タンタン (キャラクター)

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タンタン
Tintin et Milou 15.jpg
コミック出版社ル・ロンバードフランス語版の屋上に掲げられたタンタンと犬のスノーウィ
出版の情報
出版者 Casterman (ベルギー)
初登場タンタン ソビエトへ 」(1929)
クリエイター エルジェ
作中の情報
フルネーム タンタン

タンタン(Tintin、フランス語: [tɛ̃tɛ̃][1]) は、ベルギー漫画家エルジェの作品「タンタンの冒険」の主人公である。愛犬のスノーウィとともに世界中を旅する記者であり、冒険家でもある。タンタンは1929年に生み出され、ベルギーの新聞 Le Vingtième Siècle の子供向け週刊別冊 Le Petit Vingtieme で最初に発表された。

タンタンは額の上に一房の髪を逆立てた丸顔の少年で、年齢はおおよそ14歳から19歳の間である。鋭い知性と困難に立ち向かう勇気を持ち、温厚で篤実な性格である。

特徴[編集]

描写[編集]

白いフォックス・テリアと並んで走る丸顔の少年というタンタンのイメージは、明らかに20世紀で最もよく知られたアイコンの一つである[2][3]。エルジェはタンタンを、歳は14~15歳でブリュッセル出身の白人ベルギー人として生み出した[4]。エルジェの伝記作家ピエール・アスリーヌは、タンタンは中流階級出身であり、それがエルジェとの数少ない共通点だと考えている[4]。初登場時のタンタンは丈の長いトラベルコートを着て帽子をかぶっているが、数ページ後には、お馴染みのゆるい半ズボン(プラスフォワーズ英語版)にチェックのスーツ、黒い靴下、イートンカラーに着替える (エルジェは大学でカナダ人の学生がプラスフォワーズとアーガイル柄の靴下を履いてからかわれていた思い出を持っており、これがインスピレーションになったと考えられる)[5]。今ではよく知られるようになった逆立った髪房(クイッフ英語版)だが、当初は額に垂れていた。ある激しいカーチェイスの間にクイッフが風で逆立ち、以降その髪型が定着した[6]。彼が3回目の冒険でシカゴを訪れるころには、エルジェにも読者にもタンタンの見た目が馴染んできたため、容姿や服装は変えられなくなった[7]。エルジェはインタビュアーのヌマ・サドゥールからタンタンというキャラクターがどのように発展したか問われてこう答えたことがある。「タンタンは実質的にほとんど進化しなかった。絵としては、彼は初めからずっと略画のままだ。タンタンの目や鼻を見てくれ。彼の顔はただのスケッチだ。記号表現だ[8]」アスリーヌも同様の見解を持っており、タンタンの絵は「ストーリーと同じくらい平明だ」とコメントしている[4]

マイケル・ファーはエルジェが「タンタン」という名をバンジャマン・ラビエの Tintin le lutin という本から借用したと推測しているが[9]、エルジェは1970年までその本を知らなかったと主張している[10]。ファーは「タンタン」はおそらく名字だとコメントしている。家主の女性など、ほかのキャラクターが彼を(玄関の呼び鈴に貼られているように)「ミスター・タンタン」と呼ぶのがその理由である[9]。反対にアスリーヌは、タンタンには家族がいないため「タンタン」が名字であるはずがないと断言した[10]。アスリーヌの考えでは、エルジェが「タンタン」という名前を採用したのは勇敢で明快で明るい感じに聞こえるだけでなく簡単に覚えられるためである[10]

タンタンの年齢は具体的に書かれていない[9]。『タンタンの冒険』は50年以上にわたって刊行されたが、彼は若々しいままでいる[9]1970年代にエルジェはこうコメントしている。「私にとってタンタンは年を取らないでいる。彼を何歳にすればいいだろうか?わからないが…17歳?私の判断では、彼を最初に作ったときは14歳15歳ボーイスカウトで、それからほとんど変わっていない。タンタンが40年間で3歳か4歳年を取ったとしたら、15歳と4年で19歳と計算が合う」 [11]

