オーストラリアの森林火災

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NASAの可視域・赤外線放射観測計MODISによる2001年6月から2019年5月までの山火事の影響を受けた地域を赤く表示した図
2003年ビクトリア州東山岳部の山火事英語版の衛星写真と火事が起きている場所

オーストラリアの森林火災(英語:Bushfires in Australia)は、オーストラリアで発生する森林火災である。

人間や動物たちの多くを死傷させているが[1][2]、その一方オーストラリアの原生植物の一部は、繁殖の手段として火災を利用する形に進化している。例として、バンクシアという植物は、火災の刺激を受けて種をまくようになっている。このようにオーストラリア大陸で発生する火災は自然環境の一環として、生態系に受け入れられていた。また原住民のアボリジニも、降雨量が多い限られた地域で焼畑農業野焼きを行っていた。

しかし、西洋人の無計画な森林伐採・野焼き・火の管理と、燃えやすい植物の導入、そして気候変動により、森林火災が拡大するようになった。

英語での名前について[編集]

1851年2月6日に発生したヴィクトリア州の森林火災の様子。

山火事や森林火災はWildfireであるが、Bushfireとなっているのは、燃える場所が低木帯英語版という訳ではなく、オーストラリアやニュージーランドの方言で未開発地域(もしくは僻地)という意味の「The bush英語版」から来ている[要出典]。こういった地域は、農業林業に不向きで、アクセスも悪く大抵の場合は自然保護区のような形になっている。

原因について[編集]

直接的な原因について[編集]

自然現象
  • 落雷
  • 強風による送電線の倒壊
人為的
  • 送電線からのアーク放電
  • 放火(タバコ、マッチのポイ捨て含む)、野焼き、焼き畑、キャンプファイヤー
  • 放電などで金属をつなぐ溶接作業、金属を削るグラインダーのような火花が出る作業
動物の習性によるもの
オーストラリアに棲息するトビフエナキトビチャイロハヤブサ英語版らの鳥は、火が付いた枝を草原に落とし発火させる事で、火から逃げる餌を捕らえる習性を持つ[3]

間接的な要因について[編集]

乾燥した気候により燃えやすく、非常に強い風が吹きやすい事から燃えた後に拡大しやすい。とくに、ダイポールモード現象によって降雨量が低下し日照量が大きくなると、ちょっとした火でも発生しやすくなる[4]

原住民のアボリジニは決められた野焼きの管理を行っており、この地域を訪れた多くの冒険家はそれに言及してる。冒険家のジェームズ・クックは、その野焼きから「煙の大陸(This continent of smoke)」とも呼んでいた。生物学の専門家で環境保護活動を行っているメルボルン大学教授ティム・フラナリー英語版は、「西洋人が大陸を管理するようになり大火災の悲劇が起こるようになった」と述べている[5]。別の研究者による2001年の研究では、伝統的な野焼きのやり方を捨て、制限のない伐採と野焼きを行った事により、オーストラリアの多くの地域、特に乾季に大規模な山火事が発生しやすくなったと発表している[6]。2017年の研究では、大木を伐採し、低木しか残らなくなったことで大火事が起きやすくなったと発表された[7]

植生の変化
1942年から2014年に侵略型有害外来植物と認定されるまで、燃えやすいアフリカ原産のガンバグラス英語版が牧草として大量に植えられてきた[8][9]。ガンバグラスは繁殖力が高く、在来植物を駆逐しながら住宅街にまで進出し、火事の際に火の手を拡大させる。

対策について[編集]

火災後に内側から出るユーカリ胴ぶき英語版。火事に適応進化した一例で、他に栄養分を貯め込み火事後に芽吹く肥大化した根(リグノチューバ英語版)などの対策が行われている。

動植物の対策について[編集]

火災生態学英語版で、火災後の生態系について研究がなされている。

オーストラリアの植物は火災に備えた形に進化しており、その例の一部として、以下のものがある
  • 焦げた表皮の下から出てくる胴ぶき英語版
  • 栄養を貯め込み火災後に芽吹く肥大化した根リグノチューバ英語版
  • 種は火災後にまかれたり、火災後の最初の雨をトリガーに芽が出るようになっていたりする。
動物
哺乳類は逃げたり、川や水辺に避難し、小型の両生類などは湿った土や岩の下などに避難する。しかし、これらが出来なかった動物は、炎や煙に巻かれ死亡することになる。

