黄熱
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黄熱(おうねつ、yellow fever)は、ネッタイシマカ (Aedes aegypti) などのカ(蚊)によって媒介されるフラビウイルス科に属する黄熱ウイルス (yellow fever virus) を病原体とする感染症。感染症法における四類感染症。黄熱病と同義。発熱を伴い、重症患者に黄疸が見られることから命名された。
概要
熱帯アフリカと中南米の風土病である。黒色嘔吐を起こすことから通称を「黒吐病」という。日常生活におけるヒトからヒトへの直接感染はない。
潜伏期間は3~6日で、突然の発熱、頭痛、背部痛、虚脱、悪心・嘔吐で発症する。発症後3~4日で症状が軽快し、そのまま回復することもある。しかし、重症例では、数時間~2日後に再燃し、発熱、腎障害、鼻や歯根からの出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血、黄疸などがみられる。
特効薬は無いが、1回接種の生ワクチン (17D) によって予防可能。流行地域や流行可能地域では入国に際して公的機関発行による国際予防接種証明書(イエローカード)を求められることがある。イエローカードが有効なのは接種10日後から10年間であり、再びイエローカードを取得するには再接種しなければならないが、免疫自体は再接種せずとも健康者においては終生持続するのではないかとする見方がある。日本ではイエローカードの発行権限の関係から各地の指定された検疫所でのみ予防接種を受けられる。長年、生ワクチンには珍しく重大な副作用はないとされてきたが、近年死亡例を含む重篤な副作用の例があることが報告されている。しかし世界保健機関 (WHO) や流行国当局などは流行地においてはリスクを鑑みても接種のメリットが上回るとして当該地域における接種キャンペーンを継続している。
研究
キューバの医師カルロス・フィンレーが蚊によるウィルスの媒介と伝染を提唱し、アメリカ軍の軍医だったウォルター・リードがパナマ運河建設に際し蚊の駆除を中心とした防疫対策を行い効果を挙げたことから、フィンレーの説の正しさが証明された。更に、野口英世によって黄熱の研究が手がけられるものの、その中途で感染し死亡。その後、南アフリカ出身のアメリカの微生物学者マックス・タイラー(Max Theiler、サイラーとも)が野口の説を批判し、黄熱ワクチンを開発。この功績によりタイラーは、1951年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
関連項目
- アルボウイルス
- ワイル病:黄熱によく似た症状を呈する。このため、野口英世が南米での発生時に黄熱と誤認している。
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
- 検疫法
- World Community Grid: 新薬開発の為の分散コンピューティング
- 黄熱で死んだ有名人
外部リンク
- 厚生労働省検疫所 黄熱について
- 国立感染症研究所 感染症の話 黄熱
- 国立感染症研究所 ウイルス第一部第2室
- 黄熱 メルクマニュアル家庭版