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ツキヒガイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ツキヒガイ
和歌山県御坊市名田町沖水深18-36メートルよりトロール船で採取(1980年)
保全状況評価
NOT EVALUATED (IUCN Red List)
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 二枚貝綱 Bivalvia
亜綱 : 翼形亜綱 Pteriomorphia
: イタヤガイ目 Pectinoida
超科 : イタヤガイ超科 Pectinacea
: イタヤガイ科 Pectinidae
亜科 : イタヤガイ亜科 Pectininae
: Ylistrum
: ツキヒガイ Y. japonicum
学名
Ylistrum japonicum
Gmelin, 1791
シノニム
異名を参照
和名
ツキヒガイ
英名
Japanses moon scallop

ツキヒガイ(月日貝, 学名:Ylistrum japonicum, : 日月蛤[1])はイタヤガイ科二枚貝である。学名は1791年にヨハン・フリードリヒ・グメリンによって命名された。

分布

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西太平洋に分布[2]。日本国内では太平洋側は房総半島以南、日本海側は山陰地方以西。九州[3]。四国[1]。その他渤海から南シナ海の中国沿岸、台湾[4]、朝鮮半島南部[5]

形態

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殻長120ミリの薄い殻はほぼ円形(前後対称[6])で、膨らみは弱い。前後の殻縁は大きく開く。殻の表面はなめらかで、付着生物はほとんど見られない[3]。耳状部は小さい。右殻は黄白色、左殻は深紅色で和名の由来となっている[7]。殻の内側は白色[6]。右の殻の内側に48 - 54の放射肋がある[2]。肉は黄色で、外套膜の辺縁部には、赤褐色の糸状触手を多く備え、その間には多数の眼点がある[8]

生態

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沿岸などの水深10 - 100メートルの細砂底に棲息する[9]。右の殻を下にして海底に横たわる(イタヤガイホタテガイなどにも同様の生態がみられる。いずれも海底に接する側の色は薄くなる)[10]。外套膜の辺縁部に多くの触手を持ち、これによって危険を感じると殻を開閉させて泳いで逃げる[7]。長距離を泳いで移動することもある[3]

栽培漁業

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1986年から1991年まで鹿児島県栽培漁業センターにて、栽培漁業の試験が行われた。4月に日照や昇温による産卵の誘発を試みて約1億4千万粒の卵を得ることができたが、飼育環境における幼生、稚貝の大量へい死を解決出来ず計画中止に至っている[11]

利用

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大型の貝柱を食用に利用する。旬は冬から春。ただし大量には獲れず、産地を中心に消費される。料理法はホタテガイと同様。鮮度が良ければ霜降りにしてポン酢などでいただくほか、焼き物や揚げ物にしても美味[7]

貝殻はしゃもじ香合などに加工する。

異名

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  • Amusium japonicum (Gmelin, 1791)
  • Amusium japonicum f. taiwanense (Dijkstra, 1988)
  • Amusium japonicum formosum (Habe, 1964)
  • Amusium japonicum japonicum (Gmelin, 1791)
  • Amusium japonicum taiwanense (Dijkstra, 1998)
  • Amusium japonicum taiwanicum (Habe, 1992)
  • Amusium taiwanicum (Habe, 1992)
  • Ostrea japonica (Gmelin, 1791)(原記載における学名)

脚注

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出典

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  1. ^ a b 日月蛤” (中国語). 臺灣貝類資料庫. 中央研究院生物多様性研究中心. 2012年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月15日閲覧。
  2. ^ a b ハラセウィッチ & モレゾーン 2017, p. 81.
  3. ^ a b c 奥谷 2017, p. 1197.
  4. ^ 巫文隆 (1980). “台灣重要食用雙殻貝類研究” (中国語). 貝類學報 (中華民國貝類學會) (7): 101-114. 
  5. ^ 閔徳基 編著(朝鮮語)『韓國貝類圖鑑(한국 패류 도감)』(改訂増補版)閔 貝類研究所、2004年4月、566頁。ISBN 978-8-9893-3412-5 
  6. ^ a b 『決定版 生物大図鑑 貝類』 1986, p. 290.
  7. ^ a b c 『料理材料大事典』 1988, p. 60.
  8. ^ "ツキヒガイ". 改訂新版 世界大百科事典 ほか. コトバンクより2024年1月4日閲覧
  9. ^ アボット & ダンス 1985, p. 307.
  10. ^ 佐々木 2010.
  11. ^ 鹿児島県水産技術開発センター 編「第7節 つきひがい種苗生産・生態基礎調査」『鹿児島県水産技術のあゆみ』(PDF)鹿児島県、2000年、523-326頁http://kagoshima.suigi.jp/ayumi/book/03/a03_01_03_07.pdf2023年11月29日閲覧 

参考文献

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  • 『日本近海産貝類図鑑』奥谷喬司 編著(第二版)、東海大学出版部、2017年1月30日。ISBN 978-4-486-01984-8 
  • M. G. ハラセウィッチ、ファビオ・モレゾーン『世界の貝大図鑑 形態・生態・分布』平野弥生 訳、柊風舎、2017年4月1日。ISBN 978-4-86498-043-2 
  • R. T. アボット、S. P. ダンス『世界海産貝類大図鑑』渡部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月8日。ISBN 4-582-51811-7 
  • 『決定版 生物大図鑑 貝類』世界文化社、1986年7月1日。ISBN 4-418-86402-4 
  • 『料理材料大事典 魚介[II] 新顔の魚 海藻・淡水藻』学習研究社、1988年3月5日。ISBN 4-05-102277-3 
  • 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年、[要ページ番号]頁。ISBN 978-4-13-060190-0 

外部リンク

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