北海道文学大事典

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北海道文学大事典』(ほっかいどうぶんがくだいじてん)は、北海道文学館 編・北海道新聞社 発行による文学事典北海道文学に関係する人物、雑誌、事柄を網羅的に立項し、解説している。1985年10月30日発行[注 1]

本事典の口絵・雑誌編・事項編を除く「人名編」「北海道文学略年表」その他のページは、誤記訂正と補足を加えて2012年より北海道立文学館ウェブサイトにてインターネット公開されている[注 2]。「雑誌編」「事項編」についても補訂の上でのインターネット公開が予告されているが、2023年4月現在、実現していない[4]

概要[編集]

本事典の刊行は、昭和58年度の北海道文学館総会(1983年5月21日)で決定され、翌1984年(昭和59年)2月27日に「北海道文学大事典編集委員会」が発足して執筆編集作業が進められた[5]。全体の構成は日本近代文学館 編『日本近代文学大事典』講談社(全6巻、1977年 - 1978年)[6]を参考に編集された[5]。なお、編集委員会委員長を務め、奥付に編者代表として記載する更科源蔵[注 3]は本事典の上梓を見ず、刊行直前の1985年(昭和60年)9月25日に逝去した[5]

事典全体の構成は次のとおり。

  • 写真口絵[注 4]
  • 「北海道文学大事典」刊行の辞 (北海道文学館)
  • 北海道文学大事典執筆者
  • 凡例
  • 北海道文学大事典・人名編
  • 北海道文学大事典・雑誌編
  • 北海道文学大事典・事項編
  • 北海道文学略年表 (木原直彦 編)
  • 索引
  • 編集後記
  • 奥付

立項数は全3,139項目(「人名編」2,283、「雑誌編」718、「事項編」138)で、執筆者は340人にのぼる[8]。本文ページにある最終ノンブルは「編集後記」のp. 772。表紙カバーあり。付属する表紙側には「小説+戯曲+評論+児童文学+詩+短歌+俳句+川柳 〈北海道文学〉のすべてを3139項目で集大成!!」と謳い、裏表紙側には以下の内容紹介文を掲げる[注 5]

  • 人名編〔2283項目〕=北海道在住・出身作家をはじめ、北海道取材作家、足跡を残した文学者ら、北海道と関わりのある作家を網羅。
  • 雑誌編〔718項目〕=ガリ版刷り同人雑誌から、町民総合文芸誌、職場文芸誌、大学紀要まで、明治以後、北海道で発刊された雑誌を紹介。
  • 事項編〔138項目〕=各種文学賞、文学碑、文学展、来道作家、文学史など北海道文学関連事項を詳述。
  • 北海道文学略年表〔明治元〜昭59〕=46ページで作成。

補遺『北の表現者たち2014』[編集]

本事典の人名編の続編として、

  • 北の表現者たち2014 : 北海道文学大事典補遺』(公益財団法人北海道文学館 編集・発行)

2014年(平成26年)3月に刊行された。立項する人物は『北海道文学大事典』の人名編とは重複しない497名となっている[10]

編集委員会[編集]

北海道文学大事典編集委員会[注 6]

評価[編集]

図書館のレファレンスサービスにおいて北海道文学に関する「代表的な事典」と評価されている[19]。都道府県を単位とする文学事典は前例がなく、全国で初めての試みであった[20][5]。また、本事典の編集・執筆に携わった木原直彦は編集後記に、すでに確認が難しくなっている情報も多く、「この時期に編まなければ、古い事象はますます見えなくなってしまう、との実感を深めた」とその意義を記している[5]

