吸血鬼 (1932年の映画)

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吸血鬼
Vampyr
監督 カール・テオドア・ドライヤー
脚本 カール・テオドア・ドライヤー
クリステン・ジュル
製作 カール・テオドア・ドライヤー
ジュリアン・ウェスト
音楽 ウォルフガング・ツェラー
撮影 ルドルフ・マテ
公開 1932年
上映時間 75分
製作国 フランスの旗 フランス
ドイツの旗 ドイツ
言語 ドイツ語
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吸血鬼』(Vampyr)はデンマークカール・テオドア・ドライヤーが監督した1932年公開のフランスドイツ合同映画である。

アートフィルムであるこの作品は、短い会話とストーリーで構成されており、光と影の効果的な使用で今日まで賞賛されてきた。 ドライヤーはこういった特殊効果を生み出すのに、カメラのレンズの前に上質なガーゼのフィルターをかけて登場人物や大小道具をぼやけさせ、観客を夢の中にいるような気分にさせた。 1933年に公開されたこの初期のトーキー作品は、英語・フランス語・ドイツ語の3カ国の言語が収録された。

様々な長さのものやシーンのアレンジ版が残っており、『Vampyr: Der Traum des Allan Grey (The Dream of Allan Grey)』などといったタイトルで残っているものもある。 アメリカ合衆国では『The Vampire』 として1934年に著作権登録された上、『Not Against the Flesh』というタイトルで1935年に劇場公開された。どちらもGeneral Foreign Sales Corporationによるものである。 1930年代末にはArthur Ziehm Inc.によって『The Castle of Doom』というタイトルで英語版が制作された。

ジュリアン・ウェスト(ニコラ・ド・ガンズビュール男爵の芸名)、 モーリス・シュッツ、 レナ・マンデル、 シビリー・シュミッツ、ジャン・ヒエロニムコ、ヘンリエット・ジェラルドといったスターが出演した。

制作

この映画の出演者のほとんどはアマチュアで、シビリー・シュミッツとモーリス・シュッツだけがプロの俳優だった。 ドライヤーはカメラマンに「まず僕らがいつもの部屋の中で座っているところを想像してくれ。突然ドアの陰に屍が隠れていることを知らされる。そうなると僕らの座っているところはまったくもって変わってしまう。全てのものが別次元のものになってしまう。物質的には同じなのに、光や雰囲気までもが変わってしまう。これは僕らが変わってしまったからなんだ。つまりこれが僕の求めている効果なんだ。」と指示したことが記録に残っているが、演技よりも不気味な雰囲気を作るのに熱心だったことが伺える。

撮影の際にセットは作られず、宿屋や城は実在のものを使用し、踊る陰の出てくる建物は、以前アイスクリーム工場だったものを使用した。また、粉状にした白い石膏を使うために、ドライヤーは映画の結末を変えた。白い色というのは、失血を表すために使われた色であり、映画の中に出てくる霧や小麦粉、建物や空までもが白かった。

あらすじ


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


この話はシェリダン・レ・ファニュのIn a Glass Darklyという短編集からとったもので、その中には吸血鬼カーミラという作品も含まれていた。 しかし、ティモシー・サリバンが指摘するとおり、この作品の’ネタ元’というのは、類似性以上にめざましいものがある。

本編字体ははっきりしないものが多く、恐ろしい夢の中のような雰囲気に包まれている。 アラン・グレイ(ドイツ語版字幕はこのような表記ではない)というフランスの田舎町を旅する青年が、Courtempierreという村にぽつんと聳え立つ城の近くの宿屋に来た。 それ以来アランは、肉体から魂が抜け出るといった説明のつかないような現象を目にするようになる。 メイナーの領主から助言を受け、アランは城を訪れ、ある一家の悲劇的な崩壊に巻き込まれる。領主の娘であるレオーネは貧血になってしまったが、領主は吸血鬼の仕業だと考えた。 吸血鬼についての古い本を読み、アランは吸血鬼についての知識を蓄えていった。その一方で、悪魔は若い女をいたぶり続けた。 吸血鬼の正体は、重罪で死刑を科せられ、25年前にも似たような疫病をはやらせていた妖婦、マルグリット・ショパンだった。 彼女は自身の被害者の手当をする村医師と共謀していたが、彼女が一番恐れていたことは、自分の奴隷が自殺を図ることで、そうされてしまうと、彼女の魂は悪魔のものになってしまう。 それを知ったアランと古い使用人はマルグリットを焼殺し、彼女の奴隷はみな死んでしまった。 マルグリットの死後、アランはレオーネの姉妹、ジゼルとともに村を出て行った。


キャスト

  • ジュリアン・ウェスト:アラン・グレイ
  • レナ・マンデル:ジゼル
  • シビリー・シュミッツ:レオーネ
  • ジャン・ヒエロニムコ:村医師
  • ヘンリエット・ジェラルド:マルグリット・ショパン
  • ジェーン・モーラ:看護師
  • モーリス・シュッツ:メイナーの村長
  • アルバート・ブラス:執事頭
  • N・ババニニ:執事頭夫人

反響

1930年に製作されたこの映画が2年後に公開されることになったのは、美術的欠陥があったからだとされる。この映画はナレーションを付け加えた配給会社によって短くされたため、ドライヤーはひどく落ち込み、『怒りの日』で制作活動を再開するまでに10年かかった。

リリース

低画質バージョンはアメリカやイギリスのホームビデオ会社からリリースされていて、高画質バージョンのDVDはフレンチボックスの1つとして手に入るだけでなく、2008年7月22日には、The Criterion CollectionからDVDが出ることになっている。

トリビア

  • ロマン・ポランスキー監督の映画『吸血鬼』に出てくるジャック・マクガウラン演じる吸血鬼ハンターは、ジャン・ヒエロニムコ演じるこの映画の村医者にインスパイアされている。
  • 1990年にはRandy Scott RolzerとCathy Seylerが出演し、『Vampyre』というタイトルの、あいまいな低予算セミリメイクが制作された。
  • マルグリッド・ショパンは『ドラキュラ崩御』という小説に出てくる、ドラキュラの花嫁の一人としても知られている。

外部リンク

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