ハイブリストフィリア

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ハイブリストフィリア: hybristophilia犯罪性愛)とは、一種の性的倒錯(パラフィリア)で、犯罪者に惹かれてしまうフェティシズムを言う。性的覚醒 ・促進・オルガスムの達成が、強姦、殺人、嘘、不倫、武装強盗などを犯した犯罪者と一緒にいることで起きる性的倒錯である。大衆文化では、この現象は「ボニーとクライド症候群」としても知られている[1]

多くの知名度の高い犯罪者、特に凶悪犯罪を犯した犯罪者は、おそらくこの現象の結果として、時には刑務所でファンレターを受け取ることがあり、それには恋の告白や性的なことが書かれていることもある。いくつかのケースでは、これらの犯罪者の崇拝者は、愛情の対象とする刑務所内の犯罪者と結婚することもある[2][3]

こうした手紙を書く女性、あるいは犯罪で投獄されている男性を追いかける女性は、刑務所グルーピー(犯罪者追っかけ)と呼ばれる[4][5]

最も広い意味では、ハイブリストフィリアは、反社会的なダークトライアドのパーソナリティ特性を示す異性に対する嗜好を含むと言える[6]

語彙[編集]

この用語は、ギリシア語で「誰かに対して怒りを抱く」という意味のhubrizeinと、『(誰か)への強い親和性/好みを有する』という意味のphilo から出来た言葉である[7]

原因[編集]

ハイブリストフィリア(犯罪性愛)の原因に関してはいくつかの推測がなされてきた。たとえば、DeSales大学の法医学心理学の教授であるKatherine Ramslandは、特に男性の連続殺人犯と結婚またはデートした女性の中には、次のような理由を示した者がいると述べている。

  • 「自分ならシリアルキラーのような残忍で強力な男を変えることができると信じこんでいる」
  • 「殺人犯がかつてそうだった小さな男の子の姿を『見て』、彼を育てようとする」
  • 「メディアのスポットライトを浴びたり、本や映画の契約を結びたいという人もいる」
  • 「それから、『完璧な彼氏』という概念がある。彼女はいつでも彼がどこにいるのか知っていて、また彼が自分のことを考えていると知っている。彼女は彼が自分を愛していると主張することができ、ほとんどの場合、日常生活で起きる様々な問題に耐える必要はない。やるべき洗濯、彼のための調理、そして彼への説明責任はない。彼女はファンタジーを長期間堪能し続けることができる」
  • 「精神保健専門家の中には、殺人者への心酔を、極端な形の狂信と比較した人もいる。彼らはそのような女性を、通常の方法で愛を見つけることができない不安定な人間として、あるいは完成することのないロマンチックな関係を求める「愛を回避する」女性のように見る」[2]

実際の例[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Bonnie and Clyde Syndrome Is a Real Thing - Nerve”. Internet Archive. 2017年11月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月13日閲覧。
  2. ^ a b Ramsland (2012年4月20日). “Women Who Love Serial Killers”. Psychology Today. 2013年5月13日閲覧。
  3. ^ Seltzer (2012年4月24日). “Why Do Women Fall for Serial Killers?”. Psychology Today. 2013年5月13日閲覧。
  4. ^ https://www.nytimes.com/2018/04/02/arts/television/the-last-og-review-tracy-morgan-tbs.html
  5. ^ Mailhot, Terese. "Paul Simon Money." Transmotion 2.1&2 (2016): 131.
  6. ^ Watts, Ashley L., et al. "Do Psychopathic Birds of a Feather Flock Together? Psychopathic Personality Traits and Romantic Preferences." Journal of personality (2018).
  7. ^ Eric W. Hickey, ed (2006). Sex crimes and paraphilia. Upper Saddle River, N.J.: Pearson Education. pp. 197–9. ISBN 9780131703506 
  8. ^ Cawthorne, Nigel (2007). Serial Killers and Mass Murderers: Profiles of the World's Most Barbaric Criminals. Ulysses Press 
  9. ^ Michaud. “The Only Living Witness: The True Story Of Ted Bundy”. Crime Library. 2017年11月13日閲覧。
  10. ^ Barnard, Ian; Nanny M. W. de Vries, Jan Best. “The Racialization of Sexuality: The Queer Case of Jeffrey Dahmer”. Thamyris Overcoming Boundaries: Ethnicity, Gender and Sexuality.. Rodopi. p. 88. ISSN 1381-1312. https://books.google.com/books?id=ZRvJwRYGuUYC&pg=PA88 
  11. ^ Raymond Joseph Corsini. 1999. The Dictionary of Psychology. Psychology Press. ISBN 1-58391-028-X. p692.
  12. ^ Breivik 'gets love letters from 16-year-old girls'”. The Local (2012年6月18日). 2017年11月13日閲覧。
  13. ^ Allen (2013年5月22日). “Dzhokhar Tsarnaev and his fangirls”. Latimes.com. 2017年11月13日閲覧。
  14. ^ ノルウェー大量殺人犯の「女性ファン」、150通の手紙で激励 AFPBB、2015年9月5日
  15. ^ “○○○○好き”を公言する女性たちの心理。「犯した罪は肯定していない」けど日刊SPA!、2022年09月15日

参考文献[編集]