スナガニ属
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| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Ocypode Weber, 1795[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
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スナガニ属(スナガニぞく、砂蟹属、学名: Ocypode)は、スナガニ科の属の1つ。世界中の熱帯から温帯域に分布し、海岸の砂地に生息する。体は箱型で、眼柄は太く長い。雌雄ともに鋏脚は左右どちらかが大きいが、シオマネキほどの差異はない。潮間帯に深い巣穴を掘って生活する。主に夜行性であり、腐肉や小動物を捕食する。少なくとも21種が分類されている。
分類と名称
[編集]1795年にドイツの昆虫学者であるフリードリヒ・ヴェーバーによって記載された。タイプ種はツノメガニで、1772年にドイツの博物学者であるペーター・ジーモン・パラスによって、Cancer ceratophthalmus として記載されていた[2][3]。
以前はスナガニ亜科を構成する唯一の属であったが、2013年に酒井勝司とMichael Türkayにより、Hoplocypode occidentalis は独自の属に分類された。この2属は生殖肢の形状が異なり、Hoplocypode 属では第1生殖肢の先端が複雑な蹄型をしているが、スナガニ属では先端は単純で湾曲している[2]。
スナガニ属の英語での総称は"ghost crab"(幽霊ガニ)である。この名の由来は定説がない。英語で"sand crab"と呼ばれるカニがいるがこれはスナホリガニ科に属する。
- 足が速いため「影を残して走り去る」という例えから
- 素早く巣穴に隠れるため「さっきまで居たはずなのにもう居ない」ことから
- 保護色で砂の色に紛れこむため、夜の砂浜に照明を当てると「影だけが動いている」ように見えることから
形態
[編集]体は箱型で、甲羅の部位は明確に区別できない。眼柄は太く長く、下部の大部分は角膜となっている。Ocypode brevicornis、ツノメガニ、O. gaudichaudii、O. macrocera、ホンコンスナガニ、O. rotundata、O. saratan は、眼柄の先端に突起がある。突起は幼体では短いか存在しない。O. cursor は、眼柄の先端に剛毛がある。活動時に眼柄は垂直に立つ[2][4]。多くの種の体色は、生息環境である砂地に合わせて淡い色になっている[5]。ただし、環境や時間に合わせて体色を徐々に変化させることも可能である[6][7]。
雌雄ともに鋏脚は左右どちらかが大きくなっている。種によっては大鋏の内側に顆粒列があり、これを用いて発音する。この隆起の形状は種同定の際に重要となる。鋏脚は歩脚よりも短く、第1歩脚は他の歩脚よりも細く短い。第2歩脚と第3歩脚の基部の間は、長い剛毛で縁取られる[2][4]。
分布と生態
[編集]世界中の熱帯から温帯にかけて分布する[8]。3種は大西洋と地中海に、1種はアメリカ大陸の太平洋岸に、残りの種は西太平洋とインド洋に分布する[2]。
柔らかい砂地や泥地に、深さ1m以上の巣穴を掘る。砂浜や浅瀬の礫地、河口に生息する。夜行性であり、腐肉や小動物を捕食する[4][9]。
眼が大きいため視力がよく、全方向を見渡すことができる。砂浜に45°の角度で深さ1メートル以上の巣穴を掘る。時速16kmほどで走ることができ、急な方向転換も得意である。夕方に波打ち際まで走って鰓に海水を受け、酸素を補給する。雌は初夏に放卵する。
下位分類
[編集]O. occidentalis は2013年に独自の Hoplocypode 属に移された。従来スナガニ属には25種が分類されていたが、同研究では O. longicornuta はツノメガニの、O. platytarsis は O. brevicornis の、O. pygoides は O. convexa の、ナンヨウスナガニはミナミスナガニのシノニムとされ、スナガニ属は21種とされた[2]。World Register of Marine Speciesでは Hoplocypode 属を認めず、ナンヨウスナガニを独立種としており、O. occidentalis を含めた23種が分類されている[3]。
| 学名 | 一般名 | 概要 | 画像 |
|---|---|---|---|
| Ocypode africana De Man, 1881 |
African ghost crab[10] | モーリタニアからナミビアにかけて、アフリカ大陸の大西洋岸に分布する。中型種で、O. cursor と同所的に生息するが、眼柄の先端に剛毛が無いことで区別できる[2]。 | |
| Ocypode brevicornis H. Milne-Edwards, 1837 |
オマーン、インド、スリランカ、ニコバル諸島に分布する。大型種であり、第1および第2歩脚の前節に毛が無いこと、大鋏の顆粒が23-28個であることが特徴である。眼柄の先端には突起がある[2]。 | ||
| Ocypode ceratophthalma (Pallas, 1772) |
ツノメガニ horned ghost crab、horn-eyed ghost crab[11][12] |
