サンカクヅル
サンカクヅル | ||||||||||||||||||||||||
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サンカクヅルの葉と花序
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Vitis flexuosa Thunb. (1793)[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
サンカクヅル(三角蔓) ギョウジャノミズ、アツバサンカクヅル |
サンカクヅル(三角蔓[2]、学名: Vitis flexuosa)は、ブドウ科ブドウ属の落葉性つる植物である。別名、ギョウジャノミズ、アツバサンカクヅルともよばれる[1]。山地に生え、葉は3角状卵形で毛がない。
名称
[編集]和名の「サンカクヅル」の由来は、葉が三角形に近いことから名付けられている[2]。別名のギョウジャノミズは「行者の水」の意味で、山中で修行する僧(行者)が蔓を切り、その中の水でのどを潤したという伝説にちなむ[3][4]。昔、山中で行者が峯道で水がないときに、このつるを切ってのどを潤したという[5]。中国植物名は、葛藟葡萄(別名:葛藟、千崔藟、蕪、光葉葡萄)[1]。
分布・生育地
[編集]日本の北海道、本州、四国、九州、南西諸島(奄美大島、西表島)、および朝鮮半島、台湾、中国の暖帯に分布する[6][5][2][4]。山地や低地の林縁などに生える[6][2][3]。
特徴
[編集]山地に生えるつる性の落葉低木[4](夏緑藤本)[6]。雌雄異株。枝は丸く無毛である。茎を切ると、切り口から水がしたたり落ちるほど水揚げが良い[5][3]。
葉は長い柄がついて互生し、巻きひげと対生[4]。葉身は長さ4 - 10センチメートル (cm) 、幅5 cmの三角形で、裂けないか、ごく浅く3つに裂ける[2][4][3]。表面は無毛[3]。葉縁は切れ込まないが、粗い鋸歯がある[3]。晩秋になると、橙色から赤色に紅葉し、条件がよいと非常に鮮やかな赤色になる[2][3]。
花期は初夏(5 - 6月ごろ)[6][3]。葉に対生して長さ4 - 9 cmの円錐花序をつくり、多数集まって花を咲かせる[3][4]。花序に巻きひげはない[4]。果期は9 - 10月ごろ。果実は液果で、直径6 - 7ミリメートル (mm) ほどの球形で、未熟なときは翡翠色をしており、熟すとつやのある藍黒色になる[3][4]。果実は甘くて食べられる[5][2]。果実の種子数は2 - 4個[7]。
種子は広倒卵形で、長さ4.8 mm[7]。基部はくちばし状に尖り、側面は半広倒卵形でやや扁平、腹面方向へやや曲がる[7]。背面には浅い溝があり、腹面の正中線は稜をなし、ときに隆条状である[7]。種子は暗灰褐色で、光沢は弱い[7]。
変種・品種
[編集]品種
- コバノサンカクヅル(学名: Vitis flexuosa f. parvifolia)[8]
変種
食用
[編集]果実はエビヅルに似た味で甘酸っぱく、生食できる。皮と種子を一緒にしてジャムなどにも加工できる。また、焼酎に漬け込んでおくと、濃い鮮やかな紫色に染まった果実酒にできる[3]。
脚注
[編集]- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vitis flexuosa Thunb. サンカクヅル(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g 林将之 2008, p. 63.
- ^ a b c d e f g h i j k 川原勝正 2015, p. 89.
- ^ a b c d e f g h 牧野富太郎著、邑田仁・米倉浩司編 2012, p. 482
- ^ a b c d 堀田ほか編 1989, p. 1102.
- ^ a b c d 宮脇昭ほか編 1994, p. 450.
- ^ a b c d e 中山至大・井之口希秀・南谷忠志 2002, p. 400
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vitis flexuosa Thunb. f. parvifolia (Roxb.) Planch. コバノサンカクヅル(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月19日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vitis flexuosa Thunb. var. rufotomentosa Makino ケサンカクヅル(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月19日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vitis flexuosa Thunb. var. tsukubana Makino ウスゲサンカクヅル(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月19日閲覧。
参考文献
[編集]- 川原勝征『食べる野草と薬草』南方新社、2015年11月10日、89頁。ISBN 978-4-86124-327-1。
- 中山至大、井之口希秀、南谷忠志『日本植物種子図鑑』東北大学出版会(仙台)、2002年2月25日。ISBN 4-925085-29-8。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 掘田満ほか 編『世界有用植物事典』平凡社、1989年8月25日。ISBN 4-582-11505-5。
- 牧野富太郎著、邑田仁・米倉浩司編『APG原色牧野植物大図鑑I = APG MAKINO'S ILLUSTRATED FLORA IN COLOUR 1 (ソテツ科~バラ科)』北隆館、2012年4月25日。ISBN 978-4-8326-0973-0。
- 宮脇昭ほか 編『日本植生便覧 改訂新版』至文堂、1994年10月10日。ISBN 9784784301478。