チャイコフスキーの主題による変奏曲

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チャイコフスキーの主題による変奏曲ロシア語: Вариации на тему Чайковского作品35aは、アントン・アレンスキーの作曲した弦楽合奏曲。演奏時間は約15分。

作曲の経緯[編集]

アレンスキーは、1893年から1894年にかけて弦楽四重奏曲第2番作品35(編成はヴァイオリン1、ヴィオラ1、チェロ2)を作曲した。作曲開始年に没したチャイコフスキーに対する追悼の意味を込めて作曲されたと考えられているが、同曲の第2楽章を弦楽合奏用に編曲したものが本作である。チャイコフスキーの前例(ニコライ・ルビンシテインの思い出に捧げたピアノ三重奏曲の第2楽章)に従い、大規模な変奏曲に仕立て上げられている。

楽曲の内容[編集]

主題 Moderato

主題は、チャイコフスキーが1883年に作曲した歌曲集「16の子供のための歌」作品54の第5曲「聖史曲」(Легенда)[1]。チャイコフスキー自身もこの曲を気に入っており、混声合唱版や管弦楽伴奏版に編曲している[2]

主題は第1ヴァイオリンに登場し、他の楽器は和音を加える。

第1変奏 Un poco più mosso

主題はチェロに移る。

第2変奏 Allegro non troppo

チェロが2つのパートに分かれ、ヴィオラ・チェロ第1パートが主題を、ヴァイオリンが装飾を、チェロ第2パート・コントラバスピッツィカート伴奏をする。

第3変奏 Andantino tranquillo

主題はヴァイオリンに移る。

第4変奏 Vivace

主題はかなり変形されて登場する。これまでの変奏とリズムがかなり異なる。

第5変奏 Andante

チェロとコントラバスは主題をそのまま奏し、これにヴァイオリン、ヴィオラがチャイコフスキー風の装飾を行う。

第6変奏 Allegro con spirito

かなり激しい変奏。中間部では主題がそのまま登場。

第7変奏 Andante con moto

チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番第2楽章(アンダンテ・カンタービレ)によく似た雰囲気の落ち着いた変奏。コントラバス以外は弱音器をつける。

コーダ Moderato

主題が奏された後、ロシア正教の聖歌のような雰囲気となる。再び主題が登場し静かに終わる。

脚注[編集]

  1. ^ 「伝説」とも訳される。アメリカの詩人リチャード・ヘンリー・ストッダート(Richard Henry Stoddard)の英詩「Roses and Thorns」(1857年作)をアレクセイ・プレシチェーエフ(Aleksey Plescheev、1825 - 1893)が露訳した。歌詞の大意『イエスは自分の冠を編むためにたくさんのバラを育てていたが、花が咲くとユダヤの子供たちに全て摘ませてしまった。イエスにこの後どうやって自分の冠を作るのかと尋ねると「私には花は無いがが残されている」と答えた。これを聞きユダヤの子供たちは棘で冠を編み、イエスの額はバラではなく血で飾られた。』
  2. ^ 混声合唱版は1889年、管弦楽伴奏版は1884年にそれぞれ編曲された。

参考文献[編集]

  • 「最新名曲解説全集13 室内楽曲III」(井上和男 執筆、音楽之友社
  • 伊東一郎 訳「チャイコーフスキイ歌曲歌詞対訳全集第2巻」(新期社)