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認定校制度

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認定校制度(にんていこうせいど、educational accreditation)は、教育機関の質を保証(認定、アクレディテーション)する制度である。通常は高等教育機関を対象とし、認定を受けた教育機関のみが学位を発行することができる。

概要

日本をはじめとする多くの国では政府(教育行政担当の中央省庁、日本の場合は文部科学省)が直接大学を認定する制度を採用しているが、米国等では、政府が民間かつ非営利の認定団体を認定し、認定団体が大学を認定するという制度が採用されている。大学などの高等教育機関の設立は、州政府に認可申請を行うことにより、州政府の設立「認可」を受けなければならない。

この認可の更新は報告書を当該校がまとめ、その審査が州政府、もしくはその外郭団体により行われる。たいていの州においては3年毎に行われている。ただし、これらの設立が「認定」されただけの学校の履修単位は、他大学との単位の互換性をaccreditation「認定」を受けた大学からは通常認められていない。また、「認可」のみの大学には留学生ビサが認められておらず、連邦政府が行っている学生ローン(日本の奨学金とは異なり、政府保証による学生のためのローン、大多数の学生が実際上利用している)も与えられることはない。

他大学との単位の互換性を得、学生ローンが得られ、学生ビザ取得手続きを行うことができるようになるには、認定協会のaccreditation「認定」が必要である。「認定協会」は、連邦政府に認定協会として認定される必要がある。認定協会の役割は、相互に向上するための助言にある。このため、類似もしくはまったく類似していない、また利害関係のない、または少ない複数の他大学からの現地視察団が構成され、対象教育機関の視察を行う。その後、提出されている対象教育機関による報告書をもとに良い点、改良すべき点の助言をまとめた書類が作成され、対象教育機関にとどけられる。

認定協会による委員会が行われ、対象教育機関代表者に対する質疑応答があり、その後、認定協会から、認定するか否かの通知が届けられる。重大な欠点がある場合には、その改善を行わないと「認定」が取り消されることがある。医学部など、かなり特殊分野のものは、一般の認定協会とは異なるので、全米的な専門の認定機関がある。地域的な認定協会とは、その認定協会に加盟している教育機関がその地域に偏っているということである。したがって、全国的な専門職種的認定機関と、地域的な一般的内容の認定機関とが存在している。

米国の認定校制度

米国には、全国を6地域に分けて設けられた地域アクレディテーション機関regional accreditor)と、52の全国アクレディテーション機関national accreditor)とが存在する。

地域と全国という用語から受ける印象とは反対に、このうち、地域機関は全国機関を上回る厳格な基準で認定を行っており、ハーバード大学カリフォルニア大学ロサンゼルス校を始めとする有名大学は地域アクレディテーション機関による認定を受けている。

一方、全国的なアクレディテーション機関としては、遠隔教育訓練評議会(Distance Education and Training Council)やカイロプラクティック教育評議会Council on Chiropractic Education)等があるが、これらの機関は主として職業教育を行う学校を対象としており、これらの機関の認定を受けた学校で取得した単位や学位は、地域アクレディテーション機関による認定を受けた大学では認められないことがある。

非認定大学

米国などには非認定の大学が多く存在していることが従来から知られている。非認定の大学の実態は様々であり、当初は非認定だったところが正式に認定される事例もあるが、ディプロマミルあるいはディグリーミル (degree mill) と呼ばれる、「学位」を販売することを目的とする組織も多数存在する。政府公認の認定団体に認可されていない大学を卒業しても、博士修士学士といった学位は公に通用しないことが多い。従ってこれら大学が授与する学位は、学会の入会要件などにはまず用いることができないことはもちろん、オレゴン州ミシガン州、テキサス州、メイン州などでは、非認定大学の学位を公的な場で用いることは原則として禁じられている。

また、認定校とされる組織においても、実際は公に認められていない認定団体(実在・架空含む)が認定しているケースも存在する。したがって、ディプロマミルによる被害を回避するためには、その組織の認定団体をあらかじめ調査することが重要であるといえよう。カリフォルニア州には独自の認可制度があり、認定校と同様の権威があると主張していたが、連邦政府はこれを認めず、またオレゴン州はカリフォルニア州の制度のうち有効なものは一部のみとしている。その他、ディプロマミル同然のところを合法的に存在可能にしている様々な例外規定が各国にあるので、注意を要する。

職務上学位が必要だったアメリカ国務省職員が、気づかずにディプロマミルに学位認定を申請してしまい、取得した“学位”を認定却下される事態になった事もあるという[1]

州政府の高等教育委員会が承認した大学であり、かつ認定団体からのアクレデーションを得ている大学で、「ディプロマミル」としてではなく正規の課程に則って課業を積み、指導教授によって指導された博士論文を執筆して博士号を取得したものの、認定した団体が政府公認でない場合は非認定大学博士号となる。インターネットが普及する以前は、非認定団体の情報を収集することは困難であった。そのため、非認定校であることを気づかずに博士号を取得したものと信じて使用する大学教員も存在する。近年になり、こういった事態に気が付いた大学教員は、既にホームページや履歴書(研究開発支援総合ディレクトリ「ReaD」)から博士号を削除している。博士号の名の基に、既に出版された書籍などの回収は不可能なため、在庫の書籍については、廃棄をする手続きを進めている大学教員もいる。

イギリスのウェールズ大学が米国インディアナ州のトリニティ神学大学と提携して学位を出していたが、同大学が非認定大学であるため米国内で問題となり、両大学は提携を解消した[2]。ウェールズ大学は経営難もあって海外の多くの教育機関から認証料を得て学位を出すビジネスを行っている。日本でも、大学院設置基準外の企業が運営する「英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA(日本語)プログラム」「英国国立ウェールズ大学大学院環境プログラム」を認証しており、抜け道的な学位ビジネスと見る向きもある。

日本における非認定学位の使用

日本においても大学教員による非認定学位の使用が問題となっており、2007年7月から文部科学省が実態調査を行った結果、約50名の大学教員が採用や昇任のための審査書類に非認定校の学位を記載していたことが判明している[3][4]。中には私立大学の学長が非認定学位を使用していた例もあり[5]、非認定学位の使用が明らかになった後に採用が取り消されたり、辞任に追い込まれる例も出てきている[6][7]

脚注

関連項目

参考文献

  • 前田早苗 『アメリカの大学基準成立史研究―「アクレディテーション」の原点と展開』 ISBN 4887134800
  • D・W・スチュワート & H・A・スピル 『学歴産業(ディプロマ・ミル)―学位の信用をいかに守るか』 ISBN 447209181X

外部リンク