ザ・ゴール

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ザ・ゴール』(原題:: The Goal)は物理学者エリヤフ・ゴールドラットが著述し1984年に出版されたビジネス小説。1984年の発行当時「日本語版が出版されたら、日本企業が独り勝ちして世界経済が大混乱に陥ってしまう」とのゴールドラットの意向によって、日本語翻訳版の出版は2001年まで許可されなかった[1][2]

2014年時点では、全世界で1000万人を超える読者がいるとされ、2001年に発売された日本語版も68万部を超えるベストセラーとなっている[1]

日本では、2014年に監修:岸良裕司、脚色;青木健生、作画:蒼田山で舞台設定を架空の日本企業に置き換えた漫画版も出版されている[1]。2018年現在、続編の「ザ・ゴール2」までが漫画化されている。

概要[編集]

製造業向けに「制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)」を小説仕立てで説明した本である[2]

TOCはトヨタ生産方式をはじめとした、日本で経験則的に行われていた方式を分析し、理論建てたものであるが、当時の日本企業は国際競争力が高く、日本以外の国の競争力を上げて貿易不均衡を解消する必要があると考えたゴールドラットは、『ザ・ゴール』の日本語翻訳を2001年まで許可しなかった[2]

あらすじ[編集]

アレックスは、機械メーカーであるユニコ社の工場の所長に栄転してくる。工場は在庫を山のように抱え、慢性的に納期遅れが続き、赤字状態が続いていた。そしてアレックスは、採算悪化を理由に経営陣から3ケ月後の工場閉鎖を言い渡される。

工場閉鎖を免れるには業務改善しかないが、最近導入したロボットは休み無く部品を作り続けているし、熱処理装置も一度に大量の製品を処理できており、非効率な点は見いだせない。途方に暮れながらも必死に働くアレックスは、妻ジュリーとの仲も険悪になり、ジュリーは実家へと帰ってしまう。

アレックスは空港で、大学時代の恩師ジョナと再会する。物理学の教授をしているはずのジョナは、今は「組織の科学」について研究しているという。「ロボットで効率化したはずなのに、在庫が抱えきれないほど増えて、予定どおりの納期に出荷できず、経営が苦境に立たされていること」を言い当てられたアレックスは、自分が置かれている状況をジョナに話す。ジョナはTOC理論に基づいて、アレックスの工場における生産プロセスの問題点を指摘した。

工場の各プロセスを調べなおすうちに、熱処理装置の前に大量の仕掛品が溜まっていることを見つける。熱処理装置は一定数を溜めて同時に処理することで効率を上げようとしていたが、それこそがボトルネックであることを発見する。アレックスは熱処理装置が同時に処理する数を半減させて回転数を上げることを提案するが、それでは効率が下がると反対されてしまう。

息子のボーイスカウトのハイキングの引率に駆り出されたアレックスは、足の速い子供を先に行かせて、足の遅い子供を後ろにつかせて行進させる。しかし先頭と後続との距離は大きく開き、行進の移動速度は予定していたよりもずっと遅くなってしまう。行進の列の間隔が「在庫」や「作業の遅れ」と同じだと感じたアレックスは、足の遅い子供を先に歩かせ、重い荷物を抱えていた子供の荷物をみんなで少しずつ負担させることで、進行速度を一定にして速度をアップさせることに成功する。

ハイキングの経験を元にしてアレックスが理論を説明し、工場閉鎖が迫っていることを訴えることで、製造課長や経理課長もダメ元でと提案を受け入れた。熱処理装置の処理量に合わせて全ての生産計画を練り直し、前工程での資材の投入量を抑えることによって、大量の仕掛品は激減していった。また完成品の在庫数も減らしていった。会計上、大きな損失が出たように見えるが、アレックスは隠蔽して改革を断行した。

