もMMFと略されるが、実際にはこれよりもマネー・リザーブ・ファンド(Money Reserve Fund、通称:MRF)の方がマネー・マーケット・ファンドに性質が近い。

脚注[編集]

  1. ^ 山村延郎、松田岳 「米独の金融自由化とセイフティ・ネットの展開」 金融庁 2014年 45頁
  2. ^ ロイター 「米MMFが額面割れ、運用会社は安全性強調」 2008/09/17
  3. ^ ロイター 金融界の「巨象」米MMFの規制強化、危機深刻化させるリスクも 2014/08/12