職業[編集]

『めざすは月』の一場面をもとにした人形。

タンタンは最初の冒険ですでに世界中に派遣される報道記者としての人生を送っている[12]。彼はソビエト連邦に派遣され、そこから編集長に宛てて特別電報を送る[13]。『かけた耳』ではタンタンがノートを手に持ち、民族誌博物館の館長に起きたばかりの窃盗事件について質問する。ラジオの記者が詳細を「あなた自身の言葉で」語るよう強く求めた時など、タンタンがインタビューを受ける側になることもある[14]。しかしわずかな例を除いて、タンタンが編集長に相談したり、記事を書いたりする様子は見られない[13]

冒険が続くにつれてタンタンが報道活動を行う頻度は少なくなり、ラブラドール通り26番地(No. 26 Labrador Road)にあるアパートから調査報道を追及する探偵として見られることが多くなる[14][15]。他のキャラクターはタンタンを鋭い知性と観察眼、推理力にちなんでシャーロック・ホームズと呼ぶ。タンタンはホームズのように変装の腕前を見せることもあり、ラスタポポロスという宿敵も持つ[14]

後の物語ではタンタンの職業はさらに移り変わる。ニュース報道という建前の活動は捨てられ、代わりに冒険者として成功を収める[16]。『レッド・ラッカムの宝』の冒険で財政面の心配から解放された後は、引退した船員のキャプテン・ハドックと科学者のビーカー教授ともに、マリンスパイクホール邸宅にずっと寄宿することになる[15]。これ以降はすべての時間を友人とともに海底や山の頂上、月面を(宇宙飛行士アームストロングより16年前に)探索することに使えるようになる[14]。これら全ての冒険を通じてタンタンは国際的な社会運動家の役を務め、敗者をかばい、自身より不幸な人の面倒をみる[17]

技能[編集]

エルジェは第1巻から一貫してタンタンを車、オートバイ、飛行機、戦車など乗り物ならなんでも運転や修理できる名人として描いている[18]。機会があればタンタンはどんな自動車も難なく運転し、月で戦車を運転したことがあり、航空機での飛行もお手の物である。さらに彼はモールス符号の知識をもった腕の立つ無線電信技士でもある[19]。彼は必要な時には悪役の顎へ強烈なパンチをくらわせたり、すばらしい水泳の技術を披露したりする。また彼は射撃の名手でもある[20]。月での冒険では、有能なエンジニアであり科学者でもあるところも見せている[19]。彼はまた抜群のコンディションを持つ優秀なアスリートでもあり、長距離を歩き、走り、泳ぐことができる。エルジェはタンタンの能力を「恐れ知らずで非の打ち所がないヒーロー」と要約している[5]。また何よりもタンタンは頭の回転が早く、素晴らしい社交家である。タンタンはエルジェ自身がなりたかったような万能の天才でほとんどすべてのことが得意な人物である[21]

性格[編集]

エルジェがシリーズを書き進めるにつれて、タンタンの性格は変化していった[22]。エルジェの伝記を書いたブノワ・ペテルスは、初期の『タンタンの冒険』におけるタンタンの性格は「首尾一貫しない」、「ときには愚かしく、ときには博識で、わざとらしいくらい敬虔かと思えば、受け入れられないくらい攻撃的になる」と述べており、つまりはエルジェのプロットを実現するための「物語の手段」に過ぎないのだという[22]。別の伝記作家ピエール・アスリーヌは『冒険』初期のタンタンが「ほとんど人類への同情心」を見せないと言及した[23]。アスリーヌはタンタンについて「独身主義を貫き、行いにすぐれ、礼儀正しく、勇敢で、弱い者と虐げられる者の側に立ち、その気もないのにいつもトラブルに巻き込まれる。機転が利き、思い切りがよく、思慮分別がある。タバコも吸わない」と説明した[4]