アレックスは、ハイキングでの一件を例に挙げて、「足の遅い子供の位置が中間で変えられないが、どうしたら全体のペースを一定にして行進速度を上げられるか?」と子供たちに尋ねたところ、全員にロープを持ってもらい、ドラムの音に合わせて行進すればいい……という子供たちのアイデアを元に、ボトルネックの処理速度に合わせて資材投入のペースを決めることで、在庫の渋滞を最小限にできるようになる。

さらに、ジョナからのアドバイスにより、バッチサイズ(1回の処理量)を半分にすることで、工場内の仕掛かり在庫が半分になり、減った仕掛かりの分キャッシュフローが改善された。それだけでなく、リソース前で列を作っている在庫のキュータイムと、部品を待っている間の行員のウエイトタイムが、劇的に減ったのだ。これらの改善により、次第に製品の完成は納期通りになり、納期よりも前に完成することもあった。

生産に余裕ができてきた工場は、もっと仕事を行える。アレックスは、本社のマーケティング部長のジョニー・ジョンズに相談する。ジョニー・ジョンズも最初は信じなかったが、実際にアレックスの工場は劇的な改善が行われ、納期も守られている。ジョニー・ジョンズは、短納期のため諦めていた大きな仕事をアレックスの工場に引き受けさせた。アレックスの工場は、これも納期通りに完成させ、大きな利益を産み出すことに成功する。

会計担当のヒルトンは、工場内の在庫が減っており、会計上の損失が出ていることを指摘する。ヒルトンは、従来のやり方に戻せと迫るが、そこへ本社副本部長のビル・ピーチとジョニー・ジョンズが工場を訪れ、納期通りに仕事が仕上がったことを褒め称え、労わりの言葉をかける。

主な登場人物[編集]

アレックス・ロゴ (Alex Rogo)
主人公。ユニコ社の工場の所長。
妻ジュリー(Julie)、息子デイブ(Dave)、娘シャロン(Sharon)がいる。
ジョナ (Jonah)
アレックスの大学時代の恩師で物理学者。
工場関係者
フラン (Fran)
アレックスの秘書。
ルー (Lou)
経理課長。
ステーシー (Stacey)
資材マネージャー。
ボブ・ドノバン (Bob Donovan)
製造課長。
ラルフ・ナカムラ (Ralph Nakamura)
データ処理担当の責任者
ユニコ社の本社部門関係者
ビル・ピーチ (Bill Peach)
アレックスの上司。副本部長。
イーサン・フロスト (Ethan Frost)
経理部長
ジョニー・ジョンズ (johnny jones)
マーケティング部長
ヒルトン・スミス
アレックスの同期でライバル。会計担当。

用語[編集]

スループット
販売を通じてお金を作り出す割合
スループット = 売上高 - 真の変動費(製品を販売するために投資したキャッシュ)
在庫
販売しようとするものを購入するために投資した全てのお金
業務費用
在庫をスループットに換えるために費やすお金
依存的事象
複数作業の前後関係
統計的変動
同じ作業にも時間のばらつきがあること
ボトルネック
瓶の首のように、作業が遅いために一連の流れ作業が滞り、仕掛かり在庫を生み出す原因。

5つのステップ[編集]

通常、1~4までのステップにより一連の作業のボトルネックを解消すると、また新たなボトルネックが生まれている事が多いため、定期的にステップを繰り返す必要性がある。また、メーカーや工場においては、ボトルネックは同時に複数あることも多いので注意が必要である。

ステップ1
制約条件を見つける。
ステップ2
制約条件をどう活用するかを決める。
ステップ3
他のすべてをステップ2の決定に従わせる。
ステップ4
制約条件の能力を高める。
ステップ5
ここまでのステップでボトルネックが解消したら、ステップ1に戻る。ただし、「惰性」を原因とする制約条件を発生させてはならない。

関連項目[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b c 岸良裕司 (2014年12月22日). “教科書が大嫌い! 読むと眠くなる”. ダイヤモンド社. 2017年10月24日閲覧。
  2. ^ a b c 大矢昌浩 (2009年12月1日). “日本の産業界は20年をムダにした”. 日経ビジネスオンライン. 2017年10月24日閲覧。
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