スコットランド幻想曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

スコットランド幻想曲Schottische Fantasie作品46は、マックス・ブルッフ1879年から1880年にかけて作曲したヴァイオリン独奏とオーケストラのための協奏的作品である。正式な題名は「スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴ったヴァイオリンのための幻想曲」(Fantasie für Violine mit Orchester und Harfe, unter freier Benützung Schottisher Volksmelodien)。作曲当初は「スコットランド協奏曲(Scottische Konzert)」「ヴァイオリン協奏曲第3番」などと呼ばれることもあった。

概要[編集]

パブロ・デ・サラサーテのために作曲され、サラサーテに献呈されたが、初演は1881年2月22日に、作曲上のアドバイスを行ったヨーゼフ・ヨアヒムの独奏で、ブルッフ指揮のリヴァプール・フィルハーモニー協会によって行われた。作品は好評を博したが一時演奏機会は減り、この作品が世界的に知られるようになったのは、後にヤッシャ・ハイフェッツが愛奏し1947年に世界初録音を行ってからのことであった。

作曲当時ブルッフはスコットランドを訪れたことはなく、スコットランド民謡との出会いは『スコットランド音楽博物館』(Scots Musical Museum)という曲集によるものである。スコットランドの歌を収集したこの全6巻、599曲からなる曲集は、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズが、エディンバラの音楽学者・音楽出版者ジェームズ・ジョンソン(James Johnson)とともに編集し、1787年から1803年にかけて出版されたものである。

なお、この曲はNHK衛星放送で放映されていた『ヨーロッパ音楽紀行』でスコットランドのエレン・ドナン城(Eilean Donan Castle)放映時のBGMとして使用された。また、第3楽章をヴァネッサ・メイが編曲した"A Little Scottish Fantasy"はテレビ朝日系列のスポーツ番組『GET SPORTS』において使用され、広く知られている。

楽器編成[編集]

独奏 ヴァイオリンフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバティンパニシンバルバスドラムハープ弦五部

曲の構成[編集]

序章と4つの楽章からなり、演奏時間は30分前後。スコットランドの伝統へのオマージュとして、ブルッフはハープに重要な役割を与えている。

序章 グラーヴェ
変ホ短調、4/4拍子。低音のコラール風の旋律に始まり、甘美だが物悲しいテーマが独奏ヴァイオリンによって奏でられる。
第1楽章 アンダンテ・カンタービレ
変ホ長調、3/4拍子。序章がフェルマータによって終わるとすぐにこの楽章に入り、管弦楽の前奏に続いてスコットランド民謡の "Thro' The Wood, Laddie"(森を抜けて、若者よ)[1]を基調としたメロディーが奏でられる。この主題は後の楽章にも顔を出し、全曲の統一を高めている。
第2楽章 アレグロ 
ト長調、2/3拍子。ソナタ形式。舞曲風の生き生きしたリズムになり、バグパイプを思わせる空虚五度に乗ってソロヴァイオリンが "Dusty Miller"(粉まみれの粉屋)をもとにした旋律を奏でる。最後に第1楽章の主題が回想され、次の楽章に切れ目なく続く。
第3楽章 アンダンテ・ソステヌート
変イ長調、4/4拍子。三部形式。"I'm a Doun for Lack O'Johnnie"(ジョニーがいなくてがっかり)をもとにした親しみやすいメロディーが歌われる。
第4楽章 フィナーレ アレグロ・グゥエリエロ[2]
変ホ長調、4/4拍子。ソナタ形式。冒頭の主題は、スコットランドの非公式な国歌の一つである "Scots wha hae"(スコットランドの民よ)[3]を変形したものである。この主題とハ長調で提示される抒情的な主題の2つが華やかに変奏、展開されていく。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ ここで使われる民謡は"Auld Rob Morris"(年老いたロブ・モリス)と紹介されることが多いが、明確に異なる旋律を持つ曲であり、誤りである。http://mudcat.org/thread.cfm?threadid=57807を参照。
  2. ^ 「好戦的に」と訳される発想標語。フェリックス・メンデルスゾーン交響曲第3番「スコットランド」のフィナーレ(初稿)に見ることができる。
  3. ^ "Hey Tuttie Tattie"という題でも知られる。

外部リンク[編集]