船上通信局
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船上通信局(せんじょうつうしんきょく)とは、無線局の種別の一つである。
概要
限定された区域内の船舶間又は船舶と陸上の間で使用するもので、簡易な船舶局あるいは異なる事業者間で通信できる携帯局という性格のものである。 移動局の一種でもある。
定義
総務省令電波法施行規則(以下、「施行規則」と略す。)第4条第1項第10号の2に「船上通信設備のみを使用して無線通信業務を行う移動する無線局」と定義している。 この「船上通信設備」とは、第2条第40号の3に、
次の(1)、(2)、(3)又は(4)に掲げる通信のみを行うための単一通信路の無線設備であつて、第13条の3の3に規定する電波の型式、周波数及び空中線電力の電波を使用するものをいう。
- (1) 操船、荷役その他の船舶の運航上必要な作業のための通信で当該船舶内において行われるもの
- (2) 救助又は救助訓練のための通信で船舶とその生存艇又は救命浮機との間において行われるもの
- (3) 操船援助のための通信で引き船と引かれる船舶又は押し船と押される船舶との間において行われるもの
- (4) 船舶を接岸させ又は係留させるための通信で船舶相互間又は船舶とさん橋若しくは埠頭との間において行われるもの
と定義している。
促音の表記は原文ママ
実際
定義の船上通信設備の内、船上通信局として免許されるのは(3)又は(4)である。 (1)又は(2)のものは他の無線設備とあわせて船舶局として免許されるからである。 (3)又(4)は水先人やタグボートであり、免許人となるのは主として水先人会や曳航業者である。
用途
局数の推移に見るとおり、港湾用が多数を占めるがこれは水先人会や曳航業者のことである。 港湾用以外のほとんどは製造販売用であるがこれは造船業者のことである。
操作
施行規則第33条に無線従事者を要しない「簡易な操作」として、第3号(2)に船上通信局が「無線設備の操作で当該無線局の無線従事者の管理の下に行うもの」として定められている。 すなわち、その無線機を管理する無線従事者がいれば無資格で使用できる。
- 自衛隊の艦船に搭載する又は携帯する無線機については自衛隊法第112条第1項により電波法の無線従事者に関する規定が除外される。
免許
船上通信設備は原則として無線機器型式検定規則(以下、検定規則と略す。)による型式検定機器または特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則(以下、証明規則と略す。)による適合表示無線設備でなければならない。 (これ以外の機器による免許申請を否定するものではないが、簡易な免許手続が適用されないので煩瑣なものになる。)
種別コードはMB。免許の有効期間は5年。但し、当初に限り有効期限は4年をこえて5年以内の5月31日 [1] となる。 また、無線局免許証票の備付けも義務付けられている。
- 自衛隊の艦船に搭載する又は携帯する無線機については自衛隊法第112条第1項により免許を要しない。
移動範囲
免許人が事業を行う区域に限られる。 すなわち、曳航業者や水先人や造船業者が業務を行う港湾に限られるが、海上ばかりでなく定義(4)に見るとおり、桟橋や埠頭といった陸上の港湾施設でも使用できる。
通信の相手方
原則として免許人内に限定される携帯局と異なり、業務に必要な限り他の事業者の船上通信設備とも通信することができる。
電波型式、周波数、空中線電力および使用区別
定義にある第13条の3の3の船上通信局の電波型式、周波数、空中線電力と無線局運用規則に基づく告示 [2] による使用区別は次の表のとおりである。
電波型式及び周波数 | 空中線電力 | 使用区別 |
---|---|---|
F3E電波156.75MHz(1)、156.85MHz
|
1W以下 | (1)は、日本沿岸海域において使用する場合は、水先業務及び引き船の業務に使用する無線局に混信を与えない場合に限る。 (2)は、日本沿岸海域で水先業務若しくは引き船の業務又はこれらの業務に関連する船舶の接岸若しくは係留の業務の通信を行う場合に限る。 |
F3E電波450MHzを超え470MHz以下の周波数で別に告示[3]するもの 457.525MHz(1)、457.55MHz、457.575MHz |
2W以下 |
表示
型式検定機器には検定マークの、適合表示無線設備には技適マークの表示が義務付けられている。 また、船上通信設備の機器を表す記号は、
- 型式検定機器は、検定番号および機器の型式名の1字目(検定規則別表第8号)
- 適合表示無線設備は、技術基準適合証明番号又は工事設計認証番号の英字の1-2字目(証明規則様式7)
にあり、種別毎に次のとおりである。
種別 | 記号 | 備考 |
---|---|---|
型式検定機器 | F | 他のFM送受信機器と共用 1999年(平成11年)12月31日まで |
適合表示無線設備 | QY | 他のFM送受信機器と共用 1999年(平成11年)平成11年10月13日以降 |
但し、2013年(平成25年)4月以降の工事設計認証番号(4字目がハイフン(-))に記号表示は無い。
沿革
1975年(昭和50年) 施行規則に定義され、免許の有効期間は5年とされた。 [4]
- 以後、5年毎の一定の日に満了するように免許された。
1992年(平成4年) 無線業務日誌の備付けが不要とされた。 [5]
1993年(平成5年) 毎年一定の告示[6]で定める日が免許の有効期限となった。 [7]
- 以後、免許の有効期限は免許の日から4年を超えて5年以内の5月31日までとなる。
年度 | 平成13年度末 | 平成14年度末 | 平成15年度末 | 平成16年度末 | 平成17年度末 | 平成18年度末 | 平成19年度末 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 3,234 | 3,312 | 3,388 | 3,427 | 3,389 | 3,344 | 3,497 |
港湾用 | 3,139 | 3,306 | 3,384 | 3,423 | 3,354 | 3,231 | 3,384 |
年度 | 平成20年度末 | 平成21年度末 | 平成22年度末 | 平成23年度末 | 平成24年度末 | 平成25年度末 | 平成26年度末 |
総数 | 3,669 | 3,911 | 3,852 | 3,819 | 3,916 | 3,920 | 3,970 |
港湾用 | 3,556 | 3,793 | 3,734 | 3,701 | 3,798 | 3,802 | 3,852 |
総務省情報通信統計データベース 各年度の用途・局種別無線局数による。 |
脚注
- ^ 平成19年総務省告示第429号 電波法施行規則第8条第1項の規定に基づく陸上移動業務の無線局等について同時に有効期間が満了するよう総務大臣が毎年一の別に告示で定める日 第1号に6月1日とあることによる。(総務省電波利用ホームページ 総務省電波関係法令集)
- ^ 昭和59年郵政省告示第964号 無線局運用規則第56条の規定に基づく海上移動業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別(同上)
- ^ 昭和52年郵政省告示第421号 電波法施行規則第13条の3の3の規定による船上通信局又は船舶局が船上通信設備を使用して通信を行う場合のF3E電波450MHzを超え470MHz以下の周波数(同上)
- ^ 昭和50年郵政省令第19号による施行規則改正
- ^ 平成4年郵政省告示第737号による昭和35年郵政省告示第1017号改正
- ^ 平成5年郵政省告示第601号(後に平成19年総務省告示第429号に改正)
- ^ 平成5年郵政省令第61号による施行規則改正