電磁式カタパルト
電磁式カタパルト(でんじしきカタパルト、 Electromagnetic Aircraft Launch System、EMALS イーマルス)とは、アメリカ海軍とイギリス海軍で2011年現在開発中のリニアモーターによって航空母艦から固定翼機を発射するシステムである。「電磁カタパルト」、「電磁力航空機発射システム」とも呼ばれる。従来用いられてきた蒸気カタパルトを更新するものとして開発が進められている。
利点と欠点
電磁式カタパルトの利点と欠点
- 利点
- 航空機に与える加速度を適切にコントロール出来るので無理な加重を機体にかけない
- 蒸気式に比べて滑走距離を短く出来る可能性がある
- 比較的軽い
- コンパクト
- メンテナンスが簡単
- 蒸気発生装置(ボイラー)、蒸気配管がいらない
- 効率性が高い、長寿命
- 欠点
- 電源が故障すれば使用できない
- 消費する大電力に応じた発電設備が必要
従来型蒸気カタパルトの利点と欠点
- 利点
- 成熟した技術なので技術的・工学的な確実性がある
- 原子力空母においては原子炉から得られる蒸気を流用できる
- 欠点
- 加速度の微調整が効かず、航空機の機体に強い加速加重を与える
- 重い
- 蒸気配管をはじめ艦内各所の容積を必要とする
- 長いシリンダーやピストンのメンテナンスに手間がかかる
- ディーゼルエンジンやガスタービンエンジンを主機として採用した空母では、カタパルトの蒸気を作る装置(ボイラー)が別途必要になる。
その他
この技術を含めた多くの技術が、大手防衛産業企業 L-3 Communications の子会社 Power Paragon のエンジニアで中国系アメリカ人のチ・マクによって盗まれて中国に持ち出されたとして起訴され2007年に有罪判決を受けた( Level 3 Communications とは全く別の会社)[1]。
イギリス海軍が2012年就役を計画中のクイーン・エリザベス級航空母艦(HMS Queen Elizabeth、 Carrier Vessel Future programme、CVF計画)での採用を検討している[2]。しかし搭載予定機だったF-35Bの開発遅れのため搭載機がF-35Cに変更となったことで電磁式カタパルトの再設計も必要となり、1番艦「クイーン・エリザベス」にはカタパルト開発が間に合わず、2番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」にのみ搭載される予定とされた。
アメリカ海軍のニミッツ級航空母艦(原子力空母)の最後の第10番艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」(USS George H. W. Bush、CVN-77)の計画当初では電磁式カタパルトを採用するつもりであったが、開発が間に合わないため従来通りのスチーム式カタパルトを搭載。ジェラルド・R・フォード級航空母艦から電磁式カタパルトが採用される予定である。
出典
関連項目
参考文献
- 世界の空母 坂本明 文林堂 ISBN4-89319-116-0
外部リンク
- Electromagnetic Aircraft Launch System - EMALS GlobalSecurity.org