水中毒

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水中毒(みずちゅうどく、Water Intoxication)とは過剰の水分摂取により生じる低ナトリウム血症を起こす中毒症状である。

原因は、人間腎臓が持つ最大の利尿速度が16ml / 分であり、これを超える速度で水分を摂取すると体内の水分過剰で細胞が膨化し、低ナトリウム血症を引き起こすところにある。

症状

血液中のナトリウムイオン濃度の低下に伴い以下の症状が生じる。

原因

水分の過剰摂取が直接の原因である。

水中毒は統合失調症の患者に多いことが知られており、抗精神病薬副作用バソプレッシンの持続的分泌が関係するという説がある[1]。この説では、抗精神病薬の長期投与によって視床下部の口渇中枢およびバソプレッシン分泌細胞のドーパミン受容体感受性が亢進する。このため口渇とバソプレッシン促進によって腎臓からの水分再吸収が盛んになり血漿浸透圧が減少するが、ナトリウムの再吸収は行われないため低ナトリウム血症を引き起こすとされる。

抗精神病薬を服用していなくとも、極端な水分の摂取をすれば水中毒は起こり得る。例として、2007年1月12日に、カリフォルニア州サクラメントラジオ局が主催した「排尿を我慢して大量の水を飲むことを競う」イベントにて、水中毒による死者が出たことがある[2]

下痢などで激しい脱水症状を起こした時に、スポーツドリンクを大量に与えると、特に乳幼児において、水中毒を惹起することがある。これは、病的脱水時の水補給には一般的なスポーツドリンクではナトリウム濃度が低すぎ[3]、低ナトリウム血症となることが原因である。病的な脱水時には経口補水塩を用いるべきである。

治療法

  • 水分の摂取の厳重な制限と水排泄促進
  • 原因疾患を特定して治療
  • 心因性多飲症によるものの場合、その原因の解明、解決
  • 尿崩症に対する薬物治療(DDAVP)が原因の場合、薬剤の中止

ヒト以外

輸液において、低張性電解質の過剰投与により水中毒を引き起こすことがある。また、子牛においては水の過剰摂取を原因とした一過性に血色素尿を排泄する疾患が存在する。

参考文献

  • 現代臨床精神医学
  • 獣医学大辞典編集委員会編集『明解獣医学辞典』チクサン出版、1991年 ISBN 4885006104

脚注

  1. ^ [1]
  2. ^ 7.6リットルの水をトイレに行かずに飲み干した28歳の女性が翌日に死亡し、検死の結果、水中毒であることが判った。ニューヨークタイムズ記事などによる。また、米紙ロサンゼルス・タイムズにおいては、2002年のマラソン大会でも、マラソン後に水を大量に摂取して死亡した人の事例があり、それを機に危険性が知られてきたとの内容が伝えられている。
  3. ^ 一般的なスポーツドリンクで10~20mEq/L。

関連項目

  • デトックス - 体内の毒素を出すために大量の水を飲んでナトリウム欠乏症となった事例がある。