恒常性
恒常性(こうじょうせい)とは生物において、その内部環境を一定の状態に保つ働きのことである。
概説
恒常性、ホメオスタシス(Homeostasis ホメオステイシスとも)は生物のもつ重要な性質のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質、あるいはその状態を指す。生物が生物である要件のひとつであるほか、健康を定義する重要な要素でもある。生体恒常性とも言われる。
19世紀のクロード・ベルナールは生体の組織液を内部環境とし、20世紀初頭にアメリカ合衆国の生理学者ウォルター・B・キャノンが「ホメオスタシス」(同一の(homeo)状態(stasis)を意味するギリシア語から造語)と命名したものである。
恒常性の保たれる範囲は体温や血圧、体液の浸透圧やpHなどをはじめ病原微生物やウイルスといった異物(非自己)の排除、創傷の修復など生体機能全般に及ぶ。
恒常性が保たれるためにはこれらが変化したとき、それを元に戻そうとする作用、すなわち生じた変化を打ち消す向きの変化を生む働きが存在しなければならない。これは、負のフィードバック作用と呼ばれる。この作用を主に司っているのが間脳視床下部であり、その指令の伝達網の役割を自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っている。
調整メカニズム
生体全体の恒常性は、何重もの調整メカニズムによって保たれている。
フィードバック機構
視床下部-下垂体を中心とした内分泌器系は、体内のさまざまな恒常性を保つためにフィードバック機構により調整されている。[1]
緩衝系
化学緩衝系を構成することにより体液のpHなどを安定化させる機構がある。[2] 血液における緩衝系については、血液#緩衝・平衡を参照。
例
体温調節
たとえば、鳥類や哺乳類の体温調節機能は、生体恒常性のひとつである。鳥類や哺乳動物は活動時の最適温は40℃付近(種や生理状態でこの温度は異なる)である。これより体温が高い場合は自律神経系や内分泌器系などにより発汗、皮膚血管の拡張で体温を下げようとし体温が低い場合はふるえ(悪寒戦慄)や非ふるえ熱産生(代謝の亢進による発熱)によって体温を上げようとする。[3]反射ではない。
感染症の際に体温が上がるのは、炎症物質によって調節の目標温度が高まるからである。これは、病原体が熱に弱いという性質を利用した抵抗活動である(進化医学を参照)。解熱鎮痛薬はこの目標温度を下げることで解熱させる。 これらの他、血圧反射機能も恒常性の概念の説明に汎用されている[要出典]。
血糖調節
また、人体における血糖値の調整作用のしくみ(血糖調節メカニズム)血糖も恒常性をもつ。だが、その血糖調整メカニズム自体、体温調節機能に関係している[4] 。
脚注
- ^ Handbook of Neuroendocrinology, p. 11, Fig 1.5.
- ^ 福田満 (2003/04). 生化学. 化学同人. pp. 164. ISBN 978-4759804782
- ^ 解剖生理学 2004, pp. 195–196.
- ^ 低血糖症は発達障害(自閉症)の危険因子 http://www.s-kubota.net/kanri/index_4.htm
参考文献
- George Fink, Donald W. Pfaff, Jon Levine (Dec 13, 2011). Handbook of Neuroendocrinology (first edition 2012 ed.). Elsevier Inc.. pp. 894. ISBN 978-0-12-375097-6
- 高野康夫 編 (2004). 解剖生理学 (第1版 ed.). 化学同人. pp. 245