電力系統
この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2010年11月) |
電力系統(でんりょくけいとう)とは、電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムである。
日本では、10の電力会社がそれぞれ電力系統をもち、沖縄電力を除いた9電力会社の電力系統は近隣のいずれかの電力系統と接続されている。日本の商用電力のほとんどはこの巨大な電力系統に接続されている。50Hzと60Hzをつなぐ東京電力と中部電力接続など、いくつかの接続は直流を介しており、相互影響が少ないが、ある電力系統が不安定になることは、接続された他の電力系統に影響を与えうる。大陸では国境を越えた電力系統の接続も行われている。
以下では、日本の電力系統について説明する。 発電所で発電された電力は、3相3線式で送電ロスを減らすため、基幹的な長距離送電の区間は出来るだけ高電圧で送電され、消費地に近い場所で何段かに分けて電圧が降圧される。柱上変圧器以降は単相2線式や単相3線式での配電も行なわれる[1]。
系統
送電系統
- 発電所:電力を発電し、各々に付随する送電設備で超超高電圧(UHV、500kV)や超高圧(EHV、220-275kV)に昇圧されて送電網に送出される。
- 超超高圧(超高圧)送電線:超超高圧(UHV、500kV)や超高圧(EHV、220-275kV)の電力を送電する。
- 超高圧変電所:発電所からの電力を特別高圧(154-187kV)に変換する。
- 特別高圧送電線:特別高圧(154-187kV)の電力を送電する。
- 一次変電所:超高圧送電線からの電力を特別高圧(110-66kV)に変換する。
- 特別高圧送電線:特別高圧の電力を送電する。
- 二次変電所(中間変電所):特別高圧送電線からの電力を特別高圧(33-22kV)に変換する。
- 22kV級特別高圧送電線:特別高圧電力(22kV)を送電する[1]。
配電系統
- 配電用変電所:通常は154kVや66kV(50Hz側各社の例)、まれに20kV級送電線からの電力を高圧(6.6~3.3kV)に変換する。
- 配電線:高圧電力を配電する。
- 柱上変圧器:高圧電力を低圧(200~100V)に変換する。
- 引込線:各需要家に低圧電力を配電する。
構成要素
送電される電力の多くは空中に渡された電線で輸送する「架空送電」や「架空配電」と呼ばれる架空送配電方式が採用されており、都市部や景観保全が特に必要な場所では例外的に「地中送電」と呼ばれる地下の送配電路が設けられることがある。
架空送配電
主に電線と塔によって構成される架空送配電方式の構成要素を以下に示す。
- 電線
- 電線は、送電用の中心の鋼鉄線とそれを取り巻くアルミ線を束ねた「鋼心アルミより線」と、配電用の「絶縁被覆電線」がある。
- 架空地線
- 被雷対策として接地され、接地電位に保たれている1本または2本の「架空地線」が、最も高い位置で空中に配線されている。
- 碍子
- 主に磁器で作られた絶縁物である碍子(がいし、Insulator)によって、電線の高電位の電流が塔に漏れ流れる事を防いでいる。碍子には「沿面放電」発生時にその経路を長くなるようにすることで、その発生を抑制するための多数のヒダが設けられている。
- 塔・柱
- 鉄、コンクリート、木材で出来た塔や柱によって電線類を空中に保持している。鉄塔では、四角鉄塔、方形鉄塔、えぼし型鉄塔、門型鉄塔(ガントリ型鉄塔)などがある。四角鉄塔では3相3線式の回線を2組(2回線戦)か4組(4回線)支持するのに適しており、えぼし型鉄塔は3相3線式の1回線を支持するのに適している[1]。
地中送配電
地中送配電方式の構成要素を以下に示す。
- 電線
- 電線はOFケーブル(Oil filled cable)やCVケーブル(Crosslinked polyethylene vinyl sheath cable)が使用される。OFケーブルは常時加圧される油の保守の手間が掛かるために、近年ではCVケーブルの使用が好まれる。
- 管路
- 直接埋設方式や管路式、共同溝方式がある[1]。
管理
需要家に対し、適切な電圧・周波数で電力を供給するためには、電力系統システムの適切な運用を行うことが必要である。
電力の蓄積は難しいため、需給調整を実施し、需要に合わせた発電を行い、送電系統や変電所の過負荷が発生しないように需要家に届けなければならない。
この需給・系統調整の他、悪天候時の落雷等に備えた潮流の調整、降水・渇水による水力発電所の状況、突然発生する故障等の影響を最小化するための構成や、それに対応した早期の復旧や代替の確保など、常に変動する状況に応じた即応性と柔軟性が求められるため、電力会社では24時間体制で複数の人間が専門で常駐し、常に監視して対応できる体制を確保している。
周波数
東地域を担当する北海道電力、東北電力、東京電力は50Hzの周波数を、中西地域を担当する北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力では60Hzの周波数の交流電力を使用している。沖縄を除く、それぞれ同一の周波数の電力を使う電力会社では互いの電力網を接続しあって相互に供給しあうことで電力供給の安定化を図っており、周波数の異なる電力網同士も変換所を設けて一度、直流へ変換したあとで供給先の交流周波数に変換することで、相互に供給し合えるようにしている。また、同じ周波数の交流電力であっても同期がずれていれば接続出来ないために、やはり一度、直流に変換してから交流を作る方式のBTB(Back to back)と呼ばれる位相の変換所も設けられている。津軽海峡と紀州灘を越えて相互に接続された送電区間では直流のままで送電されている。直流送電では電圧変換が不便であるが、交流送電のように電圧の実効値と最大値が√2倍だけの差が生じないので、耐圧設計が幾分楽になる利点がある[1]。
連係系統
「連係系統」とは系統制御区域を越えて送電を行う電力系統であり、日本では各地域の電力会社間の送電設備がこれに相当する[2]。日本は長い島国をいくつかの地域に分割して各電力会社がそれぞれ電力供給を行っているが、特に太平洋側に電力の大消費地が集中していることもあり、隣り合う電力会社での互いの接続点は1箇所が多く、連係系統は概ね串形に結ばれている。欧州と北米では多くの電力事業者が周囲の複数の事業者と相互接続している場合が一般的であり、連係系統は概ねメッシュ状になっている[3]。
脚注・出典
- ^ a b c d e 八坂保能著 『電気エネルギー工学』 森北出版 2008年05月8日第1版第1刷発行 ISBN 9784627742918
- ^ 連系線に係わる利用・混雑処理方法について~欧州の状況~ - IEEJ:2005年4月号
- ^ 電力系統の構成及び運用について - 経済産業省「電力系統の構成及び運用に関する研究会」平成19年4月