プラゾシン

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プラゾシン
Prazosin Structure V.1.svg
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com monograph
MedlinePlus a682245
法的規制
投与方法 Oral
薬物動態データ
生物学的利用能 ~60%
血漿タンパク結合 97%
半減期 2–3 hours
識別
CAS番号
19216-56-9 チェック
ATCコード C02CA01 (WHO)
PubChem CID: 4893
IUPHAR/BPS 503
DrugBank DB00457 チェック
ChemSpider 4724 チェック
UNII XM03YJ541D チェック
KEGG D08411  チェック
ChEBI CHEBI:8364 チェック
ChEMBL CHEMBL2 チェック
化学的データ
化学式 C19H21N5O4
分子量 383.401 g/mol

プラゾシン(Prazosin)は、高血圧前立腺肥大症の治療に用いられる交感神経遮断薬の一つである。商品名ミニプレス。外国では、不安PTSDパニック障害の軽減にも用いられる。交感神経α受容体遮断薬に分類され、α1受容体に特異的に作用する。α1受容体は血管平滑筋英語版に存在し、ノルアドレナリンの作用の一つである血管収縮英語版作用を司っている。α1受容体は中枢神経系にも存在する[1]

α受容体遮断活性に加え、プラゾシンはMT3受容体英語版(ヒトには存在しない)の選択的英語版遮断活性を持つ。MT1受容体英語版およびMT2受容体英語版への選択性は低い[2]

効能・効果[編集]

本態性高血圧症、腎性高血圧症、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療に使用される[3]

プラゾシンは経口薬であり、α1受容体への選択性が高いため 心臓への作用は最小限となっている。しかし、プラゾシンを服用し始めた後、身体は(服用前の)高過ぎる血圧を維持しようとして恒常性調節が働き、心拍数と心収縮力が上昇する。プラゾシンの血圧低下効果は長期間服用後に現れて来る。心拍数と心収縮力は次第に元に戻り、血圧が低下する。この作用のため、プラゾシンは降圧薬の第二選択薬とされている[4]。日本のガイドラインでは、ACE阻害薬/ARB、Ca拮抗薬、利尿薬の3剤併用でも目標血圧に達しない場合に使用が考慮される[5]:49

プラゾシンはまた前立腺肥大症に伴う排尿困難の治療に有用である。前立腺尿道でその収縮を司っているのがα1受容体だからである。高血圧と前立腺肥大のいずれの場合もプラゾシンは第一選択薬ではないが、両疾患を併発している場合には選択肢となる[4]

プラゾシンは小児の重症な悪夢の治療やPTSDの治療にも応用される[6]。シアトルのVA Puget Sound Health Care System(VAPSHCS)で退役軍人の睡眠障害に成功している。この目的での投与量は降圧薬として用いる場合よりも少量である[6]

プラゾシンはインド亜大陸に生息するインド赤サソリ(学名:Hottentotta tamulus英語版 )による重症刺創にも推奨されている[7][8][9]

副作用[編集]

重大な副作用には、失神、意識喪失、狭心症がある[3]

他の副作用としては、起立性低血圧鼻閉が知られている。起立性低血圧や失神は、α1受容体無しで身体が血圧を調整することが難しいことを物語っている。プラゾシン服用患者は、圧反射機能が低下しているために素早く立ち上がると血圧が適切に管理できないことを説明されるべきである。鼻閉は鼻粘膜の血管拡張によるものである。

プラゾシンに関連する現象の一つに、“初回用量反応関係英語版”と呼ばれるものがある。これは特に起立性低血圧や失神が初回投与時に多いことに関係する。 非常に稀なプラゾシンの副作用として、持続勃起症が知られている[10]

もう一つ、プラゾシンの副作用として、白日夢や、その逆の睡眠時覚醒幻覚[注 1]という副作用がある[要出典]夢幻精神病英語版参照)。

研究開発[編集]

プラゾシンは2009年に完了した予備的臨床試験(患者24名)でアルコール依存症(AD)の治療に有望であるとの可能性が示された[11]。それを受けて大規模第II相臨床試験が企画され実施されていた[12]が、2016年現在、結果は公表されていない。また2015年に公表されたAD・PTSD併存患者30名を対象とした予備的臨床試験では、統計学的に有意な治療成績を示せなかった[13]