分布域が最も広い種の1つで、紅海を除くインド洋全域から、東はポリネシア、クリッパートン島まで分布する。中型から大型の種で、眼柄には突起がある。幼体は突起が発達しない為、他の種と混同されることがあるが、鋏脚の上部に10-11個の顆粒が並び、中央に8本の太い条が入り、下部に20-30個の顆粒が並ぶ。生殖肢は細く、鋏の先端は尖る[2]。甲幅4cmほどで、スナガニやミナミスナガニより大きい。 | |
| Ocypode convexa Quoy & Gaimard, 1824 |
golden ghost crab[13][14]、western ghost crab[15]、yellow ghost crab[16] | 西オーストラリア州のブルームからパースにかけて分布する。大型種であり、甲羅の角は三角形で、鋏は小さく尖り、顆粒は19-24個で、第1および第2歩脚には剛毛がある[2]。 | |
| Ocypode cordimana Latreille, 1818 |
ミナミスナガニ smooth-handed ghost crab[17] |
最も分布域が広い種の一つで、紅海を含むインド洋西部から、フランス領ポリネシアまで分布する。大鋏には顆粒列を持たない[2]。甲幅3cmほどで、スナガニに似ているが甲羅がやや丸くて白っぽいこと、大鋏に顆粒列がないことなどで区別する。 | |
| Ocypode cursor (Linnaeus, 1758) |
tufted ghost crab[18] | モーリタニアからナミビアにかけての東大西洋、エジプトからギリシャ南部にかけての地中海に分布する。大型の種であり、眼柄の先端に剛毛が生えることが大きな特徴である[2]。 | |
| Ocypode fabricii H. Milne-Edwards, 1837 |
Kimberley ghost crab | ダーウィンからシャーク湾にかけて、オーストラリア北部および西部に分布する。中型の種で、O. jousseaumei と似るが分布は重ならない[2]。 | |
| Ocypode gaudichaudii H. Mile-Edwards & Lucas, 1843 |
painted ghost crab[19] | グアテマラからチリにかけてのアメリカ大陸東岸に分布する。中型から大型の種で、分布の重なる H. occidentalis とは、鮮やかな体色と眼柄の突起で区別できる[2]。 | |
| Ocypode jousseaumei (Nobili, 1905) |
アデン湾とオマーン湾に分布する。小型から中型の種で、O. fabricii と似るが分布は重ならない[2]。 | ||
| Ocypode kuhlii De Haan, 1835 |
Kuhl's ghost crab | ニコバル諸島、タイ南部、インドネシア、パプアニューギニアに分布する。中型から大型の種で、大鋏の顆粒は約10個。歩脚前節に剛毛は無い[2]。 | |
| Ocypode macrocera H. Milne-Edwards, 1852 |
red ghost crab | パキスタン、ニコバル諸島を含むインド、スリランカ、ミャンマーに分布する。中型の種で、雄では甲羅の縁が鋸歯状で、前方に突出する。鋏脚の上面には突起が密集しており、上下の縁は鋸歯状である。また大鋏の顆粒は35-56個で、条が入る。鋏の先端は鈍い。眼柄には突起がある[2]。 | |
| Ocypode madagascariensis Crosnier, 1965 |
Madagascan Ghost Crab | マダガスカル島、モザンビークからクワズール・ナタール州までの南部アフリカ東海岸に分布する。中型の種で、甲羅の上面は粗い突起で覆われる。甲羅の横幅は縦幅より長い。甲羅の縁は三角形で、前方に突出する。大鋏の顆粒は20-30個[2]。 | |
| Ocypode mortoni George, 1982 |
ホンコンスナガニ | 中国南部、南日本に分布する。小型の種で、スナガニとは眼柄の突起で区別できる。ツノメガニと似るが、35-71本の縦走稜を持つこと、鋏の先端が丸みを帯びるか扁平であることが特徴である[2]。 | |
| Ocypode nobilii De Man, 1902 |
タイランド湾、マレー半島からボルネオ島北部に分布する。小型の種でありスナガニと似るが、分布域が異なる[2]。 | ||
| Ocypode pallidula Jacquinot, 1846 |
pallid ghost crab[3] | 最も広く分布する種の一つで、ハワイからグレートバリアリーフ、マダガスカル、モーリシャスまで分布する。2つの隠蔽種が含まれている可能性がある。小型から中型の種で、大鋏の顆粒は雄では30-42個、雌では17-29個で、太い列を形成する。鋏脚は尖る[2] | |
| Ocypode pauliani Crosnier, 1965 |
マダガスカルの固有種。中型の種で、大鋏の顆粒は7-13個。鋏脚は尖る[2]。 | ||
| Ocypode quadrata (Fabricius, 1787) |
Atlantic ghost crab[3] | マサチューセッツ州からリオグランデ・ド・スル州まで、西大西洋に分布する。中型から大型の種で、西大西洋では唯一のスナガニ類である[2]。 | |
| Ocypode rotundata Miers, 1882 |
rounded ghost crab | アラビア半島南部のオマーンから、インドのボンベイにかけて分布する。大型の種で O. saratan に似るが、大鋏の顆粒が10-15個不規則に並ぶこと、生殖脚に触肢があることが特徴。眼柄には突起がある[2]。 | |
