ケイシーの定理

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数学におけるケイシーの定理(ケイシーのていり、: Casey's theorem)または一般化トレミーの定理は、アイルランドの数学者ジョン・ケイシー英語版にちなむユークリッド幾何学の定理である。

主張[編集]

を半径 の円とし、 をこの順に に内接する、互いに交わらない4つの円とする。円 に外側の共通接線を引いたときの2接点の距離を とすると、次の等式が成り立つ[1]

4つの円がみな1点にまで退化した場合、これはちょうどトレミーの定理になる。

証明[編集]

以下の証明は Zacharias に帰せられる[2][3]。円 の半径を と表し、円 との内接点を とする。各円の中心を同じ記号 で表すことにする。 ピタゴラスの定理より、

この長さを点 を用いて表したい。余弦定理を三角形 に用いると

が得られる。円 が接していることから

を円 の周上の点とする。正弦定理を三角形 に用いると

が得られる。これより、

以上を余弦定理の式に代入すると

よって

が得られる。円に内接する四角形 にトレミーの定理を用いて変形すると

さらなる一般化[編集]

4つの円が最大の円に内側から接していなくともよい。実際、これらが外側から接している場合も考えることができて、その場合は以下のように定めればよい[4]

が円 の同じ側(いずれも内側か、または外側)から接しているならば、 は2円に対し外側から共通接線を引いたときの接点間の距離とする。
が円 の異なる側(一方が内側で他方が外側)から接しているならば、 は2円に対し内側から共通接線を引いたときの(共通接線に対し2円が反対側に位置するようなときの)接点間の距離とする。

ケイシーの定理の逆もまた成り立つ[4]。つまり、この等式が成り立っているならば、4つの円はある1つの円に共通して接する。

応用[編集]

ケイシーの定理およびその逆は、ユークリッド幾何学の種々の命題の証明に用いることができる。例えば、フォイエルバッハの定理の最も短い証明はケイシーの定理の逆を利用するものである[1]:411

脚注[編集]

  1. ^ a b Casey, J. (1866). “On the Equations and Properties: (1) of the System of Circles Touching Three Circles in a Plane; (2) of the System of Spheres Touching Four Spheres in Space; (3) of the System of Circles Touching Three Circles on a Sphere; (4) of the System of Conics Inscribed to a Conic, and Touching Three Inscribed Conics in a Plane”. Proceedings of the Royal Irish Academy 9: 396–423. JSTOR 20488927. 
  2. ^ Bottema, O. (1944). Hoofdstukken uit de Elementaire Meetkunde. (translation by Reinie Erné as Topics in Elementary Geometry, Springer 2008, of the second extended edition published by Epsilon-Uitgaven 1987) 
  3. ^ Zacharias, M. (1942). “Der Caseysche Satz”. Jahresbericht der Deutschen Mathematiker-Vereinigung 52: 79–89. 
  4. ^ a b Johnson, Roger A. (1929). Modern Geometry. Houghton Mifflin, Boston (republished facsimile by Dover 1960, 2007 as Advanced Euclidean Geometry) 

外部リンク[編集]

  • ケージーの定理とその証明』 - 高校数学の美しい物語
  • Weisstein, Eric W. "Casey's theorem". mathworld.wolfram.com (英語).