司令部
司令部(しれいぶ)とは、広義の司令官がその職務を行う統帥機構をいう。司令官が総司令官と称する場合は総司令部と、下級部隊のそれは本部ということが通常であるが、本記事では原則として区別することなく広義の司令部について記述する。日本の戦時最高統帥機関たる大本営も司令部の一種と考えられる。また、英語ではheadquartersという。
概要
軍隊が部隊行動する以上は必然的に生じる組織である。通常、陸軍では旅団以上で、海軍では広義の艦隊(隊、群等を含む)で用いられる。海軍で司令官が指揮を執るために座乗している軍艦を旗艦という。
司令部には、副司令官、幕僚長(参謀長)、幕僚(参謀)、副官等の士官スタッフのほか、准士官や下士官兵の補助スタッフが置かれる。また、陸軍の司令部では司令部付隊が置かれることが多い。
陸上自衛隊では、師団、旅団及び集団に司令部が置かれ、師団よりも上級の単位である方面隊では、司令部ではなく方面総監部が、連隊より下級の単位[1][2]には本部という用語が用いられている。もっとも、英訳は司令部と同じheadquartersである。なお、陸上自衛隊では初めて司令官というポストを中央即応集団に置いた。
アメリカ陸軍などでは、司令部の参謀部門を通常4部に分け、第1部は人事を、第2部は情報を、第3部は作戦を、第4部は兵站をそれぞれ担当する。陸上自衛隊でも方面総監部、師団司令部、旅団司令部、中央即応集団司令部[3]、団本部、連隊本部、群本部、大隊本部が同様の構成となっている。方面総監部から旅団司令部まで第○部といい、団本部から群本部まで第○科といい、大隊本部では第○係という。
旧日本海軍では連合艦隊、各艦隊及び各鎮守府の長を「司令長官」、戦隊、根拠地隊の長を「司令官」、その下の部隊(駆逐隊、潜水隊、航空隊、掃海隊等)の長を「司令」といった。
陸上自衛隊の師団の司令部等の構成
厳密には付隊(づきたい)は司令部の一部ではない。師団より上級又は下級の部隊の司令部は、師団のそれをより拡充させ又は簡略化させた機構となっている。旅団についてもほぼ同様の構成となっているので本項で併記する。
- 師団(旅団)の隊務につき師団長(旅団長)を助け、師団長(旅団長)に事故があるとき、又は欠けたときは、師団長(旅団長)の職務を行う。副師団長・副旅団長はともに駐屯地司令を兼務する(上級の自衛官が部隊長として所在する場合も含む)。
- 幕僚長(1等陸佐(一)若しくは旅団においては(二))
- 師団長(旅団長)を補佐し、司令部の部内の事務を整理する。師団長(旅団長)の命を受け、部長、課長、医務官、監察官及び法務官の職務を統制する。予算の統制、隊務の能率的運営その他師団長(旅団長)から命ぜられた事務を行う。副師団(旅団)長に事故が発生時はその職務において代行する[4]。この役職に就く自衛官は基本的に隷下部隊及び幕僚等の統制上「連隊」・「群」長等の部隊長経験者若しくは部隊長よりも上位の自衛官が上番する。
- 幕僚幹事
- 幕僚長の行う事務を補佐し、かつ、幕僚長の命を受け、事務管理の改善、報告統制その他幕僚長から命ぜられた事務を行う。
- 第1部長(人事担当):部長は1等陸佐(三)若しくは2等陸佐
- 第2部長(情報担当):部長は2等陸佐
- 第3部長(運用担当):部長は1等陸佐(三)
- 第4部長(補給担当):部長は1等陸佐(三)若しくは旅団においては2等陸佐
- 総務課長(総務及び広報を担当):課長は2等陸佐若しくは3等陸佐
- 広報室長(総務課に広報渉外班を置く師団についてはなし。)
- 会計課長:課長は3等陸佐(原則所在駐屯地の会計隊長よりも序列名簿上、上級者が充てられる)
- 施設課長(施設大隊長・施設中隊長兼任が通常)
- 通信課長(通信大隊長・通信中隊長兼任が通常)
- 医務官
- 師団長(旅団長)の命を受け、部隊の監察に関する事務を行う。
- 副官(1等陸尉若しくは2等陸尉)
- 師団長(旅団長)又は副師団長(副旅団長)の庶務をつかさどる。
- 司令部付隊[5]
GHQ/SCAP
日本ではGHQ(General Headquarters、総司令部)といえば、1945年(昭和20年)-1952年(昭和27年)の間置かれていた連合国軍最高司令官総司令部と呼称する固有名詞として用いることも多い。日本以外においてはGHQ/SCAP(General Headquarters/ Supreme Commander for the Allied Powers、総司令部/連合国軍最高司令官)と呼ぶことが通常である。
GHQ/SCAPも一般の司令部同様に次のような機構になっていた。もっとも、行政指導能力を拡充させるために幕僚部の構成が充実しているのが特徴である。
脚注
- ^ 「団」については旅団に準じる単位とされているが、1950年代当時に創設された際に、アメリカ合衆国軍の旅団の編制原則を参考にしている部分もあり、通常の団編成は主に将官ポストでも一番低い階級区分である陸将補(二)が充てられ、それよりも規模が小規模となる方面混成団は准将に相当する一等陸佐(一)が原則として団長に充てられており、その名残で将官ポストであっても団本部と呼称される。
- ^ なお日本の自衛隊における旅団編成は陸将補でも区分が上級の陸将補(一)が指定されている
- ^ 但し、中央即応集団司令部においては、第1部等の名称ではなく、人事部等の具体的な所掌を表す名称が用いられている。
- ^ 但し副旅団長が不在時における駐屯地司令職務は駐屯地に所在する部隊長等の中で最先任の職にある部隊長等が兼務する事があり、真駒内駐屯地においては幕僚長ではなく駐屯地業務隊長が司令職務代行していた
- ^ それまで司令部付隊に置かれていた「保安警務隊」(警務科部隊)は、平成19年度部隊改編により編成替えになった(詳細は警務科及び陸上自衛隊警務隊参照)。
参考文献
- 高井三郎『現代軍事用語』アリアドネ企画、2006年