文学賞

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文学賞(ぶんがくしょう)とは、優れた文学作品に対して授与される賞の総称である。

目次

[編集] 概要

文学賞は、文壇に登場していない新人を主な対象とし未発表の作品を公募して作品を選考し授与する賞(公募新人賞)と、新聞雑誌への掲載や単行本の刊行などの形式で既に発表済みである作品や既存の作家に授与する賞に大別できる。

また、特に小中学生や幼児向け児童書童話絵本など)を対象としている場合、児童文学賞と称することがある。

名称については、出版社・レーベル名や主催者の名前を直接冠したものがまず多いが、それ以外では文学史・文壇やそのジャンルの歴史において重要な足跡を残した物故者の作家の名を冠したものも多い。この様な人名を冠した賞の場合、故人の多大な功績を記念した文学賞という主旨になるのが基本であるが、大江健三郎賞小松左京賞などは創設時点で存命かつ現役の大家の名を冠し、その作家自身も選考・選評・表彰などで携わっている。

候補作・応募作に賞を授与することを、主催者の立場からは「授賞」といい、逆に賞を受ける立場からは「受賞」と表現する。

多くの文学賞では、授賞決定に際して主催者が受賞者を招いて授賞式を開催し表彰や賞金・記念品の授与を行う。さらに、既存の作家に授与する主要な文学賞では授賞式を報道マスコミが取材し、受賞者・選考委員を対象とした記者会見や質疑応答が行われる。

[編集] 文学賞の種類

[編集] 公募新人賞

公募新人賞の多くは、新人作家を発掘することを目的として、出版社や出版社が出資した文学関係の財団法人などが主催者となり原稿を募集し選考と授賞を行う。授賞する作品・作家に対しては賞状と規定の賞金・副賞が贈呈され、その中でも上位入賞作品については、関係する文芸誌やレーベル旗艦誌を持つ賞の場合その雑誌への掲載が約束され、それ以外でも単行本の刊行が保証されることが多い。

大半の公募新人賞では、作家として文壇にデビューしていないアマチュアが主対象で、応募作品は未発表の作品とされ、中には他の新人賞への応募や同人誌などでも発表していない完全に未発表・未公表である作品に限定しているものもある。また、佳作・入選などの下位入賞も含めて、入賞作品については著作権(出版権)が出版社に帰属する規定になっているものが多い。

代表的な公募新人賞としては、文學界新人賞群像新人文学賞オール讀物新人賞江戸川乱歩賞などが知られるが、自社レーベルを持つ出版社の多くは何らかの公募新人賞を行っており、特定ジャンルに限定した公募新人賞も数多く存在する。

選考委員は主に中堅・ベテランの著名作家、評論家、レーベル・旗艦誌の編集部の編集長クラスの人物が務めるが、メフィスト賞のように編集部と編集者の内部選考によって授賞を決定する賞もある。無賞金で自社の雑誌やレーベルでの作家としてのデビューだけが約束された賞も少なくないが、近年では『このミステリーがすごい!』大賞ポプラ社小説大賞など、1000万円を超える高額賞金が懸けられた公募新人賞も存在する。

地方自治体やその関連団体が主催する公募新人賞も存在するが、この場合、受賞作の多くは後援として携わる地方紙や地方の文芸誌に掲載されるのみで、受賞によって作家としてのデビューが約束されるわけではない。ただし、坊っちゃん文学賞などのように、全国で発売される雑誌と提携関係がありその雑誌に受賞作が掲載される賞もある。

[編集] 新人賞

キャリアの浅い新人・新進の作家が執筆し、雑誌に掲載、あるいは単行本として出版された作品の中から、優れた作品を選出し授賞する賞である。多くはキャリアの浅い作家にとっての登竜門と位置づけられており、賞金や記念品以上に受賞そのものが作家のキャリアにおいて重要な意味合いを持つことが多い。

代表的なところでは芥川賞野間文芸新人賞三島由紀夫賞山本周五郎賞などがある。直木賞も創設当初は既発表の新人作家の作品を対象とした賞であったが、近年では既に作家として一本立ちしている中堅以上の作家の作品への授賞が専らであり、新人賞とは呼べない性質のものになっている。

芥川賞、野間文芸新人賞、三島由紀夫賞の三賞は純文学新人賞において重きをなし「三冠」と呼ばれることもあるが、2007年現在、この三賞全てを受賞しているのは笙野頼子ひとりである。

[編集] その他

中堅以上の作家やその作品に対して授与される文学賞として、谷崎潤一郎賞読売文学賞野間文芸賞吉川英治文学賞などがある。これらの主要な文学賞の場合、作品のみならず作家としての総合的な筆力も評価の対象となるため、これを受賞してゆくことで文壇における地位が確立され、大家として認められるようになる。

ジャンル別では推理小説では日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞、SFでは星雲賞日本SF大賞などがある。

[編集] 日本国外の文学賞

日本国外の著名文学賞の中でもで特に高い権威を持つ賞には、ブッカー賞ゴンクール賞ピューリッツァー賞 フィクション部門フランツ・カフカ賞エルサレム賞ノーベル文学賞などが上げられる。前者3賞はその国内のその言語で書かれた小説、ブッカー賞はイギリスおよびアイルランド国内で英語で書かれたもの、ゴンクール賞はフランス国内でフランス語で、ピューリッツァー賞フィクション部門は米国で書かれたものを選考対象としている。後者3賞は言語や地域を問わず、特にノーベル文学賞は小説家(散文)に限らず、詩人劇作家なども対象としている。

