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カリンカ

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カリンカ
楽曲
発祥1860年
作曲者イワン・ペトローヴィチ・ラリオーノフ
作詞者イワン・ペトローヴィチ・ラリオーノフ
言語ロシア語
Albert Janpolskiによるカリンカの歌唱(1910年)
калинаの代表的な種であるセイヨウカンボクの赤い実。
калинаの代表的な種であるセイヨウカンボクの赤い実。

カリンカ」(ロシア語: Калинка)は、ロシアの愛唱歌である。

概要

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白いカリンカの花。

題名の「カリンカ」とは、樹木のガマズミ属(ロシアで代表的な種はセイヨウカンボク[1]を意味するロシア語「カリーナ」(калина)の指小形である。いわば「ガマズミさん」「ガマズミちゃん」といった含意である。

赤く甘い実をつけるマリンカ(ヨーロッパキイチゴ)。その実はラズベリーという名でも知られ、ロシアの祖国と母なる大地を体現する。
赤く甘い実をつけるマリンカ。その実はラズベリーやキイチゴという名でも知られ、ロシアの祖国と母なる大地を体現する。

歌詞にカリンカとを踏んで登場するマリンカ(Малина)は、キイチゴラズベリー[注 1]のことを指し、カリンカもマリンカも赤いをつける。カリンカは、房状の白い花も赤い実も見た目が美しいが食用になる実は苦みがあり多少の毒性を持つ。一方マリンカの実は甘く、ロシアの自由な祖国や母なる大地の比喩表現として使われる。そのことから、諸説や異論もあるが「カリンカ=マリンカ」の表現は、美しさで人の目を欺きながらも束縛され不幸で厳しい一面を持ち、それでもやはり甘く幸せなロシアを体現する民俗的表現として使用される[3]

イワン・ペトローヴィチ・ラリオーノフ

長い間ロシア民謡と考えられてきたが、実際には、作曲家・作家・民謡研究者のイワン・ペトローヴィチ・ラリオーノフ1860年に作詞・作曲した作品である。この歌の初演は、ラリオーノフが音楽を書いたサラトフのアマチュア劇団の芝居で、舞台上で歌われたものである。

カリンカで踊るフォーク・ダンス

初演からまもなくして、ラリオーノフの友人で自ら設立した合唱団も擁していた、歌手のドミートリー・アレクサンドロヴィチ・アグレネフ=スラヴャンスキー(Агренев-Славянский, Дмитрий Александрович)の依頼に応じ、スラヴャンスキーのレパートリーにこの歌を加えることを許諾した。スラヴャンスキーの合唱団のレパートリーとなってから、「カリンカ」は人気を集め始めた。

日本語詞では、井上頼豊の訳詞や楽団カチューシャによる詞が広く知られている。

ロシア語の歌詞

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ロシア語詞 日本語訳

Калинка, калинка, калинка моя!
В саду ягода малинка, малинка моя!

Ах, под сосною, под зеленою,
Спать положите вы меня!
Ай-люли, люли, ай-люли, люли,
Спать положите вы меня.

Калинка, калинка, калинка моя!
В саду ягода малинка, малинка моя!

Ах, сосёнушка ты зелёная,
Не шуми же надо мной!
Ай-люли, люли, ай-люли, люли,
Не шуми же надо мной!

Калинка, калинка, калинка моя!
В саду ягода малинка, малинка моя!

Ах, красавица, душа-девица,
Полюби же ты меня!
Ай-люли, люли, ай-люли, люли,
Полюби же ты меня!

Калинка, калинка, калинка моя!
В саду ягода малинка, малинка моя!

ガマズミよ、ガマズミよ、私のガマズミよ!
庭には私のエゾイチゴが、エゾイチゴの実があるよ
 
ああ!マツの根方に、緑色をしたその下に
私を横たわらせ眠らせておくれ
アイ・リューリ、リューリ、アイ・リューリ、リューリ
私を横たわらせ眠らせておくれ

ガマズミよ、ガマズミよ、私のガマズミよ!
庭には私のエゾイチゴが、エゾイチゴの実があるよ

ああ!緑なす若いマツの木よ
私の上でざわめかないでおくれ
アイ・リューリ、リューリ、アイ・リューリ、リューリ
私の上でざわめかないでおくれ
 
ガマズミよ、ガマズミよ、私のガマズミよ!
庭には私のエゾイチゴが、エゾイチゴの実があるよ
 
ああ!美しい娘さんよ、若い娘心よ
どうか私を好きになっておくれ!
アイ・リューリ、リューリ、アイ・リューリ、リューリ
どうか私を好きになっておくれ!

ガマズミよ、ガマズミよ、私のガマズミよ!
庭には私のエゾイチゴが、エゾイチゴの実があるよ

楽曲の使用

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「カリンカ」の語の使用例

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ロシア料理レストランでは、ロシア国内でも外国でも、店の名前に好んで「カリンカ=マリンカ」 (Калинка - малинка)と名をつける。ロシアの民芸品を売る店でも、店名をこの名前にすることを好み、サンクトペテルブルクにはこの名称の写真スタジオが存在する。「カリンカ=マリンカ」の名称が、いかにも「伝統的ロシア」のイメージを喚起させるものになっているので、ロシア風に見せたいものに好んで施される名称である。

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本ではエゾイチゴ(Rubus idaeus L. var. aculeatissimus C. A. Meyer)と訳されることが多いが、これはヨーロッパキイチゴRubus idaus )の亜種。ロシアはヨーロッパキイチゴの世界最高生産量を誇る[2]

出典

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  1. ^ 狩野昊子『ロシア語の比喩・イメージ・連想・シンボル事典 ―植物―』 日ソ、2007年、180頁。
  2. ^ World Raspberry Production by Country” (英語). AtlasBig. 2025年5月6日閲覧。
  3. ^ КЛЮЧЕВЫЕ СЛОВА ФОЛЬКЛОРНОЙ КАРТИНЫ МИРА В ПОСЛОВИЦЕ-АНТИТЕЗЕ” (ロシア語). Казанский Государственный Университет. 2010年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月5日閲覧。

外部リンク

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