ウルトラクルーザー (航空機)

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ウルトラクルーザー
Ultracruiser


Sun 'n Fu英語版 2004で着陸するウルトラクルーザー。アメリカ合衆国 フロリダ州レイクランド
Sun 'n Fu英語版 2004でタキシング中のウルトラクルーザー。 アメリカ合衆国 フロリダ州レイクランド

ウルトラクルーザー(Ultracruiser)(「ウルトラ・クルーザー」、"Ultra Cruiser"、"UltraCruiser"とも表記される)はMorry Hummelにより設計され、Hummel Aviation英語版で製造されているアメリカ製ホームビルト機である。本機は自作愛好家向けにキットまたは図面で提供される他、完成機としても提供される。[1][2]

設計及び開発[編集]

ウルトラクルーザーは、同じ設計者が開発したより重い"バード"英語版 から発展したもので、最大空虚重量254 lb (115 kg)までの機体を取り扱うアメリカ連邦航空規則英語版第103部 "Ultralight Vehicles"英語版の規定に適合するよう設計された。本機の標準的な空虚重量は249 lb (113 kg)である。[1][3][4]

ウルトラクルーザーは片持ち低翼単座の牽引式単発機である。開放型コクピットと尾輪式降着装置を備えるが、オプションで密閉型コクピット、前輪式降着装置も選択できる。[1]

本機はアルミニウム合金の板金から製作される。主翼は翼幅7.6 m (25 ft)、翼面積10.4 m2 (112 sq ft)で、翼型には Harry Ribblett GA30-618が採用されている。推奨されるエンジンの出力は28 - 45 hp (21 - 34 kW)で、使用される標準エンジンは37 hp (28 kW)の1/2 VW英語版[注釈 1]4ストロークエンジンである。提供されるキットからの製作時間は420時間と推定されている。[1][3]

日本における作例では、工作経験が十分であれば、素材(アルミニウム合金板材等)、エンジン、計器類の到着から完成までの製作日数は約90日、製作時間は約1,000時間と報告されている。[5]

運用史[編集]

2011年12月までに100機が完成し、飛行している。[1]

前述の通り、アメリカ連邦航空規則の"Ultralight Vehicles"に適合するように開発された機体であるが、日本における超軽量動力機の要件にも適合させることができるため、日本でも愛好家の手によって少なくとも2機(識別記号:JR1669[6]、JR1908[7] )が製作され、飛行した実績がある。[8]

派生型[編集]

ウルトラクルーザー
アメリカ連邦航空規則第103部に適合するベースモデル。37 hp (28 kW)の1/2 VWエンジン搭載。[1][2]
ウルトラクルーザー・プラス
より大柄で重いパイロット向けのモデルであり、アメリカ連邦航空規則では"Experimental"に該当する。60 hp (45 kW)のフォルクスワーゲン空冷エンジン英語版搭載。[2][9]

性能諸元 (ウルトラクルーザー)[編集]

出典: Kitplanes and Hummel Aviation[1][3]

諸元

  • 乗員: 1
  • 全長: 4.88 m (16 ft)
  • 全高:
  • 翼幅: 7.62 m(25 ft)
  • 翼面積: 10.41 m2 (112 ft2
  • 翼型: Harry Ribblett GA30-618
  • 空虚重量: 112.9 kg (249 lb)
  • 運用時重量: 226.8 kg (500 lb)
  • 動力: 1/2 VW 4ストローク空冷2気筒(自動車用エンジン転用)、27.6 kW (37 hp) × 1
  • 燃料搭載量: 19 L (5 U.S. gal)

性能


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脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ フォルクスワーゲン(VW)の空冷4気筒エンジンのエンジンブロックを半分に切断して、2気筒エンジンに改造したもの。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g Vandermeullen, Richard: 2012 Kit Aircraft Buyer's Guide, Kitplanes, Volume 28, Number 12, December 2011, page 56. Belvoir Publications. ISSN 0891-1851
  2. ^ a b c Tacke, Willi; Marino Boric; et al: World Directory of Light Aviation 2015-16, page 111. Flying Pages Europe SARL, 2015. ISSN 1368-485X
  3. ^ a b c Hummel Aviation (2007年). “The UltraCruiser”. 2012年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月14日閲覧。
  4. ^ “Misidentified Hummel”. Sport Aviation: 8. (March 2016). 
  5. ^ 藤田 2016, pp. 3, 52.
  6. ^ 藤田 2016, p. 39.
  7. ^ 藤田 2016, pp. 54, 56, 77.
  8. ^ 藤田 2016, pp. 6, 77.
  9. ^ Hummel Aviation (2007年). “The Ultra Cruiser Plus”. 2012年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月14日閲覧。

参考文献[編集]

  • 藤田恒治『ウルトラクルーザー自作飛行機で空を飛ぶ : 部品発注から作り方・申請・乗り方・整備の仕方まで』成山堂書店、東京、2016年1月。ISBN 9784425870318 

外部リンク[編集]