本事典公刊当時の藤女子大学図書館の広報誌『図書館だより』No. 23では、「従来尋ねようのなかったマイナーな人名や雑誌について、圧倒的な量の情報を与えてくれる」「座右から離すことのできない重宝な道具」と評価されると同時に、項目によっては杜撰な記述が見られる点が指摘され、項目選定や排列方法への疑義、また索引が見出し項目だけの立項となっており書名や雑誌名から検索できない点などが批判されている[9]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 発行日は奥付の記載による[1]
  2. ^ (1)から(3)に3分割し、pdfファイル形式で提供(プリントアウトはできない)[2]。「人名編」登載の人物のうち刊行後逝去した者については赤枠で囲み、「収録人物(物故者)没年月日一覧」をpdf末尾に掲載している[3]
  3. ^ 更科源蔵(1904年 - 1985年)は北海道川上郡弟子屈町てしかがちょう生まれの詩人、アイヌ文化研究家。任意団体北海道文学館が1967年(昭和42年)に設立されて以来、理事長を務めていた。没後の後任(第2代理事長)は和田謹吾[7]
  4. ^ コート紙モノクロ印刷8ページで、文学展の写真や文学書の初版本書影、作家の肖像写真などを掲載する。口絵ページの直後に載せる「『北海道文学大事典』刊行の辞」のノンブルはp. 3となっており[8]、口絵は本文ページ数には含まれていない。
  5. ^ 以下、帯からの引用文は亀甲カッコの使用を含め原文ママ。帯の“表紙”側については藤女子大学図書館の『図書館だより』No. 23に書影がある[9]。なお、帯の“背”部分には「北海道学校図書館協会 北海道書店商業組合 推薦図書」「文学ファン、関係者、研究者、図書館必携」とある。
  6. ^ 編集委員会のメンバー構成は「編集後記」の記述による[5]。執筆者については本事典pp. 4-5の一覧リスト「北海道文学大事典執筆者(五十音順)」[11]を参照せよ。
  7. ^ 園田夢蒼花(そのだ むそうか、1913年12月15日 - 2001年6月1日)は、日本の俳人。俳誌『広軌』『杉』同人[12]。1913年(大正2年)、北海道上川郡美瑛町生まれ[12]、平成13年没[3]。本名、園田喜武[12]1937年昭和12年)高橋貞俊らと俳誌『海賊』(のち『プリズム』に改題)を創刊して北海道の俳壇に新興俳句運動を展開した[12]第二次世界大戦敗戦後も高橋貞俊が1946年(昭和21年)2月に創刊した俳誌『水輪』に参加し[13]1969年(昭和44年)には高橋貞俊、後藤軒太郎、木村敏男、永田耕一らと俳誌『広軌』を創刊している[14]句集に『火を放て』薔薇書房(1951年7月)、『こほろぎ馬車 : 園田夢蒼花句集』広軌発行所(1973年11月)、『うきくさ : 句集』角川書店(2003年2月)ほか[15]。共著に『札幌の俳句』『札幌歳時記』など[12]1988年(昭和63年)、財団法人北海道文学館監事[16]。北海道俳句協会[17]第3代会長[18]

出典[編集]

