デイヴィッド・ベネター

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デイヴィッド・ベネター
David Benatar
生誕 (1966-12-08) 1966年12月8日(57歳)
地域 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国
出身校 ケープタウン大学
BSocScPh.D.
学派 倫理学生命倫理学社会哲学宗教哲学完全菜食主義(ヴィーガニズム)
研究機関 ケープタウン大学
研究分野 反出生主義
主な概念 出生害悪論
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デイヴィッド・ベネター(David Benatar、1966年12月8日 - )は、南アフリカ共和国哲学者ケープタウン大学哲学教授[1]

主張[編集]

ベネターは、しばしば現代哲学におけるペシミズムの潮流に関連付けられる[要出典]。2006年に出版した『生まれてこないほうが良かった: 存在してしまうことの害悪』(Better Never to Have Been: The Harm of Coming into Existence)で反出生主義を擁護したことで特に知られる。同書においてベネターは、誕生しこの世に存在するようになることは、出生する者にとっては深刻な害悪であり、したがってこれ以上の出生は常に道徳的に誤っている、と主張した[2]。同書の影響として、『TRUE DETECTIVE』の監督であるニック・ピゾラットは、自身のテレビシリーズに影響をもたらしたと語っている[要出典]

2012年には『第二のセクシズム: 成人男子と男児に対する差別(The Second Sexism: Discrimination Against Men and Boys)』を出版し論争を巻き起こした[3][4][5]

その他では、生命倫理学での報告[6][7]や、完全菜食主義(ヴィーガニズム)の議論にも参加している[8]

著作[編集]

単著[編集]

  • Benatar, David (2017). The Human Predicament: A Candid Guide to Life's Biggest Questions. Oxford University Press. ISBN 978-0190633813 
  • Benatar, David (2012). The Second Sexism: Discrimination Against Men and Boys. Wiley-Blackwell. ISBN 0-470-67451-2 
  • Benatar, David (2006). Better Never to Have Been: The Harm of Coming Into Existence. Oxford University Press. ISBN 0-19-929642-1 
    小島和男、田村宜義訳『生まれてこない方が良かった――存在してしまうことの害悪』すずさわ書店、2017年

編著書[編集]

  • Debating Procreation : Is It Wrong to Reproduce? (with David Wasserman, Debating Ethics series) 2015.
  • Cutting to the Core: Exploring the Ethics of Contested Surgeries. 2006.
  • Life, Death & Meaning : Key Philosophical Readings on the Big Questions. 2004.
  • Ethics for Everyday. New York: McGraw-Hill, 2002.

参考文献[編集]

和書[編集]

洋書[編集]

  • Benatar, Michael; Benatar, David (2001). “A Pain in the Fetus: Toward Ending Confusion about Fetal Pain”. Bioethics (International Association of Bioethics (IAB)) 15 (1): 57-76. doi:10.1111/1467-8519.00212. 
  • Benatar, Michael; Benatar, David (2003). “Between prophylaxis and child abuse: the ethics of neonatal male circumcision”. American journal of Bioethics (American Society for Bioethics and Humanities (ASBH)) 3 (2): 35-48. doi:10.1162/152651603766436216. 

脚注[編集]

  1. ^ University of Cape Town Philosophy Department Staff
  2. ^ Steyn, Mark (2007年12月14日). “Children? Not if you love the planet”. Orange County Register. オリジナルの2008年4月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080416165507/http://www.ocregister.com/opinion/child-birth-homeless-1942317-year-percent 2008年4月29日閲覧。 
  3. ^ 哲学者のサイモン・ブラックバーンは次のように述べている。「ベネターはこういった例が軽蔑や嘲笑の対象となることを分かりつつも、自らの主張を経験的データによって注意深く裏付けており、また哲学者として注意深く証拠を解釈した上で「差別」という概念を用いている。[…]第二のセクシズムが存在することを認めるべきだという議論があり、ベネターがそれを上手く提示していることには、全く疑念の余地が無い。そしてどうやら彼自身は不公平な比較には与していないように思われる。彼はセックス・ウォーズに参戦しているわけではなく、むしろそれを沈静化させたいと願う調停者なのである。彼は次のような事態を示そうとしている。すなわち、もし女性であることがしばしば難儀であるのであれば、男性であることも同じほど難儀なのであり、このことを認識し損ねると、ジェンダーに関わらぬ普遍的な共感や社会正義という皆にとっての目標を歪めてしまうということである。」(Times Higher Education review, 5 July 2012, retrieved 27 August 2012.)哲学者のイッド・ランダウは次のように述べている。ベネターによれば、これまで無視されてきた第二のセクシズムに対処するためには、我々はそれが存在することを認めるだけでなく、この未探求のテーマについて経験的・哲学的な研究を深め、そして、もちろんのことながら、多くの人々の態度や社会規範、法律を改善しようと務めるべきだという。本書は非正統的な立場を提示し、それを巧みに擁護した、非常に議論が行き届いた本である。哲学やジェンダー研究の学部・大学院向けの教科書として有用であり、学生の活発で白熱した議論を促進することは間違いない。[…]最も重要な効果として、[…]我々自らのジェンダー関係は変革を迫られることになるだろう。(Metapsychology online reviews, 21 August 2012, retrieved 27 August 2012.)
  4. ^ 『The Guardian』と『The Sunday Mail』のコラムニストであるスザンヌ・ムーアは次のように述べている。「満腹の胃から内容物がちょろちょろと流れ出てくる。今度はアカデミズムからである。この新しい大著の中で、女性ではなく男性がどれだけ差別されているかが事細かに記されている(確かに、レイプ、殺人、同一賃金、女性器切除、政治における勢力不均衡、ビジネス、教育、法律、学術分野を除けば、それが理にかなった主張であることもある)。世の中には難儀している男性もいるようだ。ところで、そんなことはとっくに知っている。私にはフェミニズムが行き過ぎたという主張を受け入れることはできないし、脇毛が西洋文明の終わりを示しているとも信じることができない。」 (The Guardian, 16 May 2012, "The Second Sexism is just victim-envy", retrieved 27 August 2012.) ベネターは『The Guardian』に宛に書いた短い手紙の中で、ムーアがベネターの主張を誤解している点を正そうとした。(The Guardian, 18 May 2012, "Men and sexism", retrieved 27 August 2012.) (The Guardian, 18 May 2012, "Men and sexism", retrieved 27 August 2012.)
  5. ^ ベネターは同著の中で批判を予見し「アカデミズムで正統なものとして受け入れられている信条と、私が扱うテーマの微妙さを考えれば、本書で擁護する立場が、多くの人から脅かされることは避けられないだろう。私にははっきり分かる。私の主張は、どれだけ明確に述べようと、誤解されることになるだろう」当該書 p. 16.
  6. ^ Benatar & Benatar 2001, pp. 57–76.
  7. ^ Benatar & Benatar 2003, pp. 35–48.
  8. ^ The Species Barrier, around 30 minutes in

外部リンク[編集]