内的再構

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Luckas-bot (会話 | 投稿記録) による 2012年4月19日 (木) 23:52個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (r2.7.1) (ロボットによる 追加: gl:Reconstrución interna)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

内的再構(ないてきさいこう、internal reconstruction)とは、比較言語学歴史言語学において、同じ系統に属する言語間の比較によってではなく、その言語内のある時点での形の分析から、その言語の記録以前の形を推定しこれを構築する働きかけのことであり、また方法のことである。内的再建法ともいう。

内的再構では異形態の分析が重要な役割を果たすことが多い[1]

比較方法では説明のつかない問題が内的再構によって解明されることがある。その一方で、内的再構はその言語の先史を部分的に明かにするだけで、比較方法のように祖語を体系的に再建することはできない[1]

歴史言語学の方法として

内的再構は、同系統(同じ語族や語派である)であるという証明がまだされていない二つの言語同士を比べる際、非常に重要な過程になる。同系統ということは以前のある時点で同じ形であったということなので、内的再構のみで二つの言語の過去の形を構築してみてそれらが同じになれば同系統であることが証明されるし、ある程度似た形であれば同系統である証明に近づいたことになり、逆に似ても似つかないものになってしまったら同系統である望みはほぼ絶たれているという事になる。

ここでもし内的再構を踏まえずに二つの言語の現在の形同士を比べてしまうと、例えば地理的に近い言語同士であるために起こった語彙の借用や文法が似てきてしまうといった、実際に同系統であるかどうかとは関係のない要素も、「ここが似ているから同系統なのである」という安易な主張の礎になってしまいかねない。

内的再構は、これを知らなかったり敢えて行わないことで「万葉集は××語で読める」などの衝撃的な結論を出している場合もあるため、そのような一部のトンデモ本とそうでない歴とした言語学的な著作を見分ける一つの基準にもなる。

脚注

  1. ^ a b 吉田和彦 『言葉を復元する』 三省堂 1996 ISBN 4-385-35714-5

参考文献

  • T. Givón, Internal reconstruction: As method, as theory, Typological Studies in Language (2000).
  • J. Kuryłowicz, On the Methods of Internal Reconstruction, Proceedings of the Ninth International Congress of Linguists (1964).
  • Anthony Fox, Linguistic Reconstruction: An Introduction to Theory and Method, Oxford University Press (1995)
  • Lyle Campbell ,Historical Linguistics, MIT Press.2004
  • 吉田和彦 『言葉を復元する』 三省堂 1996年 ISBN 4-385-35714-5
  • 松本克巳 『世界言語のなかの日本語』 三省堂 2007年

関連項目