  1. ^ 北海道文学館(編)「(奥付)」(pdf)『北海道文学大事典』、北海道新聞社、1985年10月、773頁。 
  2. ^ 北海道文学大事典_人名編|北海道文学館編集・監修の本”. 北海道立文学館ウェブサイト. 北海道立文学館 (2012年4月3日). 2023年5月14日閲覧。 ※「『北海道文学大事典』ご利用の皆さまへ : ネット上での公開にあたって (インターネット公開にあたって)」(pdf)あり。
  3. ^ a b 北海道文学館 (2012年4月3日). “収録人物(物故者)没年月日一覧 : 北海道文学大事典 人名編(3)(ま - わ)” (pdf). 北海道立文学館ウェブサイト. 2023年5月14日閲覧。
  4. ^ (公益財団法人北海道文学館) (2012年4月3日). “『北海道文学大事典』ご利用の皆さまへ : ネット上での公開にあたって” (pdf). 北海道立文学館ウェブサイト. 北海道立文学館. 2023年5月14日閲覧。 “今回の公開は『大事典』の「人名編」にとどめ、「雑誌編」「事項編」については、調査・訂正などの作業を進める過程で順次アップしていきます。また、『大事典』の冒頭に収められていた、写真(グラビア)ページは割愛しました。”
  5. ^ a b c d e f 木原直彦「編集後記」(pdf)『北海道文学大事典』、北海道新聞社、1985年10月、772頁。 
  6. ^ 日本近代文学館: “日本近代文学大事典 増補改訂デジタル版”. ジャパンナレッジ. 株式会社ネットアドバンス (2022年-). 2023年5月14日閲覧。
  7. ^ 概要 : 沿革|北海道立文学館について”. 北海道立文学館ウェブサイト. 北海道立文学館 (2018年). 2023年5月14日閲覧。
  8. ^ a b 北海道文学館「「北海道文学大事典」刊行の辞」(pdf)『北海道文学大事典』、北海道新聞社、1985年10月、3頁。 
  9. ^ a b 連載 北海道の文学 1 : 『北海道文学大事典』北海道文学館編」(pdf)『藤女子大学 藤女子短期大学 図書館だより』第23巻、藤女子大学図書館、1986年4月、6-7頁。  ※pdf配布元は藤女子大学図書館ウェブサイトの「図書館だより」ページ。
  10. ^ 北海道文学館 編『北の表現者たち2014 : 北海道文学大事典補遺』北海道文学館、2014年3月、7, 9, 169-170頁。 
  11. ^ 北海道文学館(編)「北海道文学大事典執筆者(五十音順)」(pdf)『北海道文学大事典』、北海道新聞社、1985年10月、4-5頁。 
  12. ^ a b c d e 木村敏男「園田夢蒼花」(pdf)『北海道文学大事典』、北海道新聞社、1985年10月、204頁。 
  13. ^ 札幌市教育委員会: “新札幌市史 第5巻 通史5(上) : 第九編 大都市への成長 : 第九章 市民の文化と活動 : 第一節 文学 : 三 俳句 : 『水輪』『北方俳句人』”. 札幌市中央図書館 - 新札幌市史デジタルアーカイブ. 札幌市. pp. 852-853 (2002年3月31日). 2023年5月14日閲覧。 “昭和21年2月創刊の『水輪』は戦前から新興俳句運動を推進した高橋貞俊が創刊した。土岐錬太郎の『アカシヤ』、斎藤玄の『壺』と並んで北海道俳壇に新風を吹き込んだ。園田夢蒼花、十勝の豊頃に入植していた細谷源二、『壺』から斎藤玄、角野良雄らも同人に加わり、その後も寺田京子や木村蒼花(敏男)、川端麟太なども加わり中央の有名俳人も作品を寄せるなどして〔昭和〕26年3月まで38冊を刊行した。”
  14. ^ 札幌市教育委員会: “新札幌市史 第5巻 通史5(上) : 第九編 大都市への成長 : 第九章 市民の文化と活動 : 第一節 文学 : 三 俳句 : 『象』『広軌』『北の雲』”. 札幌市中央図書館 - 新札幌市史デジタルアーカイブ. 札幌市. p. 854 (2002年3月31日). 2023年5月14日閲覧。 “『広軌』は〔昭和〕44年8月の創刊で、高橋貞俊、園田夢蒼花、後藤軒太郎、木村敏男、永田耕一郎らが参加して昭和40年代の道内俳壇に貢献した。誌外協力者として新妻博、島恒人、辻脇系一なども執筆している。”
  15. ^ 蔵書検索 : 俳書 - 夢蒼花”. 公益社団法人俳人協会・俳句文学館. 2023年5月14日閲覧。
  16. ^ 北海道文学館のあゆみ : 財団法人北海道文学館役員 - 1988(昭和63)年、財団法人設立時|北海道立文学館について”. 北海道立文学館ウェブサイト. 北海道立文学館 (2022年7月). 2023年5月14日閲覧。
  17. ^ 北海道俳句協会 - Home”. 北海道俳句協会公式ウェブサイト. 北海道俳句協会 (2023年5月). 2023年5月14日閲覧。
  18. ^ 常設展 : 北海道の俳句”. 北海道立文学館. 2023年5月14日閲覧。
  19. ^ 北海道立図書館参考調査課「〈連載〉こんなのあります : いちおしレファレンス・ブック 【30】」(pdf)『Do-Re : 北海道立図書館レファレンス通信』通巻第44号 (No. 40)、北海道立図書館、2010年10月、2頁。  ※pdf配布元は北海道立図書館ウェブサイトの「Do-Re(どうれ)」ページ。
  20. ^ 浦西和彦「[研究展望]関西における近代文学事典の刊行と、今後の展望について」『昭和文学研究』第61巻、昭和文学会、2010年、111頁、doi:10.50863/showabungaku.61.0_111“都道府県別の文学事典としては、先に北海道文学館編『北海道文学大事典』(昭和60年10月30日発行、北海道新聞社)があった。北海道文学館が昭和40年4月に開館し、それから20年の歳月をかけて、北海道に関する近代文学関係資料を収集し、そして各種の文学展や文藝講座や文学散歩などの地道な活動を積み重ねた上で、『北海道文学大事典』を編集したのである。”  ※北海道文学館を「昭和40年4月に開館」としている点は誤り。任意団体としての設立は1967年(昭和42年)4月であり、札幌市資料館の部分貸与を受けて展示室を開設したのは1979年(昭和54年)3月である。

参考文献[編集]

  • 北海道文学館(編者代表 更科源蔵) 編『北海道文学大事典』北海道新聞社、1985年10月。ISBN 4-89363-454-2 
  • 公益財団法人北海道文学館(編者代表 神谷忠孝) 編『北の表現者たち2014 : 北海道文学大事典補遺』北海道文学館、2014年3月。ISBN 978-4-904064-02-3 
  • 志村有弘 編『北海道文学事典』勉誠出版、2013年7月。ISBN 978-4-585-20019-2 

外部リンク[編集]