機関車

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蒸気機関車:イギリスの鉄道会社グレート・ウェスタン鉄道No. 6833 通称Calcot Grange。イギリスのBristol Temple Meads駅にて
電気機関車:イタリア鉄道会社トレニタリアFS class E412

機関車(きかんしゃ、engine / locomotive)は、鉄道車両の一つで、その車両の中に動力装置を有し、駆動を行わない他車を前から牽引、もしくは後から推進して線路上を運転する車両のことである。機関車に牽引・推進されるのは動力を有しない客車貨車のみならず、電気方式の相違・故障・回送などの理由で自車の動力を使用できない、または勾配区間で出力が足りない電車・気動車である場合もある。基本的に機関車は列車の駆動のためだけに存在しており、自車には旅客や貨物を搭載しない場合がほとんどである。

動力源による分類

動力源によって以下のように分類される。

無火蒸気機関車と圧縮空気機関車を総称して無火機関車と呼ぶこともある。

また客車に動力装置を搭載したものは、その動力によって電車気動車と呼ばれている。

用途分類

機関車は、旅客用と貨物用で区分されることがある。旅客用の機関車は高速性能を重視した設計になっているのに対して、貨物用の機関車は牽引力を重視した設計になっている。また冬期において蒸気機関車以外の機関車で蒸気暖房を使用する列車を牽引する場合や、機関車から電源の供給を受ける電気暖房を使用する場合は、それらの暖房方式に対応した機関車が必要となる。ただし短区間で暖房無しを割り切って使う場合や、暖房車により暖房用蒸気の供給を行う場合などもある。

蒸気機関車の時代には、旅客用と貨物用の区分はかなりはっきりとしていた。蒸気機関車の性能は車軸配置により大きく影響を受ける。高速性能を重視するためには動輪を大きくし、牽引力を重視するためには動輪を小さくして代わりに動輪の数を増やす。こうしたことから、蒸気機関車の形態が試行錯誤されていた初期や特殊な用途の機関車を除けば、動軸が3つの機関車が旅客用、4つの機関車が貨物用におもに用いられていた。

電気機関車やディーゼル機関車になると、こうした違いはだいぶ薄れてきているが、定格性能を高速性能重視にするか牽引力重視にするか、といった点で違いは存在している。

その他

電車や気動車に分類される車両の中にも、客室も荷物室もない機関車に近い機能を持つ動力車と客車から構成されるものもある。これらの動力車は特定の客車と固定編成になっていることから、機関車ではなく電車や気動車に分類される。事例としては、フランスのTGV, イタリアのETR500, ドイツのICE1, ICE2, イギリスのIC200などがあげられる。

機関車は単独で走行ができることが原則である。そのため、大部分の機関車は運転台を持つ。アメリカでは、他の機関車の運転台からの制御を受けることを前提に、それ自体には運転台を持たない機関車があり、Bユニットと呼ばれている。

また、大部分の蒸気機関車など運転台が1箇所しかなく基本的に前進しかできないものと、大部分の電気機関車・ディーゼル機関車のように2箇所運転台を有し、前進・後退両方向で運行が可能なものがある。前者の場合、後退運転が不可能ではないが、きわめて限定的であり、かつ運行上・保安上危険であることから転車台デルタ線などで方向転換が必要となる。

急勾配区間では機関車1両では出力が不足するため、機関車を2両以上使用したり、補助の機関車を最後部に連結し後押しをさせる場合がある。機関車を2両以上連結することを重連という。

また、勾配区間などで使われる補助の機関車を補助機関車(補機)という。前述した運転台を持たないBユニットは、補機専用の機関車である。なお、日本のEH500形電気機関車のように、二車体連結構造となった機関車も少なくない。通常、こういう構造を持った車両は二車体でも1両として扱われている。

機関車牽引列車では、列車の推進力はすべて機関車がまかなうが、制動力は機関車のみならず被牽引車である客車・貨車も一部分担する。また、(非常ブレーキ装置を除く)運転・制御の機器はすべて機関車に搭載されるのが原則であるが、ヨーロッパを中心に推進運転用に運転台を持った客車や貨車を連結し、機関車を制御する場合も多い(プッシュプル方式)。