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ペンは剣よりも強し

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「ペンは剣よりも強し」の言葉を残したエドワード・ブルワー=リットン。しかしいまの用法はリットンの意図したところではない[1]

ペンは剣よりも強し: The pen is mightier than the sword : Calamus Gladio Fortior)は、「独立した報道機関などの思考・言論・著述・情報の伝達は、直接的な暴力よりも人々に影響力がある」ということを換喩した格言である。

起源

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『リシュリューあるいは謀略』の初版本の表紙。
リシュリュー

先行して似たような考えは様々な形態で表現されてきたが、文章としては英国の作家エドワード・ブルワー=リットン1839年に発表した歴史劇『リシュリューあるいは謀略(Richelieu; Or the Conspiracy)』[2][3]で作り出された[補足 1]。題材を17世紀フランス王国宰相リシュリューにとってはいるものの、史実をある程度脚色したことをブルワー=リットンは前書きで断っている。

「日付やディテールについては(……)勝手気ままというわけではないが、多少自由にいじらせてもらった」[2]

表題のリシュリューのセリフは第2幕第2場に登場する。前後を含めて引用すると以下の通りである。[5]

(リシュリューは部下の司令官らによる自分の暗殺計画を発見するが枢機卿という聖職者の身分ゆえに武器をとることができない。)

フランソワ(リシュリューの配下の一人)
「しかしいま、猊下の部下たちは武器をもっております。枢機卿猊下」

リシュリュー
「これは本当のことなのだ!—
まことの技倆の持ち主の手におさまるならば、ペンは剣よりも強し。
見よ、この魔法使いの杖を!—
それ自体は何の役に立たん、無だ!—
魔法使いの魔法は、それを自在に操る手から繰り出されるのだ。
帝王(カエサル)の力を奪い、これを追い払い、騒がしい大地を息の根を止める魔法は、だ!だから剣を捨てよ。—
そんなものがなくとも国家は救われる!」

評価

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1870年に、文学批評家エドワード・シャーマン・グールドは次のように書いている。「ブルワーは一握りの者にしか与えられない幸運に恵まれた。彼はいつまでも歴史に残る名セリフを書いたのだ」。[3]

1888年頃、著作者チャールズ・シャープは、この一節が繰り返し使われたことで、それが「ありふれた、陳腐なものになってしまう」ことを危惧した[6]

1897年に開館したアメリカ合衆国議会図書館トマス・ジェファーソンビルの壁面にはこの一節が飾られている[7][補足 2]

類似する言い回し

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「言論は暴力に勝る」という考えは古今東西に多数の先行例を有し[8]、類似する言い回しには以下のようなものがある。

脚注

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補足

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  1. ^ この戯曲は1839年3月7日ロンドンロイヤル・オペラ・ハウスウィリアム・チャールズ・マクレディ主演で初演され[4]、マクレディは初演の成功は明白だと信じていた。ヴィクトリア女王が3月14日の上演を観覧している[4]
  2. ^ その場所は、エントランスパビリオン2階南側廊下の西側の壁。
  3. ^ こちらも参照: ヨハネの黙示録 1:16, 2:16, 19:15; エフェソの信徒への手紙 6:17; 旧約聖書: 知恵の書 18:15; イザヤ書 11:4; 49:2
  4. ^ 意訳: ショーペンハウエルにおける厭世観の言うようにこの世は辛く苦しい。だから我々は互いに憐れみ助け合わなければならない。悪魔の如く虐殺を喜ぶなかれ。言葉によらず殺害で勝利とするのも愚かしいことである。(関東大震災における日本民族による朝鮮民族・中国民族虐殺と、憲兵による大杉栄ら殺害への言及[19]

出典

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  1. ^ Who first said 'The pen is mightier than the sword'?2015年1月9日BBC、2016年6月12日閲覧
  2. ^ a b Bulwer-Lytton 1839
  3. ^ a b Gould 1870, p. 63
  4. ^ a b Macready 1875, p. 471
  5. ^ Bulwer-Lytton 1892, p. 136
  6. ^ Sharp 1888, p. 67
  7. ^ Reynolds 1897, p. 15
  8. ^ a b c d About the history and origins behind the famous saying the pen is mightier than the sword.”. Trivia-Library.com. 9 June 2016閲覧。
  9. ^ Matthews, Victor and Benjamin 2006, p. 304
  10. ^ Graves 1935, p. 122
  11. ^ New American Bible, Hebrews 4:12”. Washington, DC: Confraternity of Christian Doctrine, Inc. (2002年). 13 November 2006閲覧。
  12. ^ ヘブル人への手紙(口語訳)#4:12
  13. ^ Unparalleled Scientific Legacy of Islam”. Story of Pakistan (2003年7月26日). 2014年1月20日閲覧。
  14. ^ http://www.islamset.com/heritage/philos/Conclusion.html
  15. ^ Re: Pen vs. sword 参照元: Titelman, Gregory Y. (1996). Random House Dictionary of Popular Proverbs and Sayings. New York: Random House 
  16. ^ the pen is mightier.....”. Quoteland.com (March 2003). 15 November 2006閲覧。
  17. ^ Burton, Robert (as Democritus Junior). Karl Hagen: “The Anatomy of Melancholy: What it is, with all the kinds, causes, symptoms, prognostics, and several cures of it”. Project Gutenberg. 9 June 2016閲覧。
  18. ^ Shakespeare, William. “The Tragedy of Hamlet, Prince of Denmark”. opensourceshakespeare.org. 15 November 2006閲覧。
  19. ^ 川端俊英 2015, p. 58

参考文献

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  • Sir Edward Bulwer Lytton (1839). Richelieu; Or the Conspiracy: A Play in Five Acts. (second ed.). London 
  • Lord Lytton (1892). The Dramatic Works of Auston. IX. New York: Peter Fenelon Collier 
  • Gould, Edward Sherman (1870). Good English. New York: W.J. Widdleton 
  • Macready, William Charles (1875). Sir Frederick Pollock. ed. Macready's Reminiscences, and Selections from His Diaries and Letters. New York: MacMillan and Co. 
  • Sharp, Charles (1888). The Sovereignty of Art. London: T. Fisher Unwin 
  • Reynolds, Charles B (1897). Library of Congress and the Interior Decorations: A Practical Guide for Visitors. New York, Washington, St. Augustine: Foster & Reynolds 
  • Matthews, Victor and Benjamin, Don (2006). Old Testament Parallels (3rd ed.). Paulist Press 
  • Graves, Robert (1935). Claudius, the God and His Wife Messalina.. H. Smith and R. Haas 
  • 川端俊英『人権からみた文学の世界【大正篇】ゴマブックス、2015年1月8日。ASIN B00RXHZ4M2https://books.google.co.jp/books?id=yEgYBgAAQBAJ&redir_esc=y&hl=ja 

外部リンク

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