ポメラ

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ポメラ(pomera)は、キングジムが製造販売するデジタルメモである。製品名は「ケット・モ・イター」の頭文字から取られている。同社の登録商標[注釈 1][注釈 2][注釈 3]である。ポメラの愛好者は「ポメラー」とか愛玩犬のポメラニアンに因んで「ポメラニアン」とか呼ばれる(自称する)[2]

概要[編集]

ポメラは、キーボードによりテキストの入力を受付け、それを記憶する機能に特化した、メモや文章作成を手軽に行うためのメモ専用機である。 そのため、以下の仕様が採用されている。

  1. 左右17mmピッチ、パンタグラフ式の本格的キーボード、
  2. 日本語入力システムとしてATOKを搭載、
  3. 文庫本程度のサイズ(DM10・20・5の折りたたみ時)、軽量ボディの携帯性、
  4. 入手性の高い乾電池による長時間駆動。

他方、インターネットメールなどの通信機能はない。ただしDM100にはBluetooth通信でスマートフォンと連携する機能がある[3]。さらにDM200にはBluetooth通信に加えて、無線LANで通信する機能が搭載された[4]

ポメラの使用場面として想定されているのは、たとえばビジネスマンが会議中に議事録のために記録したり、移動中にメモを作成したりする場面である。逆に一度に大量の文字を含むファイルを作成・編集することは想定されていない。実際に各ファイルには、全角8,000文字(DM10、DM5)のような文字数制限が設けられている[5][6]。なお、後継機ではこの制限は緩和され、最大28,000文字(DM20)および40,000文字(DM100)となっている。またいずれの機種も、ファイルを分割すれば本体メモリに多量のテキストを保存できるほか、メモリーカードを利用すれば実質的な制約なく作成したテキストを保存することができる。各機種の保存容量については、後述の仕様表を参照のこと。

ポメラの機能はあくまで「メモ帳」であり、テキストエディタワープロソフトのような高度な使い方はできない。たとえば、行番号は表示されず、改行位置を任意に設定することができないなどの制約がある。このため、文書の作成の全体像は、書式や段組などを考慮せずにポメラを利用してキーボードから文字を入力して保存しておき、それをパソコンに転送して以降の文書の編集を行うことになる。なお、DM20には自動改行設定がある。また、DM200から行番号が表示できるようになった[7]

開発経緯[編集]

1990年代以降、日本語の文書作成のためにキーボード入力したテキストを活用することが極めて一般的になった。ところが、2000年代後半にはワープロ専用機も途絶え、市販されているキーボード入力の可搬型機器は、実質的にはノートパソコンに限定されていた。

ノートパソコンも精力的に技術開発されており、たとえば、Ultra-Mobile PCネットブックなどの登場により、小型軽量化が進んでいた。しかし、たとえば会議や打ち合わせなどでメモを取る道具としてみると、ノートパソコンは依然として不必要な機能を多く搭載しており、質量が大きい、バッテリー持続時間が短く電池残量を気にしたり電源の確保が必要といった手軽さに欠けるハードウエア仕様である。ソフトウエアを見ても、キーボード入力により日本語のテキストメモをとるという目的のためには、起動に時間が必要であり、ハードおよびソフトの両面から大掛かりなものとなっている。

ノートパソコン以外に目を向けても、たとえば携帯電話でも日本語テキストを入力する機能が一般的になっているが、長文の入力に向くものとはいえなかった。このように、キーボード入力によるテキスト文書活用の一般的素地ができあがっていたにもかかわらず、むしろ、メモの目的に見合う手軽な日本語入力機は皆無だった。

このような背景のもと企画・開発されたのがメモ専用機のポメラである。そのコンセプトは、キーボード搭載、軽量コンパクト、乾電池による長時間動作のメモ専用機という、上記の各不満を解消することである[8]

ちなみに開発者へのインタビューによれば、製品化までの社内の会議やプレゼンテーションでの反応はかならずしも芳しくはなかった。しかし、企画承認の際に参加した人のうちの一人による「お金を出してでも欲しい」という強い賛同が商品化の決定に大きく寄与したという[9]

機種[編集]

DM10[編集]

2008年11月10日発売の初代機。実際に発売されると販売元の予想を超える出荷台数を記録した。製造終了。表面にラバーコーティングを採用しているため経年劣化すると加水分解して表面がベタベタになる問題がある。この問題はDM20でも同様だが、DM100とDM25ではプラスチック仕上げに変更になった。