政府による対策について[編集]

オーストラリア気象局は火災天気予報(fire weather forecasts)という情報を提供している。温度、相対湿度、風速、植物の乾燥度合から予測され、新聞やラジオ、テレビ、インターネットを通じて伝達される[10]。また、人工衛星無人航空機を使ったリアルタイム山火事監視システムも開発され、それらの情報も予測や研究に貢献している[11][12][13][14][15][16]

2009年、標準化された火災危険評価(Fire Danger Rating、略:FDR)がオーストラリアのすべての州で採用された。

Fire Danger Rating
Category Fire Danger Index
Catastrophic / Code Red Forest 100+ Grass 150+
Extreme Forest 75–100 Grass 100–150
Severe Forest 50–75 Grass 50–100
Very high 25–50
High 12–25
Low to moderate 0–12

現地での対策について[編集]

防火帯とよばれる空き地を作ることで、燃え広がる地域を限定させている[17]

消防士が火災に対する理解と対策をするために開発された25mの風洞施設Pyrotron英語版が建設された。

火事が起きそうな期間は、消防局によって Total Fire Ban(火気使用禁止令) が発令され、火の取り扱いを制限する。この期間にマッチやたばこのポイ捨て、野外調理等が通報されれば逮捕される[18][19]

住民の対策について[編集]

山火事が発生しやすい地域の住民には、火災の場所に関する情報や避難情報に関する教育や情報提供が行われている[20]

山火事が起きやすい地域での建築基準法AS3959英語版がある。

一覧[編集]

出典[編集]

  1. ^ Bushfires – across the nation”. Christian Today. 2020年1月5日閲覧。
  2. ^ “Australia fires: How do we know how many animals have died?”. BBC News. https://www.bbc.com/news/50986293 2020年1月5日閲覧。 
  3. ^ Australia bushfires: Which animals typically fare best and worst? BBC, 22 November 2019
  4. ^ 森林火災続くオーストラリア BBC気象予報士が要因解説作成日:2020年01月2日 BBC
  5. ^ "The Fire Book". Tangentyre Landcare. 2005. Archived from the original (PDF) on 27 February 2015.
  6. ^ "Historical role of fire" Ward, D.J., Lamont, B.B. & Burrows, C.L. (2001) Grasstrees reveal contrasting fire regimes in eucalypt forest before and after European settlement of southwestern Australia. Forest Ecology and Management 150: 323–329.
  7. ^ Wilson, Nicholas; Cary, Geoffrey J.; Gibbons, Philip (15 June 2018). “Relationships between mature trees and fire fuel hazard in Australian forest”. International Journal of Wildland Fire 27 (5): 353–362. doi:10.1071/WF17112. 
  8. ^ Gamba grass (Andropogon gayanus)”. A–Z listing of weeds: Photo guide to weeds. Queensland Department of Primary Industries. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  9. ^ Lesley Head, Jennifer Atchison. 2015. Governing invasive plants: Policy and practice in managing the Gamba grass (Andropogon gayanus) – Bushfire nexus in northern Australia. Land Use Policy 47: 225–234
  10. ^ New Warning System Explained”. Country Fire Authority. 2010年2月1日閲覧。
  11. ^ MyFireWatch brings better bushfire information to regional communities
  12. ^ MyFireWatch
  13. ^ Real-time bushfire monitoring satellite system to be developed by Geoscience Australia
  14. ^ Bushfire tracking with Sentinel Hotspots
  15. ^ Sentinel bushfire monitoring system webpage
  16. ^ Drones to assist firefighters in emergencies
  17. ^ オーストラリアの山火事、原因や傾向など 解説作成日:2013年10月23日 AFP通信
  18. ^ Total Fire Bans and ratingsオーストラリア消防局
  19. ^ Police in Australia accuse 24 of deliberately setting bushfires amid natural factors(CNN)
  20. ^ Driving in a bushfire” (2017年2月13日). 2017年2月20日閲覧。

関連項目[編集]

日本の森林火災対策法