注釈[編集]

  1. ^ 睡眠中に覚醒しているという幻覚を見る

出典[編集]

  1. ^ Day, H. E.; Campeau, S.; Watson Jr, S. J.; Akil, H. (1997年). “Distribution of alpha 1a-, alpha 1b- and alpha 1d-adrenergic receptor mRNA in the rat brain and spinal cord”. Journal of chemical neuroanatomy 13 (2): 115–139. doi:10.1016/S0891-0618(97)00042-2. PMID 9285356. 
  2. ^ Yu CX, Zhu CB, Xu SF, Cao XD, Wu GC (2000年3月). “Selective MT(2) melatonin receptor antagonist blocks melatonin-induced antinociception in rats”. Neuroscience Letters 282 (3): 161–4. doi:10.1016/S0304-3940(00)00883-1. PMID 10717416. http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0304394000008831. 
  3. ^ a b ミニプレス錠0.5mg/ミニプレス錠1mg 添付文書” (2009年8月). 2016年4月10日閲覧。
  4. ^ a b Shen, Howard (2008). Illustrated Pharmacology Memory Cards: PharMnemonics. Minireview. p. 13. ISBN 1-59541-101-1. 
  5. ^ 高血圧治療ガイドライン2014”. 日本高血圧学会 (2014年4月). 2016年4月10日閲覧。
  6. ^ a b “Drug Helps PTSD Nightmares” (プレスリリース), VA Research Currents, (2007年4月), http://www.research.va.gov/resources/pubs/docs/va_research_currents_apr_07.pdf 2014年1月6日閲覧。 
  7. ^ Bawaskar, H.S. & P.H. Bawaskar (2008年). “Scorpion sting: A study of clinical manifestations and treatment regimes” (PDF). Current Science英語版 95 (9): 1337–1341. http://www.currentscience.ac.in/Downloads/article_id_095_09_1337_1341_0.pdf 2010年4月14日閲覧。. 
  8. ^ Bawaskar, H.S. & P.H. Bawaskar (2007年). “Utility of scorpion anti-venin vs. prazosin in the management of severe Mesobuthus tamulus (Indian red scorpion) envenoming at rural settings” (PDF). JAPI 55: 14–21. http://www.japi.org/january2007/O-14.pdf 2010年4月14日閲覧。. 
  9. ^ Pandi, K.; Krishnamurthy, S.; Srinivasaraghavan, R.; Mahadevan, S. (2014年2月18日). “Efficacy of scorpion antivenom plus prazosin versus prazosin alone for Mesobuthus tamulus scorpion sting envenomation in children: a randomised controlled trial”. Archives of Disease in Childhood 99 (6): 575–580. doi:10.1136/archdischild-2013-305483. 
  10. ^ Bhalla AK, Hoffbrand BI, Phatak PS, Reuben SR (1979年10月). “Prazosin and priapism”. Br Med J 2 (6197): 1039. doi:10.1136/bmj.2.6197.1039. PMC 1596841. PMID 519276. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1596841/. 
  11. ^ Simpson, TL; Saxon, AJ; Meredith, CW; Malte, CA; McBride, B; Ferguson, LC; Gross, CA; Hart, KL et al. (2009年). “A pilot trial of the alpha-1 adrenergic antagonist, prazosin, for alcohol dependence”. Alcoholism: Clinical and Experimental Research 33 (2): 255–63. doi:10.1111/j.1530-0277.2008.00807.x. PMID 18945226. 
  12. ^ Study of the Medication Prazosin for Alcohol Dependence
  13. ^ Simpson TL, Malte CA, Dietel B, Tell D, Pocock I, Lyons R et al. (2015年). “A pilot trial of prazosin, an alpha-1 adrenergic antagonist, for comorbid alcohol dependence and posttraumatic stress disorder.”. Alcohol Clin Exp Res 39 (5): 808-17. doi:10.1111/acer.12703. PMC PMC4400241. PMID 25827659. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25827659.