| Ocypode ryderi Kingsley, 1880 |
pink ghost crab[20][21] | ソマリア南部から南アフリカまでのアフリカ東海岸、セーシェルに分布する。中型の種で、脚の内側の赤い帯が特徴である[2]。 | |
| Ocypode saratan (Forskål, 1775) |
Red Sea ghost crab | 紅海では一般的な種である。マダガスカルからインド洋、西太平洋にかけて分布する。中型から大型の種で、眼柄には突起がある[2]。 | |
| Ocypode sinensis Dai & Yang in Song & Yang, 1985 |
ナンヨウスナガニ | 日本、中国、朝鮮半島、台湾、フィリピン、マレー半島、インド、イランを含むインド太平洋に広く分布する。眼柄は短く、甲羅は黄褐色で暗色の斑点に覆われる。大鋏に顆粒列を持たない[22]。 | |
| Ocypode stimpsoni Ortmann, 1897 |
スナガニ Stimpson's ghost crab |
中国、朝鮮半島、日本に分布する。小型種でありホンコンスナガニに似るが、眼柄に突起が無い[2]。甲幅は3cmほどで、甲は背中側にやや膨らんだ長方形をしている。大鋏の内側に顆粒列が並ぶ。 |
出典
[編集]- ^ Sammy De Grave; N. Dean Pentcheff; Shane T. Ahyong (2009). “A classification of living and fossil genera of decapod crustaceans”. Raffles Bulletin of Zoology Suppl. 21: 1–109.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab Katsushi Sakai & Michael Türkay (2013). “Revision of the genus Ocypode with the description of a new genus, Hoplocypode (Crustacea: Decapoda: Brachyura)”. Memoirs of the Queensland Museum – Nature 56 (2): 665–793. doi:10.17082/j.2204-1478.56.2.2013-22.
- ^ a b c d DecaNet (2025). “Ocypode Weber, 1795”. World Register of Marine Species. 2025年9月12日閲覧.
- ^ a b c Mary J. Rathbun (1918). “The Grapsoid crabs of America”. Bulletin of the United States National Museum (97): 1–461. doi:10.5479/si.03629236.97.i.
- ^ Gary C. B. Poore & Shane T. Ahyong (2004). Marine Decapod Crustacea of Southern Australia: A Guide to Identification. CSIRO Publishing. p. 496. ISBN 9780643069060
- ^ Jonathan P. Green (1964). “Morphological color change in the Hawaiian ghost crab Ocypode ceratophthalma (Pallas)”. The Biological Bulletin 126 (3): 407–413. doi:10.2307/1539309. JSTOR 1539309.
- ^ Martin Stevens; Cheo Pei Rong & Peter A. Todd (2013). “Colour change and camouflage in the horned ghost crab Ocypode ceratophthalmus”. Biological Journal of the Linnean Society 109 (2): 257–270. doi:10.1111/bij.12039.
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- ^ “Horn-eyed ghost crab Ocypode ceratophthalma”. Wild Singapore (2009年5月). 2025年9月11日閲覧。
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- ^ Kim, Da-In; Jang, Sook-Jin; Kim, Taewon (2023-12-12). “The First Record of Ocypode sinensis (Decapoda: Ocypodidae) from the Korean Peninsula: How the Complete Mitochondrial Genome Elucidates the Divergence History of Ghost Crabs”. Journal of Marine Science and Engineering 11 (12): 2348. doi:10.3390/jmse11122348. ISSN 2077-1312.














