イモカタバミ

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イモカタバミ
Oxalis articulata.jpg
イモカタバミ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: カタバミ目 Oxalidales
: カタバミ科 Oxalidaceae
: カタバミ属 Oxalis[1]
: イモカタバミ O. articulata
学名
Oxalis articulata Savigny[2]
和名
イモカタバミ
英名
jointed woodsorrel [3]

Pink sorrel [4]

イモカタバミの花

フシネハナカタバミ(節根花片喰、学名 Oxalis articulata Savigny, 1797)[2]、が基本種で、独立種として扱われていたイモカタバミ(芋片喰、学名 Oxalis articulata Savigny. subsp. rubra (A. St.-Hil.) A.Lourteig, 1982[2][5])は、後にフシネハナカタバミの亜種とされた。カタバミ科カタバミ属の植物。現在は、フシネハナカタバミとイモカタバミは園芸上、まとめてイモカタバミと呼ばれている[2]

南アメリカのブラジル,ウルグアイ,パラグアイ,アルゼンチンなど広域の比較的標高の高い地域が原産である。国内では北海道から沖縄まで栽培されているが、台湾などでは腐敗しやすいとの報告もある。日本への渡来は、第二次世界大戦後に観賞用として導入されて以降、国内に広く帰化している。他にも、北アメリカ、オーストラリア、熱帯アジアなどに帰化している。導入当初は亜種のイモカタバミが来た、是は国内では殆ど不稔性であったが、後に導入されたフシネハナカタバミはたまに種子をつけ広がる。日本での分布拡大の主因は殆どが園芸利用からの逸出である。現在、イモカタバミと基本種のフシネハナカタバミは園芸上まとめてイモカタバミと呼ばれ、造園植物として流通している。

特徴[編集]

背丈は約30cm、地下に球状の塊茎があり、この塊茎が串団子の様にできて株が増えるところから基本種アルティクラタはフシネハナカタバミと和名がつけられた。地上には葉と花柄だけを伸ばす。葉は三出複葉、小葉はハート形、裏面の基部に黄色い腺点がある。

1970年代頃の関東地方では3月から翌年1月まで花が絶え間なく咲いているものであったが、温暖化の影響で、昨今の関東地方では夏の蒸し暑さで弱り、現在は、が主に4月から6月まで咲き、夏は弱るので半休眠し葉も枯死し地下部のみ残る。そして秋の9月からまた咲き始め、温暖な地域では12月まで咲いている。葉の間から伸び出した花柄は葉を越えて伸び、先端に数輪を散形花序につける。最盛期を迎えたイモカタバミは葉の枚数と花茎の本数が同数になる。花は紫桃色からピンク、淡いピンク、白など幅があり、花形も地域により多少異なる。昨今流通している個体群は種子をたまにつける。主な繁殖は連なっている団子状の塊茎を小分けにして浅く埋めておけば増えていく。帰化した自生個体はタネで緩やかに繁殖し、地下の球茎が株別れして大きなコロニーを形成する。

同属の種(しゅ)のムラサキカタバミ(Oxalis debilis Kunth subsp. corymbosa (DC.) O.Bolos et Vigo, 1990) に似ているが、比較すると、イモカタバミは、地下に球状の塊茎を持ち、非常にゆっくりと繁殖する。イモカタバミは、花の色が濃いピンクが基本で、花筒部の奥も同色であるが紫色の筋が入る。また花粉が黄色という特徴がある[6]。いっぽう、ムラサキカタバミには鱗茎があり、鱗茎の下部に牽引根と呼ばれる、鱗茎を地下部に引き戻す事が目的の為に発達した根を作る。今年出来た新球は親球の上に出来る為に開花後にはその鱗茎の下部と牽引根の狭間に無数の木子(微細な小球根)を作り牽引根で地下部に引き戻されるときに短期間で木子が散らばり雑草化し、非常に旺盛に繁殖する強害草である。ムラサキカタバミの花色にも変異はあるものの、その多くはイモカタバミよりも青みを帯びたピンク色で、花筒部の奥は白く抜けており、緑の筋が入る。また、花粉が白い。イモカタバミよりもムラサキカタバミの方が葉肉が薄く、葉に艶があるなどの点で慣れれば目視でも区別しやすい。


品種及び亜種[編集]

広義のイモカタバミとして扱われている植物は14項目ほどの学術記載があったが、最近の分類ではその多くは別種の Oxalis floribunda Lehm., 1826 に分類改変されたり、基本種に編入されたりしており整理された。そのため現在では以下の1種1亜種1品種のみに分類が確定している。(Missouri Botanical Garden データベース Tropicos 調べ)


フシネハナカタバミ(広義のイモカタバミかつ、基本種)

Oxalis articulata Savigny, 1797

シロバナイモカタバミ

Oxalis articulata Savigny forma crassipes (Urb.) Lourteig, 1982

イモカタバミ(狭義のイモカタバミ)