国際的に権威の高い文学賞として世界的な認知を得ているものにあっては、選考対象としては英語をはじめとする多数の言語に作品が翻訳されて現地の出版社から販売され国際的に知名度と人気を持っている作家が多く、賞を授与されることは作家としての最高の栄誉とされ、最終選考の候補として正式にノミネートされるだけでも国家や言語の枠を超えて大きな商業効果が発生することがある。

[編集] 小説以外を対象とした文学賞

小説以外の様々なジャンルの文学・文芸に特化した文学賞も数多く存在する。

たとえば、評論随筆などを対象とした小林秀雄賞ノンフィクションを対象とした大宅壮一ノンフィクション賞講談社ノンフィクション賞新潮ドキュメント賞現代詩を対象としたH氏賞戯曲を対象とした岸田國士戯曲賞などがある。これらは、それぞれの文学ジャンルにおいて方向性やトレンドを示す存在として重要視されている。

風変わりな所では、1970年代の雑誌『面白半分』において、宣伝の為に書籍の下部に巻かれる腰巻(帯)に書かれるキャッチコピーを対象とした日本腰巻文学大賞という賞が開催されたこともある。この場合、腰巻というものの性質上、文章を製作した受賞者・選考対象者が編集者ということも珍しくなかった。

[編集] 新聞社主催による賞

全国紙地方紙を問わず、新聞社やその関連団体が主催する文学賞も存在する。

読売新聞社主催の読売文学賞には小説賞の他に戯曲・シナリオ部門賞、随筆・紀行賞、評論・伝記賞、詩歌俳句賞、研究・翻訳賞の各部門が設けられており、朝日新聞社主催の大佛次郎賞毎日新聞社主催の毎日出版文化賞は小説だけでなく評論・ノンフィクション・エッセイなどを幅広く対象としている。

[編集] 文学賞に対する批判

多くの文学賞では受賞者に対して賞金が支払われるだけではなく、授賞する側に属する選考委員を委嘱される著名作家にも選考料などの名目で少なからぬ金額の謝礼が支払われ、概して賞の権威の高さと比例する形で謝礼も高額となり、選考会議にしても高級料亭で会食付きというものもある。そのため、文学賞の選考委員は著名作家の体のいいアルバイトと揶揄されることもある。選考委員という立場それ自体も文壇政治におけるポストのひとつと見なされており、特に芥川賞などの樣に選考委員に任期が設けられていない場合、一度委嘱されれば辞任しない限りは亡くなるまでその地位に居続けることも可能であり、また高齢の大ベテランになると文壇・選考委員の重鎮としての存在感と裏腹に言動・選評が時代にそぐわないものになり選考に悪影響を及ぼしてしまうことも起きかねず、これらは批判の対象となることがある。

また、各次選考課程において、各選考委員の専門分野・嗜好・思想・人間関係、出版社・編集部・編集者の事情・思惑、「後援」すなわちスポンサーの立場で賞イベントに関与する企業・団体の意向、候補者・応募者の話題性(低年齢・知名度・家族・経歴)や関連業界との人脈(たとえば著名な作家や脚本家の実子・弟子)などといった様々なバイアスが加えられることも少なくなく、関連する企業の商業的都合が優先されたり文壇政治のパワーゲームの結果として授賞と作品の出来が必ずしも直結しなくなる場合もある。例えば直木賞では主催者との関連性が強い文藝春秋のノウハウの多寡などが影響し、歴史小説時代小説・人情小説が有利と言われ実際に数多く授賞している一方で、SFミステリーファンタジーなどに授賞した事例は少なく総じて不利とされており、SF作家である筒井康隆は自身の直木賞落選の経緯を批判的に風刺した小説『大いなる助走』を執筆している。また、高い権威を持つ著名文学賞の場合、受賞を渇望する作家が自身の作品の落選という事態に対して強い不満を示す場合もあり、有名な例としては中原昌也が、第135回芥川賞の候補に『点滅……』がノミネートされながらも実際の選考会議ではほとんど議論の俎上に上げられることもないまま1票も入らず落選した際、選考委員に対して雑誌『SPA』の誌上で痛烈な批判を繰り広げた一件が知られる。他にも様々な文学賞や公募新人賞において、最終選考に残ったある作品が、特定の選考委員の熱烈な推薦で授賞が決まった、逆に特定の選考委員の個人的な猛反対の批判により落選となった、落選を巡ってトラブルが起きた、などという“裏話”は枚挙に暇が無い。また、筒井が『大いなる助走』で槍玉に挙げていることであるが、文学賞の選考委員として名前が出る様な人物には多忙な売れっ子が多く、その様な時間的余裕の無い人物が果たしてきちんと候補作や最終選考の作品を全て読破しその内容を把握・分析して選考に参加しているのかということも度々取り沙汰される疑念であり、著名作家の選考委員としての「名義貸し」や、出版社・スポンサーや選考委員の人脈・都合が優先された縁故授賞などと言った不明朗な選考や出来レースの噂も、その真偽は別として散見される。

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

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