DM20[編集]

DM20

2009年12月11日に発売。記憶できる文章量の制限などを緩和した上位機種。 製造終了。

DM5[編集]

2010年3月9日に発売。画面解像度を落とし、メモリも初代機と同等の仕様に戻した廉価機。 製造終了。

DM20Y[編集]

2010年6月17日に発売の、数量限定のプレミアムモデル。なお、キーボードの刻印のうち「ひらがな」が「ひがな」になっている誤植があったため、8月9日に無償で部品交換を行うと発表された[10][11]。製造終了。

DM11G[編集]

2010年12月22日発売の、数量限定の機動戦士ガンダムコラボレーションモデル。シャア・アズナブル モデル(c)、ランバ・ラル モデル(r)、ジオン軍 モデル(z)の3モデルがあり、起動・終了時の画面表示がそれぞれ異なる。また、ガンダム用語が変換候補に登録済(例:「ずごっく」を「Z'GOK」や「MSM-07」に変換)、キャラクター別専用ケース同梱、といった特徴がある。後述の表ではモデルによる違いを()内各表記で記載。製造終了。

DM100[編集]

DM-100

2011年11月25日発売[12]。ストレートタイプのキーボード、電子辞書機能、バックライト付液晶、Bluetooth、テキスト縦書き表示、親指シフト入力方式対応機能などを新たに搭載した。

ビジネス書作家の戸田覚は「昔のモバイルギアそっくりなイメージ」と解説している[13]

DM25[編集]

2013年3月8日に発売。折りたたみキーボードタイプの後継製品。軽さ、薄さ、テキスト編集機能を改善したもの。製造終了。

DM200[編集]

2016年10月21日に発売。バックライト付きの7型ワイド画面(1024×600ドット)、キーピッチ17mmのキーボードを搭載。無線LAN機能を搭載し、クラウドストレージやプリンター、メールサーバーに直接ファイルをアップロードできる。電源はリチウムイオンポリマー電池を採用し、使用時間は約18時間となっている[14]CSVファイル編集機能は無くなった。

組み込みOSにはLinuxベースの独自OSを採用している[15]。開発当初はAndroidを採用しようとしたが、Androidベースにした試作品では約9時間しかバッテリーが持たず、ポメラのこだわりである長時間のバッテリー駆動時間が実現できないため、Linuxベースに変更になった[15]。また、従来は乾電池を採用していたが、DM200では単三形乾電池にすると合計6本も必要になり重量も増してしまうため、リチウムイオンバッテリーを採用した[15]

ウルトラモバイルノートパソコン「VAIO type P」と類似しているという指摘がある[16]。いっぽう、2in1パソコンASUS TransBook T90chiに類似しているとする指摘もある[17]

特徴[編集]

『いつでもどこでもすぐ「メモる」』をコンセプトとして、以下のような特徴がある。

  • 電源ボタンを押してからおよそ2秒後には起動完了
  • 市販の単四電池2本で、およそ20時間駆動(DM100では単三2本で、30時間。DM200ではリチウムイオンバッテリーで、18時間。)
  • 日本語変換にATOKを搭載
  • 17mmキーピッチのキーボード(DM10、DM20、DM5は折りたたみ。DM100、DM200はストレート。)
  • モノクロ液晶(DM10、DM20はTFT反射型。DM5はSTN反射型。DM100、DM200はTFT透過型。)
  • USB・microSDによるパソコン連動(DM100ではSD/SDHC、Bluetooth接続。DM200ではSD/SDHC、無線LANおよびBluetooth接続。)

評価[編集]

ゲームデザイナーで作家の芝村裕吏はポメラを小説・脚本などの執筆に愛用する理由としてゲームやインターネットブラウザ機能がなくテキスト入力に特化しているため、執筆する際に誘惑がないことを挙げ、「自主的な監禁道具」「(いい意味で)仕事しかできない最高のツール」と評している[18]。GetNaviのライター・ナックル末吉も「ノートパソコンやタブレットなどでは、テキストを入力しながらついついネットやSNSを確認してしまいがちですが、専用機のポメラならそのような誘惑も皆無」と評している[19]