Oxalis articulata Savigny subsp. rubra (A.St.-Hil.) Lourteig, 1982 [5]


原種は上記の物が学術上残ったが、園芸個体が園芸品種名をつけられ2~3品種出回っていた。 また、Oxalis articulata や Oxalis articulata subsp. rubra 自体も変異個体が選出されておりそれぞれ園芸利用されている。



学名の変遷[編集]


フシネハナカタバミ(広義のイモカタバミかつ、基本種) (オキザリス・アルティクラタ)

Oxalis articulata Savigny, 1797 [1798]

This name is accepted. (この名前が受け入れられている)


Synonyms (異名) :

Oxalis articulata subsp. articulata

Oxalis rubra A. St.-Hil., 1825

Oxalis floribunda Lehm., 1826

Oxalis platensis A. St.-Hil. et Naudin, 1842

Acetosella articulata (Savigny) Kuntze, 1891

Acetosella platensis (A. St.-Hil. et Naudin) Kuntze, 1891

Acetosella rubra (A. St.-Hil.) Kuntze, 1891

Oxalis dumicola Arechav., 1900

Oxalis guttata Osten ex Arechav., 1900

Oxalis halophila Arechav., 1900

Oxalis rivalis Arechav., 1900

Oxalis articulata Savigny subsp. nodulosa Beauverd et Felipp., 1921

Oxalis articulata Savigny forma guttata (Osten ex Arechav.) Osten ex R. Knuth, 1930

Oxalis articulata Savigny forma halophila (Arechav.) Osten ex R. Knuth, 1930




イモカタバミ (狭義のイモカタバミ) (オキザリス・アルティクラタ 亜種 ルブラ)

Oxalis articulata Savigny subsp. rubra (A. St.-Hil.) Lourteig, 1982

This name is accepted. (この名前が受け入れられている)


Synonyms (異名) :

Oxalis platensis A. St.-Hil. et Naudin, 1842

Oxalis dumicola Arechav., 1900

Oxalis rivalis Arechav., 1900

Oxalis articulata Savigny subsp. nodulosa Beauverd et Felipp., 1921




シロバナイモカタバミ (オキザリス・アルティクラタ 品種 クラシッペス)

Oxalis articulata Savigny forma crassipes (Urb.) Lourteig, 1982

This name is accepted. (この名前が受け入れられている)


Synonyms (異名) :

Oxalis crassipes Urb., 1884

Oxalis floribunda Lehm. var. alba hort. ex Vilm., 1906

Oxalis rubra A. St.-Hil. var. alba D.M. Bates, 1977


出典 : The Plant List (Royal Botanic Gardens, Kew & Missouri Botanical Garden Data Base) 調べ (http://www.theplantlist.org/)


利害[編集]

元来は観賞用に栽培されていたものであるが、現在では徐々に畑地への侵入が見られる。草の丈が低く柔らかいため雑草の刈り取りから殆ど無視される対象でもある。葉を刈り取った場合、殆ど畑に鋤き込まれ肥料となることもある。また、葉が一面に茂るため、他の大型の雑草の生育を阻害する。植物体にシュウ酸を多く含み、土壌が酸性化する事が知られている。また、石垣に生えた場合は、葉が石垣内への雨水の侵入を防ぎ、石垣内の土の流失を防ぐ役目もするなど益草としての一面も持つ。

他に、葉を根元から抜き、葉柄の芯を取り出してそれの先端に葉がぶら下がった状態を作り、それを絡め合わせて引っ張り合い、どちらの葉がちぎれるかを競う子供の遊びがある。

関連項目[編集]


脚注[編集]

  1. ^ 『植物分類表』(初版第2刷(訂正入))アボック社、2010年4月、pp. xx-xxiv, 129-130頁。ISBN 978-4-900358-61-4 
  2. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠「イモカタバミ」『BG Plants 和名−学名インデックス(YList)』、2003年-(2015年5月9日閲覧)
  3. ^ Oxalis articulata Savigny”. Integrated Taxonomic Information System. 2013年6月5日閲覧。
  4. ^ Oxalis articulata”. Encyclopedia of Life. 2015年5月9日閲覧。
  5. ^ a b the Royal Botanic Gardens, Kew and Missouri Botanical GardenOxalis articulata『The Plant List』(2016年3月28日閲覧)
  6. ^ 下村孝「緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る : イモカタバミ(Oxalis articulata Savigny)」『日本緑化工学会誌』第29巻第4号、日本緑化工学会、2004年5月、521頁、ISSN 09167439NAID 110002912255 

参考文献[編集]

  • 林弥栄監修、平野隆久写真 『野に咲く花』 山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、1989年、ISBN 4-635-07001-8。(ムラサキカタバミの項を参考)

外部リンク[編集]