慢性膵炎

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慢性膵炎
概要
診療科 消化器学
分類および外部参照情報
ICD-10 K86.0-K86.1
ICD-9-CM 577.1
OMIM 167800
DiseasesDB 9559
MedlinePlus 000221
eMedicine med/1721
MeSH D050500

慢性膵炎(まんせいすいえん、Chronic pancreatitis)は慢性的に膵臓に炎症をきたすことで生じる膵炎のこと。

要因

基本的にアルコールによるものが最も多いとされている。その他に関しては以下のものがある。欧米では「TIGAR-O Classification System(TIGAR-O分類)」による要因分類が広く用いられている。

臨床像

無症候性の場合も多いが、症状としては腹痛が主な症状であり、その他には下痢・脂肪便・食欲不振等もある。

検査

血液検査

膵臓が慢性炎症を受けて機能低下を生じてくる。

  • 外分泌機能低下
    • セクレチン負荷試験にて膵液量・重炭酸アミラーゼの分泌低下
    • BT-PABA試験にて尿中PABA低下
    • 便中エラスターゼ1測定
    • 13CBz-Tyr-Ala呼気試験
  • 内分泌機能低下

画像検査

画像検査で膵の石灰化像を認めることで確定される

膵の石灰化像
膵管内に結石像

治療

生活習慣改善

アルコールによるものが多く、禁酒禁煙が基本となる。

薬物療法

酵素に働きかけ膵臓を落ち着かせる

フオイパン カモステート アーチメント その他

胃酸を抑え膵臓への負荷を減らす

ファモチジン主成分 ガスター ガスポート ファモスタジン その他
シメチジン主成分 シメチパール タガメット ストマチジン その他

胃酸を抑え膵臓への負荷を減らす

タケプロン オメプラール その他

主に増悪期に用いる点滴剤

FOY(エフオーワイ) フサン ミラクリッド

膵液の流れをよくする

ビソルボン コフメジン その他

酵素の代わりをする

ベリチーム タフマックE ポリトーゼ その他

痛み止め

コスパノン ブスコパン その他

痛み止め(その2)

ロキソニン ボルタレン その他

特殊な慢性膵炎

特殊な慢性膵炎に自己免疫性膵炎があるが、この疾患は可逆性であり、その点では慢性膵炎の定義から逸脱する。

自己免疫性膵炎

自己免疫性膵炎(Autoimmune pancreatitis; AIP)の歴史であるが、1961年にフランスのSarlesらが高γグロブリン血症や黄疸を呈し、 飲酒歴がなく、石灰化や嚢胞が存在しない膵の硬化性変化を有する10症例を膵の慢性炎症性硬化症として報告したのが自己免疫性膵炎の始まりである。 その後、多数の報告例が集積されるようになり、AIPの疾患概念が提唱されるようになった。 AIPの本邦における診断基準は日本膵臓学会から2002年に提唱、2006年に改訂が行われた。現在では米国のメイヨー・クリニックや韓国においても診断基準が作成され、全世界的に診断基準を統一していこうとする動きがある。日本においてはステロイド投与による治療効果反応を診断に用いないことを原則としているのが特徴である。これは悪性疾患である膵癌にステロイドを投与することにより膵癌の診断が遅れてしまうことが危惧されるためである。 今日まで典型的なAIPの症例が報告される一方で、膵癌との鑑別が非常に困難で手術切除されてしまう症例、膵以外にも全身性に病変を認める症例、AIPの経過中に膵癌を併発する症例など、多彩な臨床像を呈する症例が報告されており、未知の部分が多い疾患である。

関連項目