ジャーナリスト津田大介はDM200を「メモ機のレベルを超えたような気がする」「スマホやタブレットのキーボードにもなるのも地味に便利だ。スマホやタブレットとポメラという組み合わせで持ち歩けばノートパソコンはいらなくなるかもしれない」と評している[20]

一方で、モデルチェンジのたびに高機能化するとともに重量と値段が上がっていることもあり、DM200には否定的なレビューもある。ITmediaのライター・山口真弘は「実売4万円台前半~5万円台前半という価格は、新規設計のハードウェアとしてはそこそこ頑張っているほうで、恐らく原価もかなり高いと推測されるが、安価なタブレットがこれだけ普及している現在、単機能のテキスト入力ツールとしては、割高な感は否めない」と評している[21]

仕様[編集]

項目 内容
品番 DM5 DM10 DM11G DM20 DM25 DM100 DM200
キーボード 折りたたみ式JIS配列キーボード、キーピッチ約17mm 折りたたみスライド式JIS配列キーボード、キーピッチ約17mm ストレートタイプJIS配列キーボード、キーピッチ17mm、親指シフト対応
1ファイルの文字制限 約8,000文字 約28,000文字 約30,000文字 約40,000文字 約50,000文字[7]
本体メモリ 48,000文字、ファイル数制限6 28,000,000文字、ファイル数制限1,000 105MB、ファイル数制限1,000 128MB、ファイル数制限1,572 128MB、ファイル数制限不明
ファイル形式 テキスト(.txt) テキスト(.txt)、表(.csv) テキスト(.txt)[注釈 4]
LCDパネル 4インチSTNモノクロLCD、QVGA 4インチTFTモノクロLCD、VGA 5インチTFTモノクロLCD、VGA 5.7インチTFTモノクロLCD、SVGA、バックライト搭載 7.0インチTFTモノクロLCD、WSVGA、バックライト搭載
インターフェイス USB接続(A-ミニBタイプ) USB接続(A-ミニBタイプ)、Bluetooth 無線方式 USB接続(A-microBタイプ)、Bluetooth 無線方式、無線LAN IEEE802.11b/g/n(2.4GHz帯)
メモリーカードスロット microSD(最大容量2GB)、microSDHC(最大容量16GB) microSD(最大容量2GB)※SDHC非対応 microSD(最大容量2GB)、microSDHC(最大容量16GB) SD(最大容量2GB)、SDHC(最大容量32GB)
電源 単4アルカリ×2、または単4エネループ×2 単3アルカリ×2、または単3エネループ×2 リチウムイオンバッテリー
電池寿命 約25時間(エネループ20時間) 約20時間(エネループ15時間) 約30時間(エネループ25時間) 約18時間
バックアップ電池 コイン型リチウム電池(CR2032×1個)電池寿命約60時間[注釈 5] コイン型リチウム電池(CR2016×1個) なし
折りたたみ時寸法(mm) W145×D104×H31 W145×D100×H30 W147×D104×H30(c)、H32(r)、H28(z) W145×D100×H33 W145×D100×H29 W263×D118.5×H24.6 W263×D120×H18
使用時寸法(mm) W250×D104 W250×D100 W252×D104 W250×D110 W263×D W263×D120
質量(乾電池別) 285g 340g 340g(c,z)、350g(r) 370g 360g 399g 580g
PCリンク時対応OS 日本語Windows 7/Vista/XP(32bitのみ対応) 日本語Windows 8 / 7 / Vista / XP (32bit / 64bit 対応) 日本語Windows7/Vista/XP(32bit/64bit対応)、Mac OS X Ver.10.8/10.7/10.6/10.5 日本語Windows7以降(32/64bit対応)、Mac OS X Ver.10.9以降

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 登録商標 第5201164号 商標ポメラ[1]
  2. ^ 登録商標 第5201165号 商標Pomera[1]
  3. ^ 登録商標 第5248743号 商標pomera[1]
  4. ^ 文字コードはUTF-8またはShift_JIS、改行コードはCR+LF / CR / LFに対応している[7]
  5. ^ 単4形アルカリ乾電池及び単4形エネループが入っていれば消耗しない。

出典[編集]

  1. ^ a b c 特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索|J-PlatPat”. 工業所有権情報・研修館. 2016年11月2日閲覧。
  2. ^ 小澤啓司 (2016年4月12日). “芥川賞作家・羽田圭介の「デジタルメモ術」拝見”. 2016年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月3日閲覧。
  3. ^ 竹内亮介 (2012年1月28日). “ブルートゥースでスマホとも連携、新型「ポメラ」の使い勝手”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2702Y_X20C12A1000000/ 2015年7月30日閲覧。 
  4. ^ 三浦善弘 (2016年10月5日). “無線LANと専用ATOKを搭載した新型ポメラ「DM200」を速攻レビュー”. 価格.comマガジン. 2016年10月22日閲覧。
  5. ^ デジタルメモ「ポメラ」開発者インタビュー 第二部 仕様編”. Engadget Japanese (2008年11月12日). 2016年10月22日閲覧。
  6. ^ よくあるご質問(Q&A)”. キングジム. 2016年10月22日閲覧。
  7. ^ a b c 「ポメラ」機能比較表|デジタルメモ「ポメラ」|キングジム”. キングジム. 2016年10月22日閲覧。
  8. ^ デジタルメモ「ポメラ」開発者インタビュー”. Engadget Japanese (2008年11月10日). 2016年10月22日閲覧。
  9. ^ 坂本純子 (2008年12月5日). “ポメラ(pomera)はテプラに続くヒット商品となるか--キングジム開発者に聞く - (page 2)”. CNET Japan. 2016年10月22日閲覧。
  10. ^ “「ひながな」と誤植 人気電子メモ、キーボード無償交換へ”. MSN産経ニュース (産経新聞). (2010年8月9日). オリジナル2010年8月11日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100811055257/http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100809/biz1008091726013-n1.htm 2016年10月22日閲覧。 
  11. ^ 若杉紀彦 (2010年8月9日). “キングジム、6月発売の限定版ポメラのキーボードに刻印ミスで交換 ~「ひらがな」を「ひながな」と刻印”. PC Watch (インプレス). http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100809_386642.html 2016年10月22日閲覧。 
  12. ^ 薄さ・軽さ・打ちやすさを追求した「ポメラ」の最上位機種 DM100 発売”. キングジム. 2016年10月22日閲覧。
  13. ^ 戸田覚 (2011年11月29日). “「機能不足」は変わらず、それでも“即買い”の新型ポメラ(1/4ページ)”. 日経ビジネスオンライン. 2016年10月27日閲覧。
  14. ^ “キングジム、Wi-Fi対応で専用ATOKも新搭載した「ポメラ DM200」”. 価格.comニュース (価格.com). (2016年10月4日). http://news.kakaku.com/prdnews/cd=kaden/ctcd=6576/id=59764/ 2016年10月22日閲覧。 
  15. ^ a b c PC Watch編集部 (2017年1月24日). “【特別企画】キングジム「ポメラ DM200」の進化の秘密に迫る~ATOKありきで開発”. PC Watch (インプレス). http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/1038570.html 2017年1月25日閲覧。 
  16. ^ 劉尭 (2016年10月7日). “【Hothotレビュー】ヘビーモバイラーがキングジムの新型ポメラ「DM200」を一刀両断! - PC Watch”. インプレス. 2016年10月17日閲覧。
  17. ^ Hirotaka Totsu (2016年10月25日). “「見せてもらおうか、新型ポメラ『DM200』の実力とやらを」テキスト入力専門デバイスの使い心地に迫る”. Engadget Japanese. 2016年10月28日閲覧。
  18. ^ ハイサイ比嘉 (2017年1月30日). “「ポメラ」で5000万円稼いだ!作家・芝村裕吏氏が明かす「ポメラ」 DM200の魅力 (2/3)”. ASCII.jp. 2017年2月22日閲覧。
  19. ^ ナックル末吉 (2016年10月5日). “ついにポメラにWi-Fiが……今風ガジェットとしての道を歩み出した「ポメラDM200」”. GetNavi web. 2017年2月22日閲覧。
  20. ^ 津田大介 (2016年11月16日). “津田大介 メモ機ポメラに「ノートPC、もう不要?」”. 津田大介のMONOサーチ. 2017年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月25日閲覧。
  21. ^ 山口真弘 (2016年11月9日). “ポメラ「DM200」徹底レビュー通信機能の強化はアリなのか?(3/3)”. ITmedia PC USER. 2017年2月22日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]