マイケル・ファーはタンタンが正直で勇敢な若者であり、読者が自己投影できるようなキャラクターだとみなした[24]。タンタンはどちらかというと中立的な性格であるため、自らを取り巻く悪や愚かさ、無分別なことがらに落ち着いた反応を返す。それにより読者は、強い主人公が大暴れするのをただ見守るのではなく、タンタンに成りきって読むことができるのである[25]。タンタンの描写が記号的であることはこのような側面を高めている。漫画の専門家スコット・マクラウド英語版は、タンタンの象徴的で中立な性格と、エルジェ特有の「際立って写実的な」ハッキリした線(リーニ・クレア英語版=クリア・ラインと呼ばれるスタイル)の組み合わせにより、「読者は[記号的な]キャラクターの中に自己を埋没させて、[リアルに描かれた背景の]感覚刺激に満ちた世界へと安全に入っていけるようになる」と述べている[26]

他のキャラクターに対しては、タンタンは正直で礼儀正しく、思いやりがあって親切である[21]。さらに彼はエルジェがそうであったように控えめで出しゃばらず、エルジェがそうなろうと努力したように友人に対して誰よりも忠実である[21]。その一方で、『かけた耳』において銃殺隊に直面する前に泥酔したり、『月世界探検』においてキャプテン・ハドックに彼のせいで危うく二人とも命を落とすところだったと激怒するなどの欠点も見せる。しかし、マイケル・ファーによればタンタンは「きわめて広い心」を持っていて、『タンタンチベットを行く』ではそれにふさわしい「グレート・ハート」という名を与えられた[21]。タンタンはある時には無邪気であり、政治的運動を推進することも、現実逃避主義者であったりもするが、本当のところはシニカルである[27]。エルジェが「タンタンが道徳家だとしても、物事を深刻に受け止めない道徳家だ。だから彼の漫画からユーモアが失われることがないんだ」と述べているように、善人ぶるところはあっても気難しくはない[28]。タンタンが世界中で人気を博したのはこのユーモアセンスのためだと言える[27]

脚注[編集]

  1. ^ Tintin pronunciation in French(Forvo)
  2. ^ Thompson 1991, p. 81.
  3. ^ Lofficier & Lofficier 2002, p. 9.
  4. ^ a b c d Assouline 2009, p. 20.
  5. ^ a b Thompson 1991, p. 35.
  6. ^ Farr 2007, p. 16; Thompson 1991, p. 33.
  7. ^ Farr 2007, p. 18.
  8. ^ Farr 2007, p. 18; Sadoul 1975.
  9. ^ a b c d Farr 2007, p. 17.
  10. ^ a b c Assouline 2009, p. 21.
  11. ^ Farr 2007, p. 17; Sadoul 1975.
  12. ^ Thompson 1991, p. 119; Farr 2007, p. 14.
  13. ^ a b Thompson 1991, pp. 38–39; Farr 2007, p. 15.
  14. ^ a b c d Farr 2007, p. 15.
  15. ^ a b Thompson 1991, p. 119.
  16. ^ Thompson 1991, p. 147; Farr 2007, p. 15.
  17. ^ Thompson 1991, pp. 24, 77.
  18. ^ Farr 2007, p. 19; Peeters 2012, p. 36.
  19. ^ a b Farr 2007, p. 19.
  20. ^ Farr 2007, p. 20.
  21. ^ a b c d Farr 2007, p. 21.
  22. ^ a b Peeters 2012, p. 36.
  23. ^ Assouline 2009, p. 23.
  24. ^ Farr 2007, p. 11.
  25. ^ Walker 2005.
  26. ^ McCloud 1993, pp. 42–43.
  27. ^ a b Thompson 1991, p. 299.
  28. ^ Thompson 1991, pp. 35–36.

参考文献[編集]

関連文献[編集]

外部リンク[編集]