トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界

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トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界(トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフげんかい、英語: Tolman-Oppenheimer-Volkoff limit)とは、中性子縮退した星(中性子星)の質量の上限である。これは白色矮星におけるチャンドラセカール限界と同様である。現在、推定される範囲はおよそ1.5から3.0太陽質量である[1]

歴史[編集]

中性子星の質量限界はトルマンの研究結果を用いて、ロバート・オッペンハイマーとヴォルコフにより1939年に初めて計算された。オッペンハイマーとヴォルコフは中性子星の中性子が冷たく、縮退したフェルミガスから成ると仮定した。この仮定から得られた質量限界はおよそ0.7太陽質量であった[2][3]。これは白色矮星におけるチャンドラセカール限界よりも小さい。中性子の強い相互作用による反発力を考慮に入れることでより大きい値が得られ、現在ではおよそ1.5から3.0太陽質量とされている[1]。この不確かさは超密度の物質に対する状態方程式がよく知られていない事実を反映している。

恒星進化[編集]

トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界は、恒星進化の最終段階に関する研究において重要な役割を果たす。この限界よりも軽い中性子星では、星の重さは強い力が媒介する短距離間での中性子-中性子相互作用の斥力と中性子縮退圧で支えられている。もし、中性子星がこの限界よりも重いときにはより密度の高い状態へ崩壊するだろう。それはブラックホールを形成するか構成物が変化して他の方法(例として、クォーク星であればクォーク縮退圧)によって支えられる。クォーク縮退などのより変わった形の仮説的な縮退物質の特徴は、中性子縮退と比べてさらにわずかなことしか知られておらず、この限界への反証が見られないことから、多くの宇宙物理学者は、この限界を超えた中性子星が直接ブラックホールになると推測している。

個々の星が崩壊してブラックホールが作られるためには、質量がトルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界を超えていなければならない。

観測的に、X線連星を構成するいくつかの重い天体は、大きな質量を持つこと、比較的暗いことおよびX線スペクトルから恒星ブラックホールだと考えられている。それらのブラックホールの候補天体は太陽質量のおよそ3から20倍の質量を持つと推定されている[4][5]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b Bombaci, I. (1996). “The maximum mass of a neutron star”. Astronomy and Astrophysics 305: 871-877. Bibcode 1996A&A...305..871B. 
  2. ^ Tolman, Richard C. (1939). “Static Solutions of Einstein's Field Equations for Spheres of Fluid”. Physical Review 55 (4): 364-373. doi:10.1103/PhysRev.55.364. ISSN 0031-899X. 
  3. ^ Oppenheimer, J. R.; Volkoff, G. M. (1939). “On Massive Neutron Cores”. Physical Review 55 (4): 374-381. doi:10.1103/PhysRev.55.374. ISSN 0031-899X. 
  4. ^ E. McClintock, Jeffrey; A. Remillard, Ronald. Black Hole Binaries. arXiv:astro-ph/0306213v4. Bibcode 2006csxs.book..157M. 
  5. ^ Casares, Jorge (2007). “Observational evidence for stellar-mass black holes”. Proceedings of the International Astronomical Union 2 (S238): 3. arXiv:arXiv:astro-ph/0612312v1. Bibcode 2007IAUS..238....3C. doi:10.1017/S1743921307004590. ISSN 1743-9213.