神近市子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Quark Logo (会話 | 投稿記録) による 2016年3月30日 (水) 08:43個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

神近 市子
かみちか いちこ
神近市子(1956年刊の『現代女傑論』より)
生年月日 1888年6月6日
出生地 長崎県
没年月日 (1981-08-01) 1981年8月1日(93歳没)
出身校 女子英学塾
(現・津田塾大学)
前職 青森県立女学校教師
東京日日新聞記者
評論家
所属政党 左派社会党(1953-55)→
日本社会党(1955-)
称号 勲二等瑞宝章(1970年)

選挙区 東京都第5区
当選回数 5回
在任期間 1953年4月20日 - 1960年10月24日
1963年11月22日 - 1969年12月2日
テンプレートを表示

神近 市子(かみちか いちこ、本名:神近イチ、1888年6月6日 - 1981年8月1日)は、日本のジャーナリスト婦人運動家、作家、翻訳家、評論家である。ペンネーム榊 纓(さかき おう/えい)。戦後は一時期、政治家に転身し、左派社会党および再統一後の日本社会党から出馬して衆議院議員を5期務めた。

生涯

長崎県に生まれる。津田女子英学塾卒。在学中に青鞜社に参加。青森県立女学校の教師ののち、東京日日新聞の記者となった。

1916年、金銭援助をしていた愛人の大杉栄が、新しい愛人伊藤野枝に心を移したことから、神奈川県三浦郡葉山村(現在の葉山町)の日蔭茶屋で大杉を刺傷。殺人未遂で有罪となり一審で懲役4年を宣告されたが、控訴により2年に減刑されて同年服役した。裁判では市子は社会主義者ではないと弁明し、野枝に対する妬みを詳細に陳述した。(日蔭茶屋事件

出獄後、『女人藝術(にょにんげいじゅつ)』に参加して寄稿したほか、『婦人文藝』を創刊して文筆活動を開始。

戦後、1947年民主婦人協会、自由人権協会設立に参加。1953年第26回衆議院議員総選挙旧東京5区左派社会党より出馬して当選。1955年社会党再統一により党内では左派に属し、計5回の当選を重ねたが、1960年第29回衆議院議員総選挙では落選しているため、連続当選は3回まで。1957年売春防止法成立に尽力した。

1969年政界を引退。

1970年、日蔭茶屋事件を扱った吉田喜重の映画『エロス+虐殺』の上映差し止めを求めて提訴したが、「周知の事実」として棄却された。 大杉の「自由恋愛論」に賛同した時代と、事件の反省から、出獄後の中産階級的道徳へ回帰した時代とで思想的断絶が大きく、1956年には谷崎潤一郎の「」を猥褻文書ではないかとして国会で問題にした。売春防止法成立に際しても、主婦の貞操を守るため娼婦の犠牲はやむをえないと述べるなど、他の廃娼運動論者とは一線を画す。 1981年に死去した。

家族

市子は出獄後、鈴木厚と結婚し、3人の子供をもうけた。鈴木とは1935年に『婦人文藝』誌を創刊したが、後に離婚した。

著作

1953年4月19日に行われた第26回衆議院議員総選挙で当選したときの神近市子 中央、世界通信より
著書
  • 引かれものの唄 法木書店, 1917
  • 島の夫人 下出書店, 1922
  • 村の反逆者 下出書店, 1922
  • 社會惡と反撥 求光閣, 1925
  • 未來をめぐる幻影 解放社, 1928
  • 現代婦人讀本 天人社, 1930
  • 性問題の批判と解決 東京書房, 1933
  • 發展する社會 建設社, 1934
  • 一路平安 摩耶書房, 1948
  • 結婚について 企画社, 1948
  • 女性思想史 三元社, 1951
  • 灯を持てる女人 二十世紀世界婦人評伝 室町書房, 1954 (室町新書)
  • 私の半生記 近代生活社, 1956
  • サヨナラ人間売買 (編)現代社, 1956
  • わが青春の告白 毎日新聞社, 1957
  • 神近市子自伝 わが愛わが闘い 講談社, 1972
  • 神近市子文集 1-3 武州工房, 1986-87
翻訳
  • 婦人と寄生 オリーブ・シュライネル 三育社, 1917
  • 人類物語 書き直された世界史 ヘンドリツク・ウイレム・ヴアン・ルーン 新光社, 1924 「世界人類史物語」と改題、新潮文庫
  • バイブル物語 書きかへられた聖書 ヘンドリック・ウイレム・ヴァン・ルーン 四方堂, 1925
  • トルストイの追憶 マキシム・ゴーリキイ 春秋社, 1926
  • 獄中記 オスカア・ワイルド 改造社, 1929 改造文庫
  • 神と資本家 ウイリアム・モントゴメリイ・ブラウン 大鳳閣書房, 1930
  • 労働婦人アンナ イヴァン・オルブラハト アルス, 1930
  • 何を為すべきか チエルヌイシエフスキイ 南北書院, 1931
  • ソヴエート・ロシヤに於ける婦人の生活 ゼシカ・スミス 南北書院, 1932
  • トルキスタンへの旅 タイクマン 岩波新書, 1940
  • 戦線・銃後 世界大戦小説集 鱒書房, 1940
  • 動物と人と神々 オッセンドフスキー 生活社,1940
  • アメリカ史物語 レイモン・コフマン 白水社, 1940
  • アメリカ成年期に達する アンドレ・ジーグフリード 那珂書店, 1941
  • 新疆紀行 エリノア・ラチモア 生活社, 1942
  • 船と航海の歴史 ゼー・ホランド・ローズ 伊藤書店, 1943
  • 科学の学校 レイモン・ペイトン・コフマン 世界文化協会, 1946

参考文献

  • 神近市子『神近市子—神近市子自伝』 8巻、日本図書センター〈人間の記録〉、1997年。ISBN 4820542478 

外部リンク