電波系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。122.29.24.173 (会話) による 2012年5月8日 (火) 22:35個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要: typo)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

電波系(でんぱけい)とは、妄想や妄想癖のある人や、他者とのコミュニケーションをとろうとしない人を指す言葉イメージとしては前者の方が強い。

概要

元々の意味は「頭の中に何者かからの思考指示妨害電波で届く」と訴える人のことを指していた(こうした「幻聴」は、かつて電波が一般的でなかった時代は「動物」や「」によるものともされ、「キツネ憑き」などと呼ばれていた)が、他の意味での用途や別の見解が入って変質してしまった部分も少なくない。

サブカルチャーオタク系のメディアで用いられることの多い表現である。他に、「電波」「デンパ」「デムパ」「毒電波」などとも表記、表現する。

恐らく現在の概念的な「電波」は、1981年深川通り魔殺人事件の犯人が自らの行動を「電波が命令した」と証言した事で巷間に流布したものと思われる。このような妄想は電波体験と呼ばれ、薬物中毒統合失調症患者によくみられる症状である。また、1980年代後半より、電磁波の人体に対する影響が問題視され始め、特に頭部への影響が示唆された。そのため、電波を身体に受けると脳がおかしくなるといった短絡的な見方も発生した。このことも「電波」という言葉を定着させた一因である。

(電波の感受性が高い人がいる。脳や目にある程度の悪影響がある為、携帯電話キャリアが機種別の電波の比吸収率 (SAR値) を公表している。脳腫瘍の原因になるのでヘアドライヤーの取扱説明書は約20cm以内に頭を近づけて使わないよう指示している。アメリカ人の常識で妊婦が電子レンジの前に立ってはいけない。IH調理器を許可してない国がある。高圧送電線下の土地の価格が安く、電力会社が家屋の電磁シールド工事費用を負担することがある。)

1990年代前半より「電波」という言葉は、サブカル界に影響力のある歌手やライターの手により広がった[1]。「電波」の今日の知名度においては恐らく後述の根本と大槻ケンヂの一連の楽曲・小説の影響が大きいとみてよいだろう。大槻はインディーズの時期から「電波」の概念をバンド筋肉少女帯の歌詞やタイトルに使用しており、メジャー以降も『妄想の男』や『電波BOOGIE』などにそのままの用法で「電波」が登場する。また、大槻の歌詞にはやや恣意的に言って狂気・不条理に「操られる」人間のモチーフが多く、ある種のシンボリズムとしての「アンテナ」、つまり《「電波」の発信源》も『釈迦』や『僕の宗教へようこそ』などの楽曲に登場する。のみならず、1992年発表の小説『新興宗教オモイデ教』においては、精神異常を誘発する毒電波・「メグマ波」というアイデアを中心に据え、その電波を用いて敵対勢力を掃討する宗教団体の興亡と共に人を恣意的に狂気に陥れる「電波」という存在を描いていた。

同じ頃、『サルでも描けるまんが教室』にも作中で相原コージ竹熊健太郎が『とんち番長』連載中にノイローゼ状態から言霊を受けて「白電波、黒電波」をストーリーに持ち込むシーンを描いている。

とりわけ、漫画家根本敬は「電波系」という用語を案出し、その概念の普及に大きな役割を果たしている。1990年代前半より、こうした電波を受けて行動する奇妙な人々のレポートを雑誌等に執筆、また電波が自らの頭の中に響くという村崎百郎と対談や共同執筆を行い、そうした電波の体系的考証に着手したことで「電波系」という言葉は読者に強い印象を与えることになった。また根本は「ウ~ンと煎じ詰めれば電波も精子も同じようなものなのかもしれない」と自著で述べている。

アダルトゲームである『』が狂気を誘発する源として「毒電波」と表現したことはこれらの影響、特に大槻ケンヂの影響を受けたものであるが、ヒロインの「電波届いた?」という印象的なセリフと共に著名となり、「電波系」をさらに広めることになった。その後、主にオタク系・サブカル系の妄想に対しても用いられるようになった。

類義語として「きちがい」という言葉があるが、差別用語として定着し、放送禁止用語に指定されるなど規制が多い。そのため、代わりに「電波」という表現を用いる事もある。差別的意味合いも持ち、侮蔑したり、ふざけて使われることもある。

(自分あるいは周囲が)「電波に操られている」という主張は、古くは明治大正期に溯ることができる。初期においては、「何らかの機械から発せられた電気で操られている」というものであったが、昭和期には「テレビ塔・UFOから発せられる電波」や「ラジオからの超音波」に操られている、といったように“発生源”が変化しており、情報通信機器の発展・普及と歩みを同じくしている様子が興味深い。近年では、「頭にマイクロチップ・RFIDを埋め込まれてコントロールされている」、「無線で思考を操作されている」、「インターネット(コンピュータネットワーク)を通じて見張られている」といった主張も見られるようになり、今後も「(何らかの情報通信機器・技術)から身体・精神に悪影響を及ぼす“電波”が発信されている」という認識あるいは妄想は、形を変えながら存続するものと思われる。

このような電波妄想は慢性的な脳疾患Schizophreniaと知られておりアメリカ人の1%が罹病している。彼等の脳画像を正常な人と比較すると脳の活動部位が異なる。治療方法がないが対処療法がある。

メディア

関連書籍

ゲーム

関連項目

脚注

  1. ^ なお、表現における先駆的なものとして、渡辺和博1980年に「毒電波」(「ガロ」掲載)という、「電波の攻撃に苦しむ人」が登場する漫画作品を描いている。このことは根本も『電